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2020年10月26日Linux 5.10-rc1が登場、正式リリースは2020年末の予定

Linus Torvaldsは10月25日(米国時間⁠⁠、次期カーネル「Linux 5.10」の最初のリリース候補版となる「Linux 5.10-rc1」を公開した。

Linux 5.10-rc1 -Linus Torvalds

Linusは「万事、まったくもってスムースに進行した」とコメントしているが、カーネルサイズに関しては過去最大のリリースだった「Linux 5.8」と比較して小さくはあるものの「すごく小さいわけじゃない」⁠Linus)と予想以上に大きくなったことを認めている。Linux 5.10-rc1には1700名近い開発者が参加して約1万4000ものコミットを行い、約2096万行のコードで書かれた7万以上のテキストファイルがカーネルツリーを構成している。

なおLinusは今回のリリースにおいて「僕個人にとってもっとも興味深い変更はset_fs()の削除」とコメントしている。set_fs()は初期のLinuxカーネルで使われていたスキームで、おもに286や386といった数世代前のx86プロセッサのFSセグメントレジスタを指定するために使われていたが、アクセス権限のないコードによる仮想アドレスへのオーバライドが発生しやすくなるというバグが2010年に「CVE-2010-4258」として明らかになっている。

Linusはすぐにこのバグを修正しており、x86のほか、PowerPC、S390、RISC-Vの各アーキテクチャにおいては、アドレス空間へのオーバーライドが禁止されてきた。だが、set_fs()自体はグローバル変数addr_limitを設定する機能として残されており、新たなバグの発生源となる危険性が指摘されていた。これらの経緯から、カーネルメンテナーのChristoph Hellwigら数名の開発者がset_fs()の削除を提案してきたが、Linux 5.10でようやく長年の課題が解決することになりそうだ。

Linux 5.10の正式リリースは約2ヵ月後の12月中旬以降が予定されている。

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