多くのLinuxディストリビュータを悩ます長年のハードルのひとつが、デスクトップ版ユーザ層の拡大だろう。ビジネスユーザやコンシューマがWindowsやmacOSのようにデスクトッププラットフォームとしてLinuxを使う日が来ることを夢見て、Linuxデスクトップ開発者たちは長いこと努力を続けてきたが、残念ながらそれが報われる気配はあまり感じられない。たとえば「NetMarketShare」のデータを見ると、2019年5月のデスクトップLinuxのシェアは1.37%で、サポートが停止しているWindows XP(2.22%)よりも少ない。
- Operating System Market Share by Version
だがそうした中にあっても、ほとんどのLinuxディストリビュータは"使ってもらえる"デスクトップをめざして開発を続けている。デスクトップへのフォーカスをずっと続けているFedoraはその代表的な存在だ。6月24日(米国時間)、Red Hatでデスクトップ開発部門のシニアマネージャを務めるChristian Schallerは自身のブログに「On the Road to Fedora Workstation 31(Fedora Workstation 31に向けて)」という投稿をポストし、2019年10月にリリースが予定されている「Fedora 31」のデスクトップ版(Fedora Workstation)について、現在進めている取り組みを公開している。
- On the Road to Fedora Workstation 31 -Christian F.K. Schaller
Schallerによれば、Fedora Workstation 31ではGNOMEとXサーバ(XWayland)の完全な分離、PipeWireによるJack/PulseAudioのリプレース、Flatpakによるアプリケーションデプロイの本格化、開発者のためのイミュータブルな環境をコンテナとして提供する「Fedora Toolbox」、GNOME 2スタイルを提供する「GNOME Classic」モード、大規模組織向けの設定ツール「Fleet Commander」でのAtctive Directoryサポート、指紋認証サポートなどが予定されているとのこと。
とくに力を入れているのが最初に挙げている"Xからの脱却"で、「GNOME ShellはXWaylandなしで動作させなければならない」とXと依存関係にあるデーモンの削除に取り組んでいるという。Fedora 31では9月リリース予定の「GNOME 3.34」の実装が期待されているが、Schallerは「GNOME 3.34もしくはその次のGNOMEに 3.36で、(Xからの完全な分離を)宣言できると思っている」とコメントしている。Fedora 31でのデスクトップユーザ増につながるか、注目したい。