Ubuntu 11.10の新機能のまとめ
11.10(Oneiric)の開発は一段落し、大きな変更がない(が、パッケージは黙々と更新される)状態となっています。
9月2日16:30追記:
Beta1も無事リリース されました。
UIまわりもほぼ確定し、ここから翻訳や各言語でのテスト・各ソフトウェアのブラッシュアップを経てリリースに向かうことになります。小さなUI変更 は加えられるものの、ソフトウェアとしての再設計レベルの変更はあまり考えられないため、「 11.10の姿」と言えるものが見えつつあります。
……ということで、今週はニュースが少ないこともあり、「 11.10の現状」をスクリーンショットとともにお送りします。
Firefox 7 + Thunderbird 7 + LibreOffice 3.4.3
Ubuntu 11.10では、デフォルトのメールクライアントがEvolutionからThunderbirdへ変更となります。日本語環境ではEvolutionにはさまざまな問題があるため[1] 、日本国内のユーザーにとっては大きな変化となるでしょう。なお、Evolutionはインストール後に、個別に導入も可能です。
11.10環境では、ブラウザとしてFirefox 7、メーラーとしてThunderbird 7、オフィススイートとしてLibreOffice 3.4.x(現状では3.4.4の見込み )が準備されます。それぞれ現在のOneiricで動作させると、以下のような外見となります。
図1 Firefox 7 / Oneiric(2011年8月31日)
図2 Thunderbird 7 / Oneiric(2011年8月31日)
図3 LibreOffice 3.4.2(20118月31日) 。タイミングの都合で3.4.2が入っている
Firefox/Thunderbirdともにバージョン「7」と、バージョン規則・リリース方針の変更から、Nattyリリース初期の3.6から大きく変化したように見えます。しかしこれは、あくまでバージョン付与規則の変更に伴うもので、バージョン番号ほどの開きはありません[2] 。とはいえ、一部アドオン・拡張機能の互換性問題は起こりうることから、現時点でFirefox 3.6系を利用し続けているユーザーがアップグレードする場合は注意が必要です。また、現時点ではFirefox/Thunderbirdともに7系の開発版が投入されています。9月27日の「7」のリリースまではOneiric環境ではブラウザ・メーラーともに注意して扱う必要があるでしょう。
[1] 日本語サブジェクトを含めると、多くのメーラーで適切に解釈されないおそれのあるUTF-8ベースで送信してしまう・本文もISO-2022-JPではなくUTF-8/Base64で送信されてしまう等、「 日本でよく使われる」メーラーとは異なる挙動となっています。この挙動は欧米でよく使われるメーラーに共通する挙動(たとえばAlpineなどとも共通です)なのですが、日本国内で利用する場合、特に技術系のメーリングリストに参加するような場合にはトラブルのもとになるケースもあり、良い選択とは言えませんでした。
Unity 3D / Unity 2D
Ubuntu 11.10の標準デスクトップ環境は、11.04に引き続き“ Unity” が利用されます。「 Unity」のメニュー画面にあたる「Dash」は以下のように、11.04までのものと大きな違いはありません。このメニューをたどると「Lens」と呼ばれる新しいインターフェースに辿りつけるようになるはず です。
図4 「 Unity」のDash画面。[ Windows]キーで呼び出せる
[Windows]キー長押し、もしくは画面左にマウスカーソルを移動させることで表示される、ランチャーとタスクバーを兼ねた「Launcher」もこれまで通りです。ただし、画面左上(11.04では「Dashの呼び出しボタン」があった場所)はアプリケーション名が表示される場所になり、「 Dashの呼び出し」はLauncherアイコンの最上部に移動しています。
図5 Windowsの「スタート」メニューに相当するDash画面。各種アプリケーションの起動はここから行う
11.04ではCompizをサポートしていない環境にはGNOMEデスクトップが提供されていましたが、11.10では予定通り、「 Unity 2D」によるデスクトップが提供されます。11.04時点のUnity 2DはUnity 3Dのサブセット的な位置づけでしたが、11.10ではほぼ完全な互換実装として機能するようになっています。
図6 Compizが動作しない環境向けのデスクトップ、Unity 2D。Qtベースで、アニメーション機能もUnity 3Dと同等の実装となっている
11.10からUnity環境に提供される新しい機能として、「 Unity Switcher」と呼ばれる新しいウインドウ選択ユーティリティがあります。標準で[Alt]+[Tab]で呼び出せます。この挙動そのものは、既存のApplication Switcherと同等です。
図7 [ Alt]+[Tab]で呼び出せるアプリケーション選択Switcher
ただし、Unity Switcherでは[Alt]+[Tab]で選択できるのはアプリケーション単位となります。目的のアプリケーションを選択してから、[ Alt]+[Grave](`)キーを押すことで表示モードが変化し(Flip) 、プレビューとともにウインドウを選択できるようになります。ASCII配列のキーボードでは[Grave]は[Tab]キーの上にあるので、指をそのまま滑らせる操作です(注 ) 。
もしくは、[ Alt]+[Tab]でSwitcherを呼び出したあと、[ Alt]を押したままカーソルキーの[↓]を押すことでも展開できます。
これは既存のデスクトップ操作とはやや異なるため、操作には慣れが必要かもしれません。ただし、動作は非常にスムーズです。
図8 Unity Switcherの「Flip」モード
New Software Center
Oneiricでは、Software Centerも全面的にデザインが変更されます。こうした「カタログ」タイプのソフトウェアは劇的な新機能こそ搭載されないものの、デザインの整理により、大きく使い勝手が変わるはずです。
特に、起動直後の画面表示(下記)の変更は非常に大きく(画面上部の画像が鮮烈ともいう) 、ソフトウェアの知識が多くないユーザーであっても、Software Centerを探検してみようと思わせるようになっています。
図9 Software Centerを起動した直後の画面。星の数等はユーザーレビューを反映したものとなっている
ソフトウェアのインストールについてはこれまでと大きくは変わらず、バックグラウンドで並列処理される等、aptやSynapticよりも強力な機能を提供するものとなっているはずです。
図10 ソフトウェアのインストール画面。このスクリーンショットでは処理終了まで画面を開いているが、一度インストールを開始してしまえばキューに格納されるため、その時点でバックグラウンド処理が開始される
Full Circle Magazine #52
Ubuntuを中心にした月刊Webマガジン、Full Circle Magazineの#52 がリリースされています。Full Circle Magazineは比較的平易な英語で書かれており、スクリーンショットや「コピー&ペースト」HowToも豊富なため、英語の学習にも利用できます。これまで手を出したことがない方も、一度は目を通してみてはいかがでしょうか。
今回の主な内容は次の通りです。
コマンド操作入門:今回はCJK文字が通るLaTeXの話です。
Pythonによるプログラミング入門・第26回。今回は複雑なデザインを伴ったGUIアプリを作成します。
HowTo:LibreOffice・第7回。Calcを用いた「差し込み印刷」に使えるテクニックを学びます。
HowTo:Ubuntuの開発・第4回。Debianパッケージのファイル構成を学びます。
HowTo:Ubuntuがビジネスや教育現場で使われている事例の紹介。
HowTo:GRAMPS・第1回。家系図を作成するGUIアプリケーションです。
HowTo:Full Circle Magazineへの寄稿の方法。
HowTo:ZoneMinder・第1回。PCに接続したWebカメラを用いて、「 ブラウザで操作できる」Webカメラサービスを作成する方法。
Chromebookのレビュー
などなど。
UWN#230
Ubuntu Weekly Newsletter #230 がリリースされています。
その他のニュース
Ubuntu 11.10のベータ版にアップグレードしたあとにXまわりのトラブルに遭遇した場合の対処方法 。
Ubuntu Software Centerに、OIL RUSH が追加 されました。
Ubuntuプリインストールマシンについて、自分でインストールする場合との違い について。
NVIDIA Tegra2を搭載し、Ubuntu 11.04が導入された超小型マシン(「 モバイル用」外付けHDDサイズ) 、Trim Slice が「在庫あり」になっています。本体価格$200前後に比べると送料が$66と少々高めですが、円高の現状では2万円前後で入手できます。メモリ1GBにHDMI出力装備と、一般的なデスクトップ環境にも転用できるスペックを持っているので、ARM特有の事情をクリアできる人であれば、便利な小型マシンとして利用できるはずです[3] 。
今週のセキュリティアップデート
Apache HTTPDのセキュリティアップデート(予定)
CVE-2011-3192 に対応するアップデータが近日中にリリース予定です。
Range/Content-Rangeヘッダが複数指定されたリクエストを行うことで、HTTPDを過剰負荷状態に陥らせることが可能です。複数のリクエストを同時に発行することで、システムレベルで停止を狙うことができます。広い範囲で攻撃が観測されているため、早急な対処が必要です。
対処方法:近日提供されるアップデータを適用するか、ワークアラウンド を適用してください。
usn-1185-1 :Thunderbirdのセキュリティアップデート
usn-1197-1 :Firefox / Xulrunnerのセキュリティアップデート
https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2011-September/001404.html
Ubuntu 11.04・10.10・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。
Ubuntu 11.04はFirefox 6.01・10.10と10.04 LTSは3.6.21に相当するアップデートです。*.google.comをSubject DNに持つ、誤って発行された証明書を破棄するためのアップデートです。Googleのサービスを安全に使うためには非常に重要な更新です。
対処方法:アップデータを適用の上、Fireofx・Xulrunnerを再起動してください。