世の中にはさまざまなシステムが動いているが、一般に"ミッションクリティカル"と言われるシステムは、基本的に落ちてはいけないことが大前提となっている。したがってプロプライエタリで完全な挙動の把握が難しいWindowsやMac OSよりもUNIX/Linuxの採用がずっと多い。金融とか交通とか、社会インフラを直接支えるシステムではなおさらそうだ。Windowsで動作する旅客機とか、Macで稼働する原発とか、想像するだけでもおそろしい。
さて、ミッションクリティカルといえば防衛に関わる分野もそれに当てはまるだろう。昨年9月、米空軍ではネバダ州の基地で無人機システムがマルウェアに感染するという、対外的にはかなりみっともない事件が起こった。誰かがつなげたポータブルデバイスからウィルスがWindowsベースの地上制御システムに感染したのだ。空軍のセキュリティチェックの甘さとともに、ミッションクリティカルなシステムにおけるWindowsの脆弱性が印象づけられた出来事でもあった。
以来、空軍ではWindowsからLinuxへのマイグレーションが続いており、くだんの無人機システムも現在はLinuxベースに変わっている。そして空軍と同じ轍を踏まないようにしているのか、6月8日、米海軍はメリーランド州にあるパタクセントリバー基地に置く無人機用垂直離着陸システム(VTOL)をLinuxで構築するため、合計2,788万3,883ドルの契約をRaytheon Intelligence and Information Systemsというコントラクタと交わした。同基地には168の無人機が存在するが、これらで編成されたフリートによる110マイル四方におよぶ偵察がLinuxバックボーンで行われることになる。システム構築完了は2014年2月を予定している。
このケースのようにセキュリティ上の課題から、米軍ではLinuxへのマイグレーションが続いている。とくに無人機の制御のようにミスが許されない分野でのリプレースはこれからも進みそうだ。