バックに企業がついているおかげで開発資金が潤沢、おかげで優秀な開発者を囲い込むことができ、比較的きっちりしたスケジュールどおりにリリースされるLinuxディストリビューション、といえば、やはり真っ先に名前が挙がるのはUbuntu、そしてFedoraだろう。UbuntuにはCanonicalと世界有数のお金持ちMark Shuttleworth氏が、Fedoraにはいまや数少ないOSSビジネスの成功企業となったRed Hatが、それぞれ支援を行っている。
さて、この二大Linuxの影に隠れがちな第3のディストロがopenSUSEである。Novellという歴史あるIT企業が支援を行い、オープンなコミュニティを形成、リリースも定期的に行っているにもかかわらず、ここ数年Ubuntu、Fedoraの後塵を拝しつづけている状態だ。どうもイマイチ地味な印象が拭いきれないんだよねえ……。国内ユーザもあまり見かけたことがない気がするが、コミュニティがあまり活発ではないというのも日本ローカルの問題ではなく、ワールドワイド共通らしい。
4月にリリースされたLucid LynxことUbuntu 10.04、5月に出たFedora 13に続き、openSUSEも7月に次バージョンの11.3のリリースを控えている。いつまでも日陰のディストロに甘んじてはいけない! と思い立った(と思う…)openSUSEのボードメンバーたちは5月末、ドイツのニュルンベルグで延べ2日半にわたる"openSUSEをなんとかメジャーにする"ことをめざした戦略会議を行った。かなりの激論が闘わされた模様だが、最終的には
- 開発者にとってのopenSUSE
- あらゆる派生バージョン(教育向けopenSUSEなど)にとってのopenSUSE
- モバイル/クラウド時代のopenSUSE
という点を重要視した戦略を策定し、まもなく正式に発表(欧州時間で6月8日)、その後、ユーザとも議論を30日間重ねるようだ。
興味深いのは、この議論のたたき台となった、openSUSE開発者たちによるopenSUSEのSWOT分析だ。ご存知のとおりSWOTとはビジネスの要素を「強み(S)/弱み(W)/機会(O)/脅威(T)」に分けて分析する代表的な戦略フレームワークである。強みや機会といった良い点だけでなく、弱みや脅威といったマイナスポイントを正しく把握できることが重要なのだが、openSUSEのメンバーはなんとも非常に正直かつ辛らつに自身のディストロを評価(批判)しているのである。たとえば…
- NovellはRed Hatのように"オープンソースの友人"的なイメージがない
- (Ubuntuのように)魅力的でお金もいっぱあるプロダクトが競争相手なんて……
- Javaが使えない
- マニュアルやFAQがぜんぜん整備されていない、クールな機能もこれじゃ使えない
- AppStore的なものがない
- ディストロの目的が不明確
- GNOMEかKDEか、どっちかにフォーカスしてほしい
- アプリが遅い or 不安定
- マーケティングの予算が足りない
- 開発者が老齢化している
- コントリビュータやパッケージメンテナーの数が少ない
- エンドユーザはもうトラディショナルなOSの開発者なんて必要としていないのでは……
(ちなみに強み/機会は弱み/脅威よりずっと多いです。念のため)
耳に痛いフレーズが続くが、こういった内側からの批評をも受けとめて、openSUSEが大きく変わろうとしているのは確かなようだ。彼らからの次のメッセージにも注目したい。