我らがLinus Torvaldsはソーシャルメディアの中でもGoogle+がお気に入りのようで、公私に渡る出来事を彼らしい率直な表現で頻繁に書き連ねており、Linuxメディアにとってはチェックが欠かせない情報源である。そのGoogle+に書かれた2月29日の投稿が、ちょっとした波紋を呼んでいる。
コトの発端はLinusの中学生になる娘が学校からかけてきた1本の電話。「学校のプリンタにマシンがつなげない。管理パスワードを要求されるんだけど」という愛娘の戸惑いの声に、Linusはキレた。「インストールが簡単だから」とMacBook Airに入れて愛用していたopenSUSEに対して、である。「いままで使ってきたけど、もうイラネ。MBA用に新しいディストロを探さなきゃ」と激しい苛立ちを隠さない。
なぜLinusはこんなにもopenSUSEに対して怒りを見せているのか。実はLinus、ここ数週間ほどバグトラッキングシステムのBugzillaで、Linuxのセキュリティポリシーに関して議論を続けていた。
セキュリティと使い勝手はトレードオフの関係にあるとよく言われるが、Linusはどちらかというと使い勝手を優先するタイプである。無駄で面倒なことを極力嫌うLinusは、「タイムゾーンを変更したり、新しいワイヤレスネットワークを追加するだけのことに、ルートパスワードは必要ない」と主張、ちょっとした設定の変更やデバイスの追加に対して管理者権限がいちいち要求されるようなUIを「頭悪い、間違ってる(moronic and wrong)」と否定してきた。
そんな矢先にかかってきた娘からの電話にLinusの癇癪玉がついに爆発、怒りの矛先がopenSUSEに向かったというわけだ。
「ここで(ディストロ開発者に)お願いするよ。セキュリティを検討するときは、ウチの子供たちがワイヤレスネットワークにつなごうとするとき、印刷しようとするとき、デートの時間を変更しようとするとき、いちいちルートパスワードを要求するような仕様にしないでほしい。"ウチの子供"を"自分の顧客"に読み替えればその重要性がわかるでしょ。もしそんな仕様にするなら、いますぐ死んじゃえ(kill yourself now)」
Linus Torvalds - Google+ 2012/02/29
このLinusらしさ全開の怒りコメントに対して、共感&絶賛するユーザ、「ちょっと待ってよー」と困惑する関係者と反応はさまざまだ。槍玉に挙げられたopenSUSEでディレクターを務めるAndreas Jaegerは「Linusの言いたいことはわかるけど、物事は彼が言うほど単純じゃないんだよ……」と複雑な心境を吐露している。LinuxアイコンのLinusに"死んじゃえ"と言われれば、ディストロ開発者としてはつらいところだが、エンタープライズでの採用を増やしたいopenSUSEにとってはセキュリティポリシーの変更をやすやすと受け入れることは難しいだろう。
春にはいくつかのメジャーディストロがこぞって新バージョンをリリースするが、今回の件は果たしてどの程度、その使い勝手やセキュリティポリシーに影響を及ぼすのだろうか。