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2018年4月2日最低でも20年 ―東芝らが取り組む"スーパーロングなカーネルサポート"プロジェクト

The Linux Foundationではメンバー企業によるさまざまなプロジェクトが展開されているが、その中のひとつに東芝や日立など日本企業が中心となって立ち上げられた「Civil Infrastracture Platform(CIP⁠⁠」がある。名前の通り、社会インフラのプラットフォームとしてLinuxやオープンソースの実装を進めていくことをめざすプロジェクトで、参加企業は現在7社、まだ規模はそれほど大きくない。

Civil Infrastructure Platform

交通機関や発電所といった社会インフラにおいては、システムの誤作動は決して許されない。したがってインフラ機器に搭載されるソフトウェアには高い信頼性と品質が求められる。Linuxやオープンソースは現在、社会インフラにおいても広く採用されているが、当然ながら求められるレベルは高い。このため、これらのインフラ機器を開発するベンダは多くの課題に悩まされてきた。安定した機能やリアルタイム性の提供、そしてとくにやっかいなのが"長期運用"という壁である。

Linuxのカーネルサポート期間は短い。Red HatやAWSのように、自社の顧客に対して長期のサポートを提供するベンダもあるが、カーネルそのものサポート長期化を望む声は、以前から金融や製造業を中心に根強くある。昨年、LTS(長期サポート)版が2年から6年に延長されたが、つねにシステムの安定稼働を望む企業にとってはそれでも短い。

製品出荷に10年、その後のメンテナンスに10年を要することもめずらしくない社会インフラ機器の場合、一般企業よりもさらに長期の運用を求められる。何十年も稼働する安定した社会インフラの提供のために、最低でも20年はサポートするカーネルを作りたい ―こうした思いのもと、CIPのメンバー企業は現在、⁠SLTS(Super Long Term Support⁠⁠」カーネルの開発に取り組んでいる。その最初の成果物として、Linux 4.4 LTSをベースにした「Linux 4.4.120-cip20」が3月8日にリリースされた。メンテナーはDebian開発者としても有名なBen Hutchingsが務めている。

Civil Infrastructure Platform
cip-project/ cip-core -GitLab

Linux 4.4 LTSは2016年1月にリリースされたカーネルだが、CIP SLTSでは最新のMeltdown/Spectre対策や、リアルタイムプリエンプションパッチ、メンバー企業であるSiemensの産業機器サポートなどが追加されている。とくにリアルタイム性の担保は、限られた時間内で必要な処理を行わなければならない交通システムなどで欠かせない要件だけに、社会インフラに関わるメンバー企業の多いCIPらしい実装だといえる。

メンバー企業のなかでもCIPの普及活動に積極的なのが東芝で、同社のオープンソース技術部 小林良岳氏は3月に米ポートランドで開催された「Embedded Linux Conference」でCIPとSLTSの概要を開設するセッションを行っている。100年続く社会インフラを"スーパーロングなカーネルサポート"で構築していく ―日本のインフラ企業の取り組みとしても興味深い。

Super long-term kernel support [LWN.net]

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