Linus Torvaldsは3月29日(米国時間)、「Linux 5.6」の正式リリースを発表した。開発期間は約2ヵ月、7本のリリース候補(RC)版を経てのGAとなる。前週にRC7を公開してからネットワーク関連の修正事項が若干多かったため、「正式リリースを出すか、RCをもう1本出すか悩んだ」(Linus)ものの、最終的にはリリースを遅らせるほどではないと判断し、予定通りの公開が実現している。
- Linux 5.6 -Linus Torvalds
Linux 5.6では、UDPベースのVPNプロトコル「WireGuard」がはじめてカーネルに実装されたほか、USB4のイニシャルサポート、2038年1月19日にコンピュータが誤作動する可能性「2038年問題」への対応、スマートスピーカー「Amazon Echo」のサポートなど、数多くのアップデートが行われている。
なお、世界を震撼させている新型コロナウイルス「COVID-19」がカーネル開発にもたらした影響についてLinusは「とくにそういう兆候(ウイルス流行による開発の遅れなど)は認められていない」とコメントしており、長い期間、リモートで開発やコミュニケーションを続けてきたスタイルが奏功しているようだ。ちなみにLinusの娘はLinusのことを「社会的距離感の王者(social distancing champ)」と呼んでいるという。
もっともこれからのLinuxカーネル開発がCOVID-19から何の影響も受けないとは限らない。世の中のニュースに触れ続けていれば、メンテナーたちも集中できない状態になることも増えるだろう。Linusは3月30日(米国時間)にも次のカーネルとなる「Linux 5.7」のプルリクエストを受け付けるマージウインドウをオープンする予定だが、「通常通りのLinux 5.7のリリースを目指すため、いまのところとくに問題があるわけではないが、(COVID-19に影響を受けないようにするための)なにか良いサブシステムのアイデアがあれば知らせてほしい」と呼びかけている。Gitが生まれたときのように、単なるWork-From-Homeを超えるというニーズが、また新しい開発のスタイルにつながるのかもしれない。