あまり問題がないと思っていたら土壇場でカーネルスワップデーモン(ksapd)の問題で四苦八苦し、ようやく12月10日(米国時間)にリリースしたLinux 3.7。最大の注目点はARMアーキテクチャ関連の大幅な改善で、64ビットARMやARMマルチプラットフォームのサポートが行われている。そのほかBtrfsのアップデートやNFC v4.1の正式サポートなどもあり、派手な話題は少ないものの、地道に進化していてる印象だ。続くLinux 3.8のマージウィンドウもさっそくオープンしており、年内は12月24日までプルリクエストを受け付けるようだ。
カーネルが3.7、そして3.8へと進化しようとしているその横で、一世を風靡したひとつのアーキテクチャのカーネルサポートが終わりを告げた。Linux 3.8ではi386の通称でおなじみのIntel 80386プロセッサのサポートを終了することが決定し、Linusはすでにメインラインツリーからi386関連のコードを削除している。
1985年に誕生したi386だが、すでにIntelが2006年に生産中止を発表してから6年以上が経過しており、これ以上、歴史の遺物となったアーキテクチャをサポートし続けることに意味がなくなったと思われる。今回のコード削除により、i386のために生じていた複雑性の問題からも、貴重な開発リソースを割く必要性からも解放されることになる。
当然ながらこの判断を下したのはLinus Torvaldsである。GitHubのカーネル開発者メーリングリストにおいてRed HatのIngo Monar氏が書いた「若干のノスタルジックコストはあるかもしれない。(Linusが)1991年から使っていたオリジナルの386DX 33マシンはもう新しいカーネルではブートしなくなる」という一文に対し、Linusは「そんなことで感情的になったりしないよ。いい厄介払いができた(I'm not sentimental. Good riddance.)」といかにもLinusらしいコメントを返している。
なお、Linuxカーネルのi386サポート中止を受けて、GCCプロジェクトもi386のサポートを中止すべきではないかという議論が始まっている。いずれにしろ、i386が過去形でしか語られない日はそう遠くないようだ。