10.10の開発
10.10の翻訳開始
Ubuntu 10.10のリリースに向けて、翻訳作業が開始されました。Ubuntuの各種アプリケーションの翻訳は、アプリケーションの開発元・Debianでの作業に加えて、Launchpad上からの作業が可能です。作業の具体的な方法は、翻訳ガイドをご確認ください。翻訳作業そのものは、Launchpadにアカウントがあれば可能です。皆様の翻訳提案をお待ちしております。
BIOSバグ検出モード
現在のPCでは、デバイスや電源の管理にはACPIを用いるのが一般的です。しかし、ACPIの実装には「方言」に相当する微細な差や、Windowsでは顕在化しないバグが多く、Linux環境ではACPIが正常に機能しないことが少なくありません。これは特にノートPCで致命的で、Linuxを入れるとファンが100%で動作し続ける(あるいは全く回らない)・バッテリ容量が正常に取得できない・バッテリが異常に消耗する・スリープやハイバネーションが利用できない・一度スリープすると復帰できない・特定のデバイスが応答しない・モニタのバックライトが調整できないといった、使い勝手を損ねる問題を引き起こしています。
本質的にはBIOSのバグなのですが、LinuxではKernel Optionでの動作モードの変更・ACPIテーブル(DSDT)の書き換えなど、いくつかの方法で問題の回避が可能となっています。ただし、この方法は難易度が高く、Kernelのログから必要な情報を確認し、エラーの組み合わせから回避策を類推して実施するトラブルシューティングスキルが必要となります。これは一般的なユーザーにとっては非常に厳しいものです。
そこで、Ubuntu 10.10では、「ACPI関連のBIOSバグの自動検知」モードが準備される予定です。具体的な動作としては、DSDTの自動認識&解析、自動テスト・Kernelメッセージの自動解析と、解決策の提示です。
これにより、あまりBIOSの実装の良くないノートPCであっても、Ubuntuを快適に利用できる可能性が高まります。ただし、DSDTの上書き機能は現状のUbuntu Kernelではその危険性からサポートされていないため[1]、壊れたDSDTを持つノートPCを動かすところまではサポートされません。
なお、ACPIと同様の「BIOSバグに由来する動作制限」はHVM(Intel VTやAMD-V)サポートにも存在し、同種の自動検知・解決策の提示機能があると良いのですが、10.10フェーズでは具体的な対応予定は宣言されていません。
Generic KernelのCONFIG_M686
過去のTopicsでお伝えしている通り、Ubuntu 10.10では、32bit版x86環境の対象アーキテクチャをi386からi686へ切り替えることになっています。
この変更が、ユーザランドだけでなくKernelにもCONFIG_M686=y(LucidではCONFIG_M586TSC=y)として適用されました。これにより、2.6.35-10.15以降のKernelパッケージを利用する場合、686命令をサポートしないVIA C3シリーズではGeneric Kernelも動作しなくなります(C7は動作することに注意)。IntelやAMD製品以外のCPUを搭載した古いCPU(と、AMD Geode)が搭載されたマシンを利用している場合、i686に正しく対応していることを確認することをお勧めします。
10.10のPapercuts(2)
Ubuntuでは、毎リリースにおいて「すぐ直せる」ものの、「使い勝手を損ねる」バグを100個ほど修正する、『Hundred Papercuts』と名付けられたバグ修正プロジェクトを実施しています。
(1)に引き続き、Ubuntu 10.10で行われるPapercutsの内容を見ていきましょう。
- LP#301942:gedit上で「Ctrl+T」を押した場合は新しいタブが開かれるべき(Lucidから持ち越し)。
- LP#392600:OOo利用時、画面右に表示されるスクロールバーのナビゲーションアイコンが小さいままで、なおかつ途中で途切れてしまっている。
- LP#507178:Evolutionの日付カラムの横幅が広すぎ、無駄な空白を食っている。
- LP#525670:OOo利用時、ファイルの上書き保存を確認するダイアログにファイル名が含まれていない。
- LP#586477:Evolutionのカレンダー表示において、ドラッグアンドドロップがごく一部のモードでしか利用できない。
- LP#588298:Evolutionの設定のうち「コンポーザの設定」の「Top Post機能」に『(推奨しません)』などと書いてある。推奨しませんなどと書くぐらいならそもそも表示させるべきではない。
- LP#491555:geditの検索・置換動作において、タブストップオーダーが間違っている。「Tab」キーで項目を移動しようとした場合、「置換」フィールドに移動することを期待するタイミングでコンボボックスの省入力用ボタンにフォーカスが移ってしまう。
- LP#572985:Evolutionのバックアップ機能実行時、「Evolutionを閉じてよろしいですか?」というダイアログには「Yes/キャンセル」という表記ではなく、「Evolutionを閉じる/キャンセル」という表記が行われているべき。
- LP#401692:geditにおいて、デフォルトのファイル名が「編集中のドキュメント 1」などとなっている。これは「テキストドキュメント1」などとしておくのが良い。
- LP#599728:Evolutionのメインウインドウを閉じた場合、他に開いているウインドウがあってもまとめて閉じられてしまう。
DellのUbuntu 10.04搭載デスクトップ
Ubuntu 10.04のリリースから3ヶ月、ついにDell USAから搭載マシンがリリースされました。AMD製CPUを搭載したハイパフォーマンスデスクトップであるStudio XPS 7100シリーズのバリエーションモデルStudio XPS 7100nです。7月29日(木)現在、下記の最小構成で$459.99となっています。PhenomII X6やRadeon HD 5670/5770/5870の搭載・16GB Memoryへの増強や、11n Wireless LAN・Bluetoothなどの搭載も可能です。
- OS: Ubuntu Desktop Edition 10.4
- CPU: AMD AthlonII X4 630 QuadCore CPU
- GPU: RS785内蔵Radeon HD 4200
- Memory: 3GB (2GBx1 + 1GBx1) DDR3/1333
- HDD: 500GBx1
- Optical Drive: DVD Multi Drive x1
- Network: 1GbE x1
なお、これはあくまでUSAでの販売のため、日本国内のStudio XPS 7100用のUbuntu 10.04の販売を意味するものではありません。ただし、「出そうと思えば出せる」状態にある、ということは非常に重要です。
オープンソースカンファレンスNagoya
Ubuntu Japanese Teamは2010年8月7日(土)に名古屋で開催される、オープンソースのお祭りである「オープンソースカンファレンス 2010 Nagoya」に参加します。会場は名古屋市立大学経済学部で、地下鉄桜通線 桜山駅から徒歩15分程度です。
ブースにてデモ機の展示を行うほか、15:15から「Ubuntuでおうちサーバを始めよう」と題したセミナーを行います。OSC Kyotoに続き、Japanese Remixの(CD-Rではない)プレスCDの無料配布も行ないます。皆様のご参加をお待ちしております。
オープンソースカンファレンス2010 Nagoya
★セミナー参加登録受付中!⇒ http://www.ospn.jp/osc2010-nagoya/
日時 | 2010年8月7日(土) 10:00-18:00 |
入場 | 無料 |
会場 | 名古屋市立大学滝子(山の畑) キャンパス 経済学部棟 |
主催 | オープンソースカンファレンス実行委員会 |
内容 | オープンソース関連の最新情報提供(展示・セミナー) |
なお、会場周辺にはコンビニ・売店等がありませんので、参加される方は水筒・ペットボトル等を事前に確保してお越しいただくことを強くお勧めします。キャンパス内の自販機は売り切れになるおそれがあります。
Ubuntu Weekly Newsletter #203
Ubuntu Weekly Newsletter #203がリリースされています。
その他のニュース
- libnotifyとbashのhistoryを組み合わせた小技。
- byobuのネーミング理由。
今週のセキュリティアップデート
- usn-940-2:Kerberosのセキュリティアップデート
- usn-964-1:Likewise Openのセキュリティアップデート
- Ubuntu 10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2010-0833を修正します。
- CVE-2010-0833は、ローカルアカウントでログインする際、Likewise Openがアカウントの有効期限を正しくチェックしない問題です。これにより、期限切れのアカウントでもローカルログインが可能となります。
- 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます
- usn-927-6・usn-927-7:nss・nsprのセキュリティアップデート
- Firefox 3.5.7・3.5.8へのセキュリティアップデート
- Ubuntu 9.04と9.10用(usn-930-6)・8.04と10.04用(usn-957-2)のFirefox 3.5.8パッケージがリリースされています。このリリースの約3日前に、Firefox 3.5.7パッケージもリリースされているので注意してください。
- XulRunnerの更新により、ant, apturl, Epiphany, gluezilla, gnome-python-extras, liferea, mozvoikko, OpenJDK, packagekit, ubufox, webfav, yelpも合わせて更新されています(USN-930-5)。
- セキュリティ修正の詳細は、mozilla-japan.orgのアドバイザリを参照してください。
- 対処方法:アップデータを適用の上、各アプリケーションを再起動してください。
- 備考:時間軸の都合で、USNのナンバリングが混乱しています。dpkg -l | egrep 'firefox|xulrunner'を実行し、Firefox(firefox,firefox-3.0)パッケージのバージョン番号が「3.6.8」、XulRunner(xulrunner-1.9.2)のバージョン番号が「1.9.2.8」になっていることを確認してください。
- usn-958-1:Thunderbirdのセキュリティアップデート
- Ubuntu 10.04用のThunderbird 3.0.6パッケージです。
- セキュリティ修正の詳細は、mozilla-japan.orgのアドバイザリを参照してください。
- 対処方法:アップデータを適用の上、Thunderbirdを再起動してください。