Linus Torvalds氏は5月18日付のLKML.ORGでLinuxカーネル2.6.39のリリースを発表した。3月にリリースされた前バージョンの2.6.38はパフォーマンスアップの新機能が多く追加され話題を呼んだが、今回の2.6.39もグラフィックドライバのアップデートなど改善点は多い。にもかかわらず、我らがLinusはどうも今回の出来にはややご不満のようだ。
2.6.39で最も注目したいのはグラフィックドライバ(DRM)周辺のアップデートだ。あのNouveauドライバ(NVIDIAドライバをリバースエンジニアリングしてLinuxに最適化させたグラフィックドライバ)でKMSページフリッピングが可能になったほか、OSSで提供されているAMD Radeon HD 6900 "Cayman" GPUのサポートが実現している。また、Alan Cox氏の尽力で、ネットブックなどに搭載されることが多いIntel Poulsbo(GMA 500)ドライバも今回から含まれている(ただし現段階ではアクセラレーションがサポートされていないもよう)。
グラフィックドライバ以外でも、仮想化機能のアップデートなど改善点は多い。だが、どうもLinus氏は今回のカーネルの出来にはあまり満足していない旨を明らかにしている。
LKML.ORGのポストでは、いきなり冒頭で「本当にファイナルカットリリースとしてコレを出していいものなのか、判断に苦しんだ」と告白、最終版とはせずにRC8(-rc8)として出すという選択もあったが、「2週間後に迫っているLinuxCon Japanへの準備を考えると、リリースを翌週に延ばせば最悪の事態になる」と判断、仕方なく今回のリリースに至ったという。そうしないと次の2.6.40の開発にも支障が出てしまうからだ。
Linus氏はなぜこんなに不満タラタラなのか? おそらく今回のリリースで追加されるはずだったいくつかの機能を取り込めなかったことが主な要因だと思われる。とくにIntel Sandy Bridgeのサポートについては2.6.39で実現しようと相当粘ったものの、このタイミングでは間に合わなかったことが痛かったようだ。また、2.6.38を採用したUbuntu 11.04では電力消費量が多くなるという現象が報告されており、その改善も図る予定だったが残念ながら先送りとなってしまった。
というわけで、次の2.6.40の開発では2.6.39で残された課題を解決することがまず最初の取り組みになりそうだ。パーフェクトとはいえないものの、とにかく日本に来る前にひと仕事終えたLinus氏、LinuxCon Japanに向けて入念な準備を整えるそうなので、日本のユーザとしては大いに期待したいところだ。