日本ではライバルのRed Hatの影に隠れがちだが、グローバルにおけるエンタープライズLinuxの世界ではSUSEのシェアは高く、とくに本拠地の欧州では多くの企業がインフラ基盤にSUSEのプロダクトを採用している。また、主力製品の「SUSE Linux Enterprise Server(SLES)」はインメモリデータベースの「SAP HANA」や列指向データベースの「Teradata Database」といったハイパフォーマンスなデータベースとの親和性が高く、さらにレガシーなメインフレームから最先端のパーシステントメモリに至るまで、幅広いハードウェアに対応できる柔軟性をもつことから、ヘテロジニアスな構成になりがちなエンタープライズ環境での評価は高い。もちろん、オープンソースの世界でも(これも日本では若干影が薄いが)openSUSEの開発元として、100を超えるオープンソースプロジェクトをサポートする企業として知られている。
そのSUSEが3月15日(ドイツ時間)、ふたたび独立企業として新たな一歩を踏み出したことを発表した。2018年7月、SUSEのオーナーであったMicro Focusが投資会社(グロースインベスター)のEQTにSUSE事業を25億ドルで売却すると発表していたが、その買収が8ヵ月越しでついに完了したのである。今後、EQTはSUSEのオーナーではなくパートナーとして同社の経営をサポートする。
- SUSE Completes Move to Independence, Reaffirms Commitment to Customers, Partners and Open Source Communities as Industry's Largest Independent Open Source Company -SUSE Communities
Micro Focusの傘下にあったころから引き続きSUSEのCEOを務めるNils Brauckmannは「現代のITトレンドではオープンソースがエンタープライズにおいてより重要な地位を占めていることは明らかだ。そしてその事実は、真の独立系オープンソースカンパニーとしての我々のステータスを、これまで以上に高めてくれると確信している」と語っているが、最大のライバルであるRed Hatが年内にもIBMによる買収が完了する予定でもあることから、あらためて名実ともに世界最大手の独立系オープンソース企業としてのポジションを狙いにかかる姿勢をうかがわせる。
1992年に会社が設立(当時の社名はSuSE)、1994年に最初のディストリビューションである「S.u.S.E Linux 1.0」を出したのち、2004年にNovellに買収されたものの、2010年にはそのNovellが投資会社のAttachmate Groupに買収され、SUSEは一時的に独立企業に復帰する。しかし2014年に親会社のAttachmateがMicro Focusと合併したことにより、ふたたびMicro Focusの一事業部門となったものの、今回のEQTの買収により晴れて3度めの独立を果たすことになる。これほど経営母体がころころと変わっているにもかかわらず、SUSEのビジネス自体は成長を続けており、またオープンソースコミュニティのopenSUSEも長期に渡って健全に運営されている点も、事業継続が難しいとされているオープンソース企業にあって非常にレアなケースだといえる。
独立企業として新たなスタートを切ったSUSEだが、今後は欧州だけでなくRed Hatの後塵を拝していた米国や日本でのシェア拡大も期待される。新生SUSEのグローバル戦略にも注目していきたい。