カーネル開発においては新しい機能の追加やセキュリティ強化ばかりではなく、誰も使わなくなった古い機能やシステムをリムーブすることも重要な作業である。そして現在、削除の候補に上がっている機能のひとつが、Linux 2.6.30から実装されてきたファイルシステム「EXOFS(Extended Object File System)」だ。
EXOFSはext2から派生した、外部のオブジェクトストアをベースとして利用するファイルシステムで、最初に開発したIBMでは「OSDFS(Object-based Storage Device File System)」と呼ばれていた。EXOFSに名称が変更された2008年ごろは、従来のファイルシステムでは見られなかったスケーラビリティを高く評価され、「次世代のファイルシステム」と持ち上げられたこともあった。
EXOFSはLinux 2.6.30からメインラインに取り入れられた。しかし実際に使われるケースはあまり増えることがなく、Linux 3.0以降はこのファイルシステムをサポートするディストリビューションもない。ここ数年は新機能などもまったく追加されていない。
使われなくなったシステムがいつまでも残っていることはカーネル肥大化の原因となりかねない。当該のコードをまるごと削除すれば、1万行近くをシュリンクすることができる。「EXOFSは現実の世界にユーザがいないし、もう何年もメンテナンスされていない状態が続いている。(コマンドセットのT10 OSDを含めて)そろそろEXOFSをメインラインから外す時期だと思う」 ―著名なカーネル開発者のChristoph Hellwigは10月27日付でLKMLにこう投稿している。
- remove exofs and the T10 OSD code V2 - Christoph Hellwig
これに対し、EXOFSを現在メンテナンス(?)している開発者Boaz Harroshは「メンテナンスされてないとはどういう意味だ。おれは誰かから(EXOFSへの)問い合わせがあったらすぐに対応している。おれはこのコードのメンテナーとしてリストされている」と反論している。
- Re: remove exofs and the T10 OSD code V2 - Boaz Harrosh
Harroshの"反論"はあれど、おそらくはHellwigの示すとおり、EXOFSはメインラインから削除される可能性が高いと見られている。何事も始めるときより終わらせるときのほうが見極めが難しいが、Linuxカーネルにおいても同様のようだ。