一時は「AWS/パブリッククラウドのオルタナティブ」をめざしていたオープンソースプロジェクト「OpenStack」だが、最近では通信など特定の業界以外でのユースケースを聞くことはめっきり少なくなった。だがプロジェクトとしては現在も存続しており、かつて「OpenStack Foundation」という名称で活動していた組織はより幅広いテクノロジをカバーするため、2021年から「Open Infrastructure Foundation(OIF) 」 に生まれ変わっている。
OIFのもとには現在、OpenStackを含めて7つのオープンソースプロジェクトが活動を続けているが、そのひとつであるエッジコンピューティングプラットフォーム「StarlingX」への注目度がここ最近高くなってきている。
StarlingX -Open Source Edge Cloud Computing Architecture
StarlingXはエッジコンピューティングに特化したフルオープンソースのクラウドソフトウェアスタックで、OpenStackの技術が多く実装されており、ベアメタル/仮想マシン/コンテナのいずれの環境でもデプロイ可能である。セキュリティ、スケーラブル、超低遅延、スモールフットプリントといった特徴から、とくに5Gにおける通信環境構築(仮想基地局、MECなど)を急ぐ通信キャリアのあいだで導入が検討/進行中だ。なお、StarlingXの商用ディストリビューションとして「Windo River Titanium Cloud」がある。
StarlingXのアーキテクチャ(www.starlingx.io より)
StarlingXの最新版は2月1日にリリースされた「StarlingX R6.0」で、Kubernetesがコンテナ管理のデファクトのコンポーネントとなったほか、これまでベースOSとして統合していたCentOSからDebianへ移行、LinuxカーネルにはLinux 5.10を採用し、さらにセキュリティ強化のために監査サービスデーモン「Linux Auditd」をサポート、モダンでセキュアなエッジプラットフォームへとアップデートされている。
StarlingX R6.0 is here! -Blog
OpenStackと同様に通信業界での利用拡大が目されるStarlingXだが、エッジコンピューティングの得意分野である大容量アプリケーションの高速通信や超低遅延を前提にした産業用IoTなど、さまざまな領域での活用が期待されている。コロナ禍で拡大するエッジコンピューティングのニーズをオープンソースプロジェクトとしてどう捉えていくのかに注目していきたい。