Linus Torvaldsは3月5日(米国時間)、次期Linuxカーネル「Linux 4.11」の最初のリリース候補版である「Linux 4.11-rc1」を公開した。
- Linux 4.11-rc1 :Linus Torvalds
LinusはLinux 4.11のボリュームについて「今回はごく一般的なリリースになりそう。変更部分もそれほど多くない。もっとも4.9や4.10に較べたら、というレベルなので、すごく小さいリリースというわけではないのだけれど」とコメントしており、とくに目立つ機能の追加や修正はないという見通しを示している。
今回のLinux 4.11-rc1は通常通り、Linux 4.10の正式リリース直後にオープンしたマージウィンドウが2週間後にクローズしてから公開されている。だがこのサイクルをスムースに回すためにはLinusとコミュニティがこれまで築いてきた「マージウィンドウのためのシンプルなルール」(Linus)が存在する。マージが必要なパッチはまず「linux-next」ツリーに投げるというルールだ。だがこのルールを守らず、linux-nextをバイパスしてメインラインになんとかマージしてもらおうとする開発メンバーは少なからず存在する。そしてどうやら今回はいつも以上にそうした輩が多かったらしく、Linusはかなりはっきりと不快感を表している。
linux-nextはStephen Rothwellが管理するGitリポジトリで、開発者は次期カーネルにマージさせたいパッチがあれば、まずここに入れる。パッチのIDをlinux-nextとマージウィンドウで一致させるためだ。だが、ルールは必ずしも守られない。Linusは「fixesやstartxのシステムコール関連などのパッチはある程度しかたない。でも<linux/sched.h>に関してはかなりひどい。そして今回目立ったのはサブシステムやInfiniBand、DRM、btrfsなど」と具体的なソースをあげ、「こんな簡単なルールすら守れないなら、それに見合った結果を手にすることになるだろう」とコメント、「次のマージウィンドウではそういう"自分勝手なパイバス行為"はいっさい受け付けない。もし次回、linux-nextに入っていないコードをマージさせようとするヤツがいて、そいつが僕の“クソリスト”の常連なら、また僕に怒鳴られることになるだろう」と強い口調で警告している。
このパッチをどうしても追加してほしい! という開発者ならではの思いがバイパス行為となって現れるのだろうが、Linusはそういうルール違反をもっとも嫌う。だからこそ25年もの間、Linuxカーネルという膨大な量のソースコード開発を維持できている。次のマージウィンドウがクローズするときはLinusの怒りが静まっていることを願いたい。