いまの若い読者ならその名前を知らない人も多いかもしれないが、
そんなTanebaum教授がフランスのWebメディア
- 教授自身は現在あまりMINIXのコードを書いていない。かわりに3人のフルタイム開発者が教授の下でコーディングをしている。
- MINIXは"伽藍とバザール"モデルを否定しているわけではない。アムステルダム自由大学以外にも開発者の窓口はオープンにしている。が、
品質を保つため、 誰も彼もが作ったパッチを採用するといったことはしない。 - MINIXの次のバージョン
(MINIX 3. 2) では3つのことに注力している: NetBSDとの互換性、 組込みシステムへの対応強化、 そして信頼性(可用性)の向上だ。 - WindowsやLinuxでは、
真の意味で24時間365日止まらないシステムを構築するのは無理。MINIXではリブートなし、 他のプロセスに影響を与えることなしでライブアップデートすることを目指している。 - 世の中に存在する32ビットコンピュータのうち、
95%以上が組込みシステム。MINIXはそのモジュラリティや信頼性、 メモリフットプリントの小ささなどから組込みシステムとの親和性が高い。さらにBSDライセンスなので企業からのウケがいい。GPLだからLinuxを採用しないという企業にとってのリプレース的存在。 - MINIXのマルチコア対応は大きな課題。ファイルシステムやネットワークスタックをコア単位で分割していかに信頼性を高めていくかに注力している。
- ユーザランドのユーティリティをNetBSDから移植したのは、
NetBSDが非常に成熟したOSだから。Linuxはその域に達していないし、 コードがしょっちゅう変わりすぎる。NetBSDのパッケージ数は8,000くらいだが、 これくらいがちょうどいい。 - もしMINIXがGPLライセンスだったらLinuxより先に支配的な存在になっていたと思うかだって? 絶対にそんなことは思わない。MINIXに関して失敗したことあるとしたら、
それは1992年のAT&Tから起こされた訴訟問題が想像以上に長引き、 BSDが落ち目になってしまったこと。Linuxはそのあとに登場し、 勢いを得た。もしAT&Tが訴訟を起こさなかったらいまのLinuxの隆盛はない。 - Linus Torvaldsが以前マイクロカーネルについて
「紙の上のアイデアとしては優れていると思うけど、 現実世界ではうまくいかない。マイクロカーネルはモジュールを独立させ、 インタラクションをより複雑かつインダイレクトなものにしてしまう」 と述べたが、 これに関してはまったく同意しない。Linusは自分がよく知らないことについて発言しているとしか思えない。Linuxで同じことをやろうとしてもスパゲティ化して無理かもしれないが、 MINIXはモジュール設計がすぐれているので、 個別のアドレス空間でも問題なく動作する。 - だいたいLinuxが"成功した"というのはいかがなものか。成功とは相対的な概念でしかない。Linuxのユーザなんて全体の5%程度、
一方でBSD由来のMac OSのシェアは30%だ。5%で成功というのはおかしな感じだ。 - モバイルへの移植については、
1月からARMへのポーティングをはじめる。 - 組込みのシェアではLinuxが支配的なのではという意見もあるが、
そうは思わない。組込みの30%がOSをなにももたないシステムで、 そのほかの30%が独自OS、 残りをLinuxやVxWorksやNetBSDが争っていて、 ビッグプレーヤーはいない状態。それにGoogle/ Androidなど、 GPLが嫌なのとコードをシンプル化したいということで、 ユーザランドをLinuxからBSDに移す作業をやっているところは多い。つまり、 MINIXは時代の先を行っているということ。 - MINIXと並ぶマイクロカーネルOS
「L4」 はスマートフォンなどで採用が進んでおり、 マイクロカーネルの普及にとってはけっこうなことだ。MINIXとの違いはユーザランドにLinuxを使っていること。 - マイクロカーネルが世界を獲ってほしいと思っているかと聞かれたら、
そりゃそうなってほしいとは思っているけど、 この件に関しては控えめでいることにしている。GoogleやMicrosoftはユーザスペースにものすごく投資しているから、 その流れで行けばマイクロカーネルは有利なのでは。もっとも時代をあんまり先に行き過ぎるのはよくない。SunがJavaをリリースするずっと前の1978年にいまのJava VMに近いことを書いた論文を出したけど、 何も得ることはできなかった。こういうことは人生ではよくある。
1992年にTanenbaum教授とLinusがマイクロカーネルで議論を闘わせた事件は有名だが、