セキュリティに特化したLinuxベースのOSはいくつかあるが、その中でも異色の存在ともいえるのが「Qubes OS(以下、Qubes)」だ。表向きはFedoraベースのシングルユーザデスクトップOSだが、そのしくみは一般的なディストリビューションとかなり異なる。詳細は本家のサイトを参照してほしいのだが、ざっくりいうとXenをベースにしたコンパートメント「qube」上で、個々のアプリケーションを独立して動作させることにより、システム全体のセキュリティを担保している。
たとえばオンラインバンキングを行うqubeと、社内業務用のOfiiceアプリケーションを開くqubeは互いに隔離された状態にあり、仮にOfficeアプリケーションからマルウェアに感染したとしても、そのVMを削除すればよく、他のqubeに影響を与えることはない。極端に言えば、PDFファイルをひとつ開くためだけにqubeを作成し、読み終えたらそのqubeをすぐに破棄することもできる(ディスポーザブルVM)。また、すべてのqubeは「dom0(Domain zero)」と呼ばれるネットワークから隔離されたホストドメイン上で行われる。なお、ネットワーク接続は(当然ながら)Torで暗号化されている。
Qubesがローンチしたのは2012年8月で、決して新しいOSではないが、ここ数年、セキュリティ特化型のOSに対する注目度が高まっていることもあり、Qubesに関心をもつユーザも増えつつある。その結果、オープンソースの掲示板ソフトウェア「Discourse」を使ったユーザフォーラムの無料プラン(1ヵ月あたり最大5万PV)ではユーザコミュニティを維持できなくなったため、7月1日からはオフィシャルなフォーラムを新たに用意すると6月15日に発表している。
- The Qubes Forum is moving to a new home! | Qubes OS
Qubesのユーザフォーラムは2020年8月にスタートしたが、「うれしい誤算だが、期待以上に人が集まってくれた(Qubes コミュニティマネージャ Andrew Wong)」ことから、これをきっかけにオフィシャルなドメイン名でのフォーラムに運営に切り替えるとしている。新フォーラムが周知されるまでの数ヵ月間、旧フォーラムのURLにアクセスしたユーザに対しては自動リダイレクトで誘導するという。