6月30日、Linus TorvaldsはLinux 3.10の正式リリースを発表した。リリース候補(rc)版は7回、大きな遅れもなくほぼ予定通りの公開となった。Linux 3.10には数多くの新機能/改善点が盛り込まれており、さっそく10月登場予定のUbuntu 13.10での採用が決まるなど、このリリースに関連してさまざまな動きが起こっている。
Linux 3.10の最大の注目ポイントとして、SSDキャッシング機能「bcache」の実装とマルチタスキングの向上が挙げられる。
ライトスルーとライトバックの両方のキャッシングに対応したbcacheは、特別なセットアップを必要とすることなく、またデスクトップ/サーバ/ハイエンドストレージアレイといった環境を気にすることなく、SSDをキャッシュとして利用可能にする。ただしデフォルトでシーケンシャルI/Oには対応していない。
マルチタスク機能はここ数年のカーネル開発において継続的に改善が図られてきたが、今回のリリースでは完全ではないものの、高いレベルでのタイマーフリー(タイマー非依存)なマルチタスキングを実現し、パフォーマンスの向上が図られている。1秒間に1度程度の起動は要するが、それ以外はタスクが実行中でもティックレス(CPUのスリープ状態)を保つことができるという。ただしCPUが1つ以上のプロセスを実行していたり、他のCPUがティックレスモードに入っているときは、このマルチタスキング機能は無効になる。
その他、BtrfsやXFSの改善、ARM big.LITTLEアーキテクチャのサポート、MIPSのKVMサポートなどが実施されている。Btrfsは拡張ツリーサイズの30~35%縮小を実現したが、Btrfsの開発者であるFusion.ioのChris Mason氏がマージウィンドウがクローズするぎりぎりのタイミングでプルリクエストをLinusに送ったため、Linusが「ほんとマジで、こういうでかいプルリクエストはもっと早く送ってもらいたいんだけど! すげー気分悪い」とキレかかるワンシーンもあった。
1つのバージョンのマージウィンドウがオープンしてからクローズするまでの約2ヵ月、Linusが何度か切れかかるのはもはや日常風景に近い。だが今回は比較的、「激おこモード」に入る回数が少なかったようで、正式公開も遅れることなく予定通りの運びとなった。この状態が次のバージョンであるLinux 3.11でも続くことを願いたい。