先日お伝えしたLinus Torvalds氏による「GNOME 3は開発者にとって使いづらい、いまはXfceを使っている」という発言は、予想通り(?)各所で話題(問題)となり、さまざまな余波が拡がっている。
Xfceを使っていると公言したLinus氏だが、そう聞くと当然、「ディストリビューションは何を使っているんだろう?」という疑問が出てくるというもの。これについて有名LinuxライターのMarcel Gagné氏は「Linusが使っているのはLinux Mint 11」と触れている。
MintはDebian/Ubuntuベースのディストロで、容易な操作性とモダンでエレガントなLook&Feelを実現することを目的としている。日本ではそれほどメジャーではないが、北米を中心に幅広いユーザ層を獲得しており、デスクトップ環境もGNOMEだけでなく、KDE、Xfce、LXDEと数多く対応している点も特徴だ。
- Linus Hates GNOME 3 and I Don't - Marcel Gagné
- URL:http://marcelgagne.com/content/linus-hates-gnome-3-and-i-dont
Linus氏はかつてインタビューで「僕がディストロを選ぶ条件はただひとつ、インストールがしやすいこと」と語っている。なので「これまでDebianを使ったことがない」とも言っており、FedoraやSUSEを使ってきたと明かしている。
同じインタビューで、日常において最も使用するアプリは「xtermとメールクライアントのAlpine、バックグラウンドでブラウザ」とも回答しており、日々のカーネル開発にあたってはxtermがサクサクと使えることが同氏にとって最も優先度が高いというのが覗える。おそらく件の「GNOME 3キライ」発言もxtermが使いにくなったことに対する不満がベースとなっていると思われる。
- Linus Torvalds talks future of Linux(page 3)
- URL:http://apcmag.com/linus_torvalds_talks_future_of_linux_page_3.htm
さて、Linus氏の発言によって矢面に立たされた格好のGNOME 3だが、アンチGNOME 3派にとってはこれほど力強い味方はいない。すでに多くのユーザが「GNOMEはフォークすべきか?」というディスカッションがてんかいされており、Red Hatに所属するIngo Molnar氏など有力なカーネルデベロッパも「そもそもGNOME 3はユーザの意見を容れて開発されていない」と厳しく批判、Linus氏の意見に同調している。
- Ingo Molnar -Google+ 2011/08/04
- URL:https://plus.google.com/u/0/109922199462633401279/posts/Js6GdznHgvx
今回の件は以前、KDE 4のリリースにあたり、ユーザインターフェースが大幅に変わることを嫌った一部のユーザから「KDE 3はKDE 4からフォークすべき!」という声が上がったときとまったく同じ状況、と分析する関係人もいる。結局、KDEのほうは収束し、現在は次バージョンのKDE 5に向けて開発のアーリーステージに入っているが、さて、GNOMEのほうも同様に落ち着くことになるのだろうか。それにしても、やはりLinus氏の発言の力は大きい。良かれ悪しかれ、彼がいてこそのLinuxであることをまざまざと思い知らされるできごとである。