12.04の開発
12.04の開発は、リリースまでに更新される予定のパッケージが宣言される等、Final Freezeに向けた準備が行われています。今のところ致命的な問題は見つかっていないため、リリース関連についても大きな問題はないはずです(注1。ただし、後述の通り「おすすめ」版が32bitなのか64bitなのかは決着がついていませんし、NVIDIAのGPUを搭載した環境では少々やっかいなことになっています)。
Ubuntuの新しい長期サポート版、12.04 LTSのリリース日は4月26日(現地時間)の予定です[2]。
“AWSOME”
12.04における大きな機能強化として、Ubuntu Enterprise Cloud(UEC)の強化、特にOpenStackとの連携が予定されています。この一環として、OpenStack向けのAmazon EC2/S3互換レイヤである「AWSOMEをCanonicalが提供することが公表されました。
AWSOMEはGNU Affero GPL v3で提供されるオープンソースソフトウェアで、EC2/S3の「よく使う」APIをサポートすることで、EC2環境ならOpenStack環境への移行コストを下げることを目的としています[3]。
32bit or 64bit
リリースは目前に迫っていますが、現時点ではまだ「www.ubuntu.comからダウンロードできるデフォルトのISOイメージを32bit版にするか、64bit版にするか」という議論に決着がついていません。64bit化には「x64に対応していないハードウェアでは動作しなくなる」以外にもいろいろな副作用があり(注4、注5)、簡単に結論を出せるものではないため、議論はそう簡単には収束しそうにありません。
なお、Japanese Remixについてもこの決定に同期してリリース版が決定されるため、現状ではまだ32bitになるか64bitになるか、は決定していません。
12.04の注意点(1)
12.04はLTSながら、多くの新機能や仕様変更が加えられ、さらに新しい機能が追加されています。今回から何回かに分けて、12.04を触る上での注意点をお届けします。
12.04のカーネル
Ubuntu 12.04では、32bitカーネルでは暗黙でPAEカーネルが利用されるため、PAE対応のCPUが必須となります。32bitかつPAE非対応のCPU(Pentium MやVIA C3)を利用している場合は、XubuntuやLubuntuを利用してください。これらの32bitリリースはPAE非対応でも動作します。
byobuのバックエンド変更
byobuは、Ubuntuで利用できる「事前に設定された」GNU Screenのラッパーです。設定を深めようと思えばどこまででも深められる.screenrcをあらかじめ提供することで、その道のエキスパートが利用するGNU Screenと同等の設定を利用することができます。
12.04フェーズでは、この常識自体が変更になります。12.04世代のbyobuはデフォルトではtmuxのフロントエンドとして機能するため、単に「byobu」コマンドを実行すると、事前に設定されたtmuxが起動することになります。
これまでと同様、GNU Screenベースで利用したい場合は、「byobu-screen」コマンドで起動するか、「byobu-select-backend」コマンドでGNU Screenを指定してください。「byobu-tmux」コマンドを利用することで、tmuxバックエンドを指定して起動することもできます。
なお、セッション管理はbyobu-screenとbyobu-tmuxで全く別に行われるため、「byobu-screenでScreenバックエンドのbyobuを起動→うっかりbyobuコマンドでセッションを復元しようとする→復元されないので狼狽する」という失敗をやらかす余地があります。なるべくbyobu-select-backendを実行してよく使うバックエンドと揃えておくか、byobuコマンドではなくbyobu-tmuxやbyobu-screenコマンドを使うようにしましょう。
Jujuの対応バージョン
12.04の目玉となるJuju[6]は、つい先日メインリリースをPrecise(12.04)に切り替えたばかりです。このため、多くのCharmがOneiricにしか対応していません。12.04への移行にはまだ時間がかかるでしょう。
Launchpadの商用プロジェクトでの利用
Launchpad.netはUbuntu等の各種FLOSSプロジェクトで利用される開発ポータルです。Bzr等のDVCSベースのソースコード管理だけでなく、BTS・翻訳インターフェース(Rosetta)・設計ポータル(Blueprint)といった、ソフトウェア管理に必要な機能が「全部入り」のポータルとして機能します。ただし、これまでは制約として、プロプライエタリなソフトウェアで利用することはできませんでした。
この「商用ソフトウェアでは利用できない」制約が解除され、有償サービスとして「プロプライエタリソフトウェア用のLaunchpad利用サービス」が提供されるようになりました。費用はUS$250/年/プロジェクトです。
UWN#261
Ubuntu Weekly Newsletter #261がリリースされています。
その他のニュース
今週のセキュリティアップデート
- usn-1421-1:Linux kernel(Maverick backport)のセキュリティアップデート
- usn-1422-1:Linux kernelのセキュリティアップデート
- https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-April/001660.html
- Ubuntu 11.04用のアップデータがリリースされています。CVE-2011-4347, CVE-2012-0045, CVE-2012-1097, CVE-2012-1146を修正します。
- 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
- 備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるので、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。
- usn-1423-1:Sambaのセキュリティアップデート
- https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-April/001661.html
- Ubuntu 11.10・11.04・10.04 LTS・8.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-1182を修正します。
- smbdに特定のパケットを送出することで、root権限で任意のコードの実行が可能です。攻撃者にはSambaサーバーへパケットを送り込むことができる必要があります。
- 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。