Red Hat Enterprise Linux(RHEL)のクローンといえば、これまでCentOSが強い人気を誇っていた。とくにホスティング事業者やデータセンター事業者にとって、サブスクリプション料金のいらないCentOSは、激しい価格競争を勝ち抜くための重要なプラットフォームであった。
だが本稿で何度かお伝えしてきたとおり、ここにきてCentOSの開発は大幅な遅れが目立つようになった。とくにCentOS 6.0は本家のRHEL 6.0がリリースされてから8ヵ月以上も遅れての公開となり、多くのユーザをいらつかせたことは記憶に新しい。
CentOSの評判が下り坂になってきたところで、オルタナティブな存在のRHELクローンとして注目され始めたのが米フェルミ研究所と欧CERNが開発するScientific Linuxだ。6.0の開発でもたついていたCentOSを尻目に、3月にScientific Linux 6.0を、そして7月末にはアップデートバージョンであるScientific Linux 6.1を、ほぼスケジュール通りに公開している。ちなみにCentOS 6.1についてのアナウンスは今のところ聞こえてこない。
このように非常に順調に開発を続け、ユーザ層も拡大しつつあるScientific Linuxだが、先日、プロジェクトの命運を左右しかねないニュースが入ってきた。開発チームの中心人物であるTroy Dawson氏が9月2日をもってフェルミ研究所を離れ、なんとRed Hatに移籍することになったのである。当然、Scientific Linuxの開発からも離れることになる。
- Farewell from Troy-Troy Dawson
- URL:http://listserv.fnal.gov/scripts/wa.exe?A2=ind1108&L=scientific-linux-users&T=0&P=30820
Dawson氏は、Scientific Linuxのリードデベロッパ/チーフアーキテクトとして8年もの間プロジェクトを統括してきた。CentOSの開発体制に遅れが生じた要因として、Red Hatがクローン対策を強化していることが挙げられるが、にもかかわらずScientific Linuxが順調な開発を続けてこれたのは、Dawson氏の力に拠るところが大きい。その要の人物をよりによってRed Hatに引き抜かれてしまったのだから、今後のプロジェクト運営にも大きな支障が出ることが予想される。
Dawson氏の後に誰がチーフアーキテクトを務めるかはまだ決まっておらず、今後のプロジェクトの行く末が気になるところだ。