CentOS 8が2021年12月をもってサポート終了(EOL)となることで、エンタープライズでCentOSを採用していた企業、とくに金融などクリティカルなサービスを提供している企業の多くが移行先に頭を悩ませている。CentOSと同様にRed Hat Enterprise Linux(RHEL)をアップストリームOSとして開発しているプロダクトとしては「Oracle Linux」や、CentOSクリエーターのひとりであるGregory Kurtzerが2020年末に立ち上げた「Rocky Linux」は有力な候補となる。
そうした中、Canonicalの金融セクターリードを務めるKris Shamaraが「金融サービスのインフラストラクチャで使われてきたCentOSのリプレースとして、なぜUbuntu Linuxが最もすぐれた選択肢なのか(Why is Ubuntu Linux the leading choice to replace CentOS for Finserv infrastructure?)」というブログ記事を投稿し、CentOSからUbuntuにリプレースするメリットを強く訴えている。
- Why is Ubuntu Linux the leading choice to replace CentOS for Finserv infrastructure? | Ubuntu
Shamaraは金融インフラとしてのUbuntuがすぐれているポイントとして以下を挙げている。
- 信頼できるリリーススケジュール(半年ごとのリリースと、2年に一度のLTSリリース)
- 安定した、サポートが万全のLinux OS
- パフォーマンスと汎用性
- フルスタックのセキュリティとコンプライアンス
- マルチクラウド/Kubernetesに最適なプラットフォーム
Canonical/Ubuntuを採用する金融機関としてはフランスのメガバンクであるBNPパリバ、SBIグループの金融システム開発企業のSBI BITS、英国の国際金融グループバークレイズなどが有名だが、これらの企業の多くはUbuntuのマルチクラウドサポートを高く評価している。金融業界は急速にクラウドネイティブ化が進んでいるが、大規模な企業であるほど、インフラは複数のパブリッククラウドと自社構築のプライベートクラウドを組み合わせたハイブリッドな構成にしているケースが多い。
Ubuntuはこうしたマルチクラウド/ハイブリッドクラウドでの運用を得意としており、金融業界のCentOSユーザに対してその優位性をアピールしていく方針のようだ。すでにCentOSのEOLまで10ヵ月を切ったが、エンタープライズの中でもCentOSの導入事例が多い金融業界のユーザをめぐって、水面下での争いが激化しそうだ。