ふだん便利に使っているツールの、その中でもいちばん使っている機能があるとき突然使えなくなってしまった…そうした場合の一般的な対策として考えられるのは、なるべく似た機能をもつ別のツールを探して代替にすることだろう。とはいえ手になじんだUI/UXの細い違いはいかんともしがたく、かえって作業効率が下がることも少なくない。腕に覚えがある開発者なら、ツールを自作するということも可能ではある。
Ubuntuの派生プロジェクトである「Xubuntu」も、2015年のあるときから突然、ふだんから使っているUbuntuデフォルトのステータストラッカーが使えなくなるという事態に遭遇する。XubuntuではCanonicalが提供する開発コラボレーションサイト「Launchpad」にトラッキングデータを置いていたが、ステータストラッカーからこれらのデータを扱うことができなくなってしまったのだ。
この事態に困ったXubuntuの開発メンバーらは、数日間考えたのち、別のプロジェクト管理ツールに乗り換えるのではなく「ステータストラッカーを自前で作る」という選択をする。その開発中のステータストラッカー「Xubuntu status tracker」のステータスが11月1日からXubuntuのサイトでテスト的に公開されている。
- Presenting the Xubuntu status tracker - Xubuntu
このステータストラッカーは「Overview」「Details」「Burndown」「Timeline」という4つのメインビューをもっている。Overviewでは全体像が掴みやすいだけでなく、Launchpadを開かなくても、個々の仕様についてクリックするだけで詳細を確認することが可能だ。またDetailsではフィルタリング機能が実装されており、「Text」と表示されている欄にチェックしたい項目(ワークアイテム、たとえば「xfce4」「gtk」など)を入力すると、条件にあった検索結果だけが表示され、詳細を確認しやすくなっている。Burndownは文字通りバーンダウンチャートを表示し、プロジェクト全体の進捗状況をひとめで確認できるが、このトラッカーの特徴として、チームが現在想定している重要なイベント(ベータやRCなどのフリーズ)を表示できるようにしているという。さらにTimelineではどのワークアイテムがいつ完了したのかが表示されるが、これはXubuntuのオリジナルの機能となっている。
4つのメインビューのほかにもwikiやカレンダーとの統合や、IRC、ドキュメンテーション、メールとの連携なども進めており、コラボレーションツールとしての側面も強化していることがうかがえる。また、将来的にはLaunchpadに頼らずに、ワークアイテムを自前でストアして開発していくことも考慮しているという。欲しいものがないから自分たちで作る ―まだ実験的な域を出ていない段階だが、開発者のクリエイティビティを感じさせるオープンソースらしいプロジェクトとして期待がかかる。