Novellに籍を置くGreg Kroah-Hartman氏は、Linuxカーネルの大物開発者として著名な人物である。同じくカーネルメンテナーのChris Wright氏とともに、ステージングサブシステム、USB、ドライバコア、Debugfs、カーネルサブシステム(sysfs)などをリードしている。同氏は2009年12月、カーネル開発者のメーリングリストに「Android関連のドライバはもう(ここでは)開発されない。(Androidの)オリジナル開発者たちは開発を放棄しているようだし、メインラインのカーネルツリーで開発させたいとも思ってないようだ。とても悲しい」と投稿、Android(drivers/staging/android)のLinuxカーネルからの削除を発表した。
現在、iPhoneとともに最も注目されているスマートフォンOSのAndroidだけに、これがLinuxカーネルのメインツリーから外れるなんて納得できない! とする向きは多く、Hartman氏のもとには相当数の質問(抗議)が寄せられた。そして2月2日、Hartman氏はそういった声に対して正式に応えるためか、ブログに自身の考えを表明している。
「まず最初に言っておきたいこと ─ 私はAndroidプラットフォームを愛しているということだ」と冒頭に掲げた同氏は、続けて、Googleが携帯電話OSのプラットフォームにLinuxを採用したことを称賛し、技術的な側面からもAndroidは非常にすぐれているとしている。
では何故、LinuxカーネルからAndroidを外したのか。Hartman氏は「端的に言うと、誰もAndroidコードをケアしなくなったから」としている。カーネル開発においては「ステージングツリーにあるコードはメインカーネルにいずれマージされなくてはならない。そうでなければ、削除するだけだ」というポリシーがある。ところが「Googleはメインカーネルツリーへのマージを拒んでおり、Android開発者はGoogle独自のコードに依存するドライバを作る羽目になってしまう」という。つまり、Linuxカーネルのセキュリティモデルに沿った形ではなくなってしまうのだ。企業に属するドライバ開発者たちも、これではLinuxコミュニティに貢献できない(=業務と認められない)ことになってしまう。
Harman氏は「Googleが最初にステージングツリーにコードを公開したとき、すべてのユーザが変更を加えられるようにしていたが、そうすべきではなかったのかもしれない。Googleの担当者だけが、加えるべき変更点を選択できるようにしたほうがよかったのかもしれない」としながらも、今後、Googleにどう対応すべきかという点については「正直、よくわからない」と心情を吐露している。「Googleはメインラインに合流する兆候はまるで見せていないし、開発者の中にはAndroidの独自インターフェースをハックしてマージようとしているエンジニアもいるけど、負荷が大きすぎるので避けたいところ」だという。
それでも同氏は「Googleがまたコミュニティの近くに来てくれて、一緒にコードフィックスできれば、という希望はもちつづけている」とまとめており、Googleの開発者たちに対し、行動を起こしてほしいと呼びかけている。