2012年のリリースから10年が経過したシングルボードコンピュータ「Raspberry Pi」の標準OS「Raspberry Pi OS」がベースにDebianを採用していることはひろく知られている。2022年4月時点では、GUIの有無やDebianのバージョン、アーキテクチャなどに応じて8種類のイメージを選択することが可能だ。
Raspberry Pi OSは起動する際に「raspi-firmware」というパッケージを使用するが、このファームウェアの存在がDebian開発者の間では長年の懸念事項となっていた。raspi-firmwareはDebianが示すフリーソフトウェアガイドライン「DFSG」には適合せず、プロプライエタリな”non-free”のソフトウェアとして扱われる。このため、non-freeではないフリーなラズパイファームウェアを開発する取り組みが一部のDebian開発者によって10年前から行われてきた。そのひとりであるGunnar Wolfが4月7日、自身のブログで「期待以上の成果が出ている」と現状を報告している。
- How is the free firmware for the Raspberry progressing? -Gunnar Wolf
Wolfのブログでは、同じプロジェクトに取り組むMichael Bishopという開発者が作成したフリーのファームウェアでラズパイ2を起動させた動画(Xfce+コンポジット(NTFC)ビデオ出力)のリンク(YouTube)が紹介されている。比較としてraspi-firmwareで起動した動画も用意されており、予想以上になめらかに動く2D/3Dアニメーションが印象的だ。
Wolfは「(作成中のファームウェアは)まだDebianでパッケージングできるほどの完成度ではない」としているが、ラズパイを”完全なフリーソフトウェア”で動かしたいというDebian開発者の思いと行動は10年経っても健在のようだ。Debianの次期リリース「Debian 12 ”bookworm”」が世の中に登場するころには、ラズパイのファームウェアにも新たな変化が起こっているかもしれない。