「Oracleはカーネル開発にも貢献している。Javaだって、MySQLだって、すごくコミュニティを大切にしてオープンな開発を維持している。なのにどうしてOSSな人たちから信用されないんだ」─ こんな声がときおりOracle社内のOSS関係者から発せられることがある。あえてその答えを言うなら、「Oracleはいつ、我々を敵として攻撃してくるかわからないから」というところだろう。たとえばこんなページを堂々と公開しているのだから、明日は我が身と思うOSS関係者がいても、まったくおかしくない。
- Oracle Linux: A better alternative to CentOS
ご覧になればおわかりのとおり、このページでOracleはCentOSユーザにOracle Linuxへの移行を勧めている。Oracle LinuxもCentOSもRed Hat Enterprise Linux(RHEL)をオリジナルとするクローンOSである。同じクローンでも「Oracle Linuxのほうがセキュアで、RHELのアップデートにも迅速に対応し、フルタイムの開発者をたくさん雇って開発している。なによりすばらしいサポートを提供できる。エンタープライズにはOracle Linuxが最適」というのがOracleの主張である。
Oracleは2006年、「Unbreakable Linux」を謳い、Red Hatよりもすぐれたサポートを提供するとしてRHELのクローンの提供を開始した。Red HatがRHELをアップデートすればOracleも約1週間で追随してきた。だがどうしてもOracle LinuxはREHLの牙城を崩すことができない。そうこうしているうちに、OSSプロジェクトのCentOSがデータセンターやクラウド事業者の間で人気となる。一時期、開発に遅れが生じたこともあったが、いまではRHELのアップデートに約2週間で対応している。RHELからシェアを奪えないOracleは、今度はCentOSのユーザ層に目をつけたようだ。
もちろん、これがOSS関係者のやり玉に上がらないわけがない。もっとも今回はあまりのバカバカしさに、皆が鼻で笑っている雰囲気すら漂っている。
- Oracle launches "a better alternative to CentOS"
それにしても、どうしてこう、OracleはOSS関係者の神経を逆なでするようなことばかりするのだろう。Oracle LinuxのもとになっているRHELはRed Hatが苦労して作り上げたものである。その源流はOSSのFedoraだ。Oracle Linuxに含まれるOracleの独自性なんてせいぜい1%にも満たないはずだ。昨年、DTraceの実装を発表しているが、Oracle Linuxではまともに動かないことをDTrace開発者が表明している。
あえて言うが、Oracle LinuxはOSSの成果物をコピーし、それにお得意の"サポート"をくっつけたようなものである。なのに同じクローンのCentOSを貶めるようなマーケティングを平気でやる。そこにはOSSに対する何のリスペクトも感じられない。これでどうして、OSSユーザや開発者がOracleを尊敬し、信頼することができるというのか。どんなにOracleの中の開発者がOSSに貢献したところで、こうした行動がそのすべてをぶち壊す。いい加減、Oracleもそのことに気づいたほうがいい。