Ubuntu Weekly Topics

2009年6月5日号Computex Taipeiでのアナウンス・HPPAのEoL・9.10のMobile MID・UWN#144・Full Circle Magazine #25

Computex Taipeiでのアナウンス

台湾の台北市で行われているCOMPUTEX TAIPEI 2009[1]において、Ubuntu関連の4つの発表が行われました。特に、Netbook環境に関して重要な情報が公開されています。

(1)Moblin v2のUbuntu版がリリース予定

Moblin v2のUbuntu版、Ubuntu Moblin Remixリリースされる予定です。正確には、⁠MoblinのUbuntu版」ではなく、⁠UbuntuにMoblinアプリケーションを加えて、Moblinと同じように動作するように調整したもの」です。

9.04ベースでの作業は順調に推移しているようですので、ごく近い未来にリリースが行われると思われます。これにより、UbuntuでもMoblin v2と同じインターフェースと、Moblin v2向けにリリースされたアプリケーションの動作環境が得られるはずです。一般的な理解としては、⁠Moblin v2の成果物をUbuntuに取り込む作業が行われ、⁠MoblinのようなUbuntu』が利用できるようになる」と考えれば良いでしょう。MobileKarmicMoblin2を見ることで[2]⁠、9.10などでどのように実現されるかを確認することができます。

どのような画面になるかは、Canonical Blogのスクリーンショットを参照してください。

(2) Sandisk 製SSDを採用されるNetbookが開発中

CanonicalとSandiskが協力して、 Ubuntuに「Sandisk 製SSD向け」の設定が準備されます。

Sandiskは各種リムーバブルメディア(SD・CF・Memory Stickなど)でお馴染みのメーカーですが、NANDメモリを利用したSSDも開発を進めています。

SSDはHDDとは幾つかの点で特性が異なる(書き換え可能回数に上限がある・ランダムアクセス性能が高いので、デフラグが必要ない・ATAのTRIMコマンドの送出による、⁠もう必要ない領域」の通知等)ため、OS側で「HDDとは異なる扱い」をする必要があります。

CanonicalとSandiskが連携することにより、⁠少なくともSandisk製のSSDについては)適切な利用が行えるようになり、SSDの性能や寿命をより引き出せる状態になることが期待できます。これは同時に、Sandisk製品以外のSSDに対して有効なアプローチになる可能性があります。もちろん最終的にはSandisk製SSDの方が適切に処理される可能性は高いのですが(特に、ATAのTRIMコマンドは実装の有無によって扱いが変わるため、Sandisk製品以外のSSDではうまく機能しきらない可能性があります⁠⁠、SSDのためのチューニングはすでに仕様が書かれており、技術的な問題がなければ9.10に取り込まれる予定です。

なお、今後どうなるかは不明ですが、少なくともHPのMini1000 Netbookシリーズの8GB SSD/16GB SSDモデルなどの内蔵SSDはSandisk製でした[3]⁠。この提携による機能強化により、Ubuntu+Sandisk SSDの採用事例は今後増えていくと思われます

(3)UNRなどのNetbook環境向けのReal Playerが登場

RealNetworksが、UNRなどのNetbook環境向けのReal Player、Real Player for Mobileのリリースをアナウンスしました。

これにより、UNR(Ubuntu Netbook Remix)を利用した環境でも、専用のアプリケーションによって快適に動画を視聴することができるはずです。狭い画面・Atomプロセッサのような非力なCPUでも快適に利用できるチューニングが行われていることが期待できます。

ただし、RealNetworksのニュースリリースには、CanonicalやUbuntuの名前は含まれていません(ライバルにあたるXandrosなどの名前はあります⁠⁠。⁠実はRealPlayer for MobileがUbuntuにも対応するというだけ」という微妙な話なのか、それとも何らかの隠し球が用意されているのかは、現状では不明です。

(4)Classmate PCにUbuntuが導入

(4) Canonicalは、IntelのClassmate PCのOSとしてUNRを提供します。

Classmate PCは、⁠OLPC」プロジェクトの対抗としてIntelが開始した、⁠世界中の小学校などの教育機関で利用できる、児童が利用するのに適したPC」の名称です。

「Intelが提供するClassmate PC」は、各ベンダが実際にリリースするClassmate PCのリファレンスデザインにあたります。これをもとに各地域で展開するベンダが独自に調整し、その上で「○○のClassmate PC」といった形でリリースされます。実際にリリースされている機種は、Classmate PCのサイトで確認できます。

こうした背景から、必ずしもIntelのClassmate PCへの採用が「全てのClassmate PC」への展開を意味するわけではありません。が、リファレンスデザインのOSのひとつとして採用されることで、相応の地域で「Ubuntuが導入されたClassmate PC」が展開されることが期待されます。

(番外)多くのARMデバイスがリリース

COMPUTEX TAIPEI 2009では、ARM関連の新製品として、Qualcomm Snapdragon・NVIDIA Tegra・TI OMAP2*/3*・Freescale i.MX3*を搭載したNetbookやTabletなどがリリースされています。ARMデバイスの多くはDebianやUbuntuを動作させることが可能ですので、今のところUbuntuには直接関係ないものの、何割かはUbuntuがプリインストールされる可能性[4]があります。

HPPAのEOL

Ubuntuの対応アーキテクチャのひとつ、HPPA(PA-RISCをCPUとして搭載した、HP製メインフレーム・オフコン・ワークステーション向けハードウェア[5]⁠)のサポートが終了(end-of-life; EOL)しました。HPPAアーキテクチャは9.04が最後のリリースとなり、既存の6.06LTS・8.04LTS・8.10・9.04についても、ビルドはベストエフォートで行われます。これによりパッケージの提供は他のアーキテクチャよりも遅くなるはずです。

この分の作業リソースは他のアーキテクチャのサポートに利用される予定です。

Ubuntu MIDはMerベースになります

Ubuntu MID Edition(MID; Mobile Internet Device。一部の通信機能付きPDA、たとえばZaurusなどのような、⁠小型の、インターネットに接続して利用することが前提のデバイス」を意味します)は、これまではMoblin v1をベースにしていましたが、9.10からは「Mer」をベースにしたものとなります。このための下準備にあたる作業が開始されています。

MerはHildon(これまでのUbuntu MIDでも使われていたMobile環境向けのウインドウマネージャ)をベースにした、MID向けのLinuxディストリビューションです。もともとはNokia N8**シリーズをターゲットにしたLinuxディストリビューション「Maemo」をベースにしており、MerはMaemoの「Nokia以外のデバイスへも導入できるようにしたもの」です。

Ubuntu MIDでどのような形になるかはまだ不明ですが、ベースとなるMerのスクリーンショットは、Maemoのサイトで確認できます。

KMSのテスト

9.10で導入される機能の一つに、⁠KMS」Kernel Mode Settingドライバという機能があります。

これはLinux Kernelのレベルでグラフィックドライバを読み込んでしまうことで、これまでのようにKernelの起動完了を待ってからXを起動し、Xからグラフィックドライバを有効にする(Kernelが起動している間はusplashで誤魔化す⁠⁠、というアプローチに代わり、⁠GRUBからKernelが呼び出された時点でグラフィックドライバを有効にする」というものです。これにより、起動時点から高解像度の画面を提供することができます。

この機能はさまざまな機種依存の問題が発見されることが予測されているので、9.10に導入する前に、いろいろな環境での動作状況を集めるべく、テストが開始されました。

KMSを使ってみたい方や、お持ちのハードウェアが特殊なものである自信がある方、いわゆる人柱になるのが趣味の方はテストに参加してみると良いでしょう。なお、intel環境では通常の場合に比べて、ドライバのアップデート他いくつかの作業が必要となります。

UWN#144

Ubuntu Weekly Newsletter #144がリリースされています。日本語版も翻訳作業予定です。

Full Circle Magazine #25

Ubuntuに関する月刊のWebマガジン、Full Circle Magazineの#25がリリースされています。今回の主な内容は次の通りです。

  • ターミナル操作のすすめ。今回はシェルの履歴機能と、エイリアスの使い方、そしてスクリプトによるプレイリストの作成方法です。
  • HowTo: Inkscapeの使い方、Part2。今回もCircle Of Human(Ubuntuのロゴ)を作成するHowToが続きます。
  • HowTo: VirtualBoxの使い方。VirtualBoxでgOSを動かします。
  • HowTo: ゲーム環境向けのチューニング方法。Wineを使って動かす、BllizardのStarcraft専用のXの起動方法の紹介です。
  • Kubuntuのファーストインプレッション記事。
  • などなど。

Full Circle Magazineは平易な英語と、豊富なスクリーンショットにより日本人でもそれほど苦労なく読むことができるはずです。興味のある方は、実際にページを開いて確認してみてください。

その他のニュース

  • 今週のUbuntu Forumのチュートリアルは、⁠HOWTO: Jaunty Intel Graphics Performance Guide⁠9.04のIntelビデオチップのパフォーマンス向上ガイド)です。Intel製内蔵グラフィックスを利用している方(多くのノートPCやNetbookのユーザー)で、Compizなどを利用する際のパフォーマンス不足に悩まれている方は、これらを参照して設定の変更・パッケージの入れ替えなどを行うと良いでしょう。
  • Ubuntu 9.04サーバーでWebminを利用する方法。9.04を利用していて、かつ、Webからサーバーの設定を変更したい場合は利用を検討してみてください。
  • Ubuntuマシンを高機能なブロードバンドルーターとして利用する方法。ハードウェアが限定されますが、Ubuntuマシンを無線LANルーターとして利用したい場合のHowToです。
  • Dell製PCにプリインストールされたUbuntuの、 リカバリメディアを作成するアプリケーションの開発プロジェクトが開始されています。これにより、9.10ではDell製プリインストールマシンを、容易に工場出荷状態に戻せるようになるはずです。
  • 先日行われた、UDS(Ubuntu Developer Summit)フォトレポート幾つかのblogに掲載されています。UDSの現地の様子を確認することができます。

今週のセキュリティアップデート

今週のセキュリティアップデートはcronのアップデートのみです。CVE-2006-2607の一部として扱われていますが、このCVE識別番号で取り扱われる本来の脆弱性よりも影響範囲が小さいもので、root権限の奪取は不可能です。ただし、複数のユーザーが利用する環境では、アップデートを行った方がよいでしょう。

usn-778-1:cronのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2009-June/000906.html
  • 現在サポートされている全てのUbuntu(6.06 LTS・8.04 LTS・8.10・9.04)用のアップデータがリリースされています。CVE-2006-2607としてLP#46649で報告された、複数回fork()した後に、cron内で行われる権限チェックのうち、setgid()とinitgroups()の遷移もれを修正します。これにより、ローカルユーザーが任意のグループの権限を奪取することが可能でした。より致命的な結果をもたらす、setuid()の遷移漏れ(によるroot権限の奪取)はすでに修正されているため、この問題による影響はグループ権限の奪取に留まります。
  • 対処方法:通常の場合、アップデートを行うことで問題を解決できます。

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