「Don't use ZFS. ―ZFSは使わない。その理由はシンプルだ。ZFSはこれまでずっと、バズワード以上の何物でもなく、そして実感するのだけど、例のライセンシング問題は僕にとってZFSを価値のない存在と思わせるだけだ」
1月6日、IT業界に特化したオンラインメディア「Real World Tech」のフォーラムで繰り広げられたあるスレッドにて、Linus TorvaldsはZFSをメインラインにマージする予定がないことをあらためて明確に主張している。
- Do not blame anyone. Please give polite, constructive criticism By: Linus Torvalds -Real World Technologies -Forums
もともとはLinuxカーネルのスケジューラに関する議論から派生したトピックで、Linusが「LinuxにおけるNo.1プライオリティは既存のユーザ(環境)を破壊しないことだ」とコメントしたことに対し、Gionatan Dantiというユーザが「その方針は理解できるけど、ZFSという重要なサードパーティを破壊(break)するような最近のカーネルの変更に関しては疑問がある」と反論、これに対しLinusが自身のZFSへの見解を明らかにしている。
Linusはまず"break"という言葉の定義について「覚えておいてほしいんだけど、"we dont't break users"というのは、文字通りユーザスペースのアプリケーションを破壊しないということであり、同時にカーネルのメンテナンスを維持し続けるということだ」と明言、ZFSのようなモジュールに使う言葉ではないとしている。
さらに、今後のZFSの扱いについては「Oracleの正式なリーガル担当者が署名したオフィシャルレターが届くか、もしくはラリー・エリソン自身が“ああ、いいよ、手続きを進めよう”といってZFSをGPLにするか、そういう事態でも起こらないかぎり、僕はZFSに関するいかなる成果もマージしない」と強調、つづけて「ZFSのコードやインタフェースを取り入れたければ、個々の環境(ディストリビューションなど)で好きにやるのはかまわないが、訴訟好きなOracleの体質、さらにはライセンスに関する数々の疑念を考慮するなら、僕はとても安心してそれをやる気にはなれない」とZFSをメインラインに取り入れない理由を説明している。
また、ZFSを直接カーネルに統合しないだけでなく、Shimレイヤのような透過的なインタフェースを通した実装にも「まったく興味がない。我々にとってなんの価値もなく、Oracleに(Javaのような)コピーライト訴訟のよいきっかけを与えるだけ」と一刀両断している。
旧Sun Microsystems由来のファイルシステム技術であるZFSに関しては、何度となくLinuxカーネルでの実装が議論された過去があり、たとえばUbuntuでは2016年ごろからZFSをサポート、最新版の「Ubuntu 19.10」ではZFSをrootファイルシステムにしたインストールが可能となっている。Linusはこうしたディストリビュータの動きに関しては「やらないほうがいいと思うけど、自分たちの責任でやるなら好きにやれば」というスタイルを通してきたが、今回あらためてZFSのメインライン統合に対し、明確なNoを突きつけたといえる。