Debianをベースにしたディストリビューションには、UbuntuのようなメジャーでスタンダードなOSだけでなく、特定の用途に特化したユニークなものが少なくない。オーストリア、ウィーンで開発されている「Proxmox VE」もそのひとつだ。"VE"とはVirtual Environment=仮想化環境を表しており、その名の通り、ハイパーバイザとしての役割に特化している。そのProxmox VEの最新バージョンとなる「Proxmox 3.3」が9月15日にリリースされた。
Proxmoxは2005年創業のベンチャーProxmox Server Solutions Gmbhが開発するオープンソースのディストリビューションだ。ライセンスはAGPL 3.0を採用しており、サポート付きの商用パッケージ版も用意されている。CEO兼開発責任者はDebian開発者でありOpenVZコミュニティのメンバーでもあるMartin Mauer氏。同氏はLinuxのほかにもERPやデータベース、グループウェアからセキュリティ全般まで、エンタープライズITに関する幅広い知識と技術をもつことで知られる。
ProxmoxはKVMとOpenVZのホストに特化したOSで、仮想マシンの管理はWeb上で行う。WindowsやほとんどのLinuxディストリビューションをゲストOSとして稼働させることが可能で、インストール自体は非常に容易だ(ただし専用で動かすためのベアメタルマシンが必要)。アプリケーションのデプロイが速いことや、1つのホストでコンテナとフル仮想化を実現する点も高く評価されている。"VMwareのOSSバージョン"は言い過ぎかもしれないが、きわめて汎用性の高いサーバ仮想化環境といえるだろう。また、改善の余地は多分にあるものの、日本語のWebサイトも用意されている。
新バージョンの3.3では数多くの機能改善が実施されている。今回あらたに追加された機能としては以下のようなものが挙げられる。
- HTML5コンソール
- Proxmox VE Firewall
- 二要素認証
- ZFSストレージプラグイン
- モバイル用タッチインタフェース
- qemu 2.1
現在17の言語に対応し、140ヵ国/6万2,000ホストで稼働中というProxmox VE。新バージョンリリースでさらにその普及にはずみをかけたいところだ。