欧州のオープンソース関係者を大きく失望させた独ミュンヘン市のデスクトップ環境移行のニュースから約5ヵ月、同じドイツで今度はミュンヘンとは逆の動きが生まれている。ドイツのニュース週刊誌「SPIEGEL」のオンラインサイト「SPIEGEL ONLINE」は4月17日(ドイツ時間)、ドイツ連邦政府がファイル共有/コラボレーション基盤にオープンソースの「Nextcloud」を採用すると報じた。
- Open-Source-Software: Nextcloud baut die Bundescloud -SPIEGEL ONLINE
Nextcloudはプライベートクラウドやオンプレミスにおけるファイル共有環境を提供するサービス。DropboxやGoogle Driveのようなクラウドベースのファイル共有サービスと同様の環境をプライベートクラウド上でセキュアに構築できることから、エンタープライズでの導入が増えつつある。もともとはオープンソースプロジェクト「ownCloud」の開発者がフォークさせたプロジェクトで、現在はドイツ・シュトゥットガルトに本拠を置くNextcloud社が中心となって開発を進めている。代表的なユーザ企業はドイツ銀行、Vodafone、BNP Paribaなどで、やはり欧州の大企業が多い。
ドイツ連邦政府は現在、政府自身が運用するプライベートクラウド「Federal Cloud」にIT基盤を集約しており、約30万人のユーザがこれを使用している。SPIEGEL ONLINEによれば、連邦政府が2017年にMicrosoft製品に費やしたコストは約7400万ユーロ(約98億円)にも上り、内外からのコスト削減要求が強まっていた。欧州では政府やパブリックセクターでのオープンソース採用の動きが活発化しているが、その最大の理由はやはりコスト削減効果が大きいことにある。また、ソースコードが見えないプロプライエタリソフトではセキュリティホールに気づきにくいという観点から、オープンソースにシフトする場合も少なくない。ドイツ連邦政府のNextcloud採用も、そうした欧州のトレンドに乗ったかたちだ。
また、2018年5月から施行される「EU一般データ保護規則(GDPR: General Data Protection Regulation)」に対しても、Nextcloudであれば法令に準拠した運用が可能だという。
ドイツ連邦政府とNextcloudの契約期間は3年となっている。3年後にミュンヘンと同じようなケースが起こらないことを期待したい。