金融ITの世界ではここ最近、トレーディングシステムのプラットフォームにLinuxを採用する動きが強まっている。ニューヨーク証券取引所(NYSE)で稼働するRed Hatの「Red Hat MRG Realtime」などがその代表だが、先日、ロンドン証券取引所(LSE)もLinuxベースへのシステム移行を発表した。それも単なるプラットフォームリプレースではなく、提供元のシステム会社をまるごと買収、Linuxによる全面入れ替えに着手する。
LSEが買収したのはスリランカに拠点をおくMillenniumITというソリューションベンダ。日本での知名度はゼロに近いが、米国、欧州、アフリカなどの金融機関を中心にITインフラストラクチャの構築をひろく手がけており、とくに通信系システムのサービスには定評がある。同社は1,800万ポンド(約25億3,000万円)でLSEの買収提案に合意し、10月中旬には手続を完了させる予定だ。
これに伴い、LSEは2010年の中盤から後半を目処に、MillenniumITのトレーディングプラットフォーム「Millennium Exchange」に全面的に移行する。OSはLinux、データベースはOracleを採用しており、1秒間の処理件数1,000件から50万件以上まで扱うことができるスケーラビリティが特長だ。ハードウェア構成も、1台のPCサーバから、マルチCPU/マルチサーバまでカバー、レイテンシは100万分の1秒以下を保証している。リアルタイム性と柔軟性、堅牢性を求められる金融ITに最適なシステムというわけだ。
LSEの関係者によれば、MilleniumITを買収したのは「とくにMicrosoft/.NETに不満があったわけでも、オープンソースソリューションを支持しているからでもない」という。最大の理由は「将来にわたって、システムを自分たちの手でコントロールしたいから」(LSEスポークスマンのAlistair Fairbrother氏)。もちろん、Millenium Exchangeの高パフォーマンス性やコスト削減効果も大きな理由ではあるが、それよりも時代の流れにあった、迅速なシステム構築/改変をみずからの意志と責任の下で行っていけることのほうが重要だという。
今回のシステム移行により、LSEでは年間1,000万ポンド(約14億円)の経費削減を見込んでいる。
- ロンドン証券取引所
- URL:http://www.londonstockexchange.com/