Ubuntu Weekly Topics

2012年7月27日号QuantalのAlpha3・PulseAudio 2.1のテスト・Ubuntu Web Apps・“TryStack”ARM版・UWN#275

Quantalの開発

Quantalの開発はAlpha3の準備が始まりました。順当に行けばこの記事が公開される前後にはリリースされているはずです。

Alpha3段階では間に合わないものの、12.10ではリリースイメージに含まれるPythonを3系にする準備が進められていること、また、ソフトウェアのアップデートに関連する操作が変更されていることから、12.10の新機能に興味がある場合は今の時点でテストを開始しておくべきです。

また、PulseAudio 2.1のテスト要請もかけられており、そろそろ「危ない時期」に入りつつあります[1]⁠。Alpha版のテストを行う場合は綿密なバックアップと、本番環境には導入しない・常に予備マシンを準備しておく等の対策を行いつつ、大惨事が起こらないことを祈りながら扱うことをお勧めします。

Alpha3段階の12.10では、ユーザーが能動的にソフトウェアのアップデートを行う場合、メニューの「About this Computer」を開き、ウインドウ右下の「更新をインストール」から行います。

図1 ⁠About This Computer」で表示されるウインドウ
図1 「About This Computer」で表示されるウインドウ

デフォルトでは具体的なパッケージ内容は表示されず、更新されるパッケージの数のみが示されます。詳細を確認したい場合、⁠Details of updates」をクリックする必要があります。

図2 Software Updater
図2 Software Updater

Ubuntu Web Apps

12.10の新しい機能として、Ubuntu Web Appsが追加されました。これはWebブラウザ上で動作する各種Webサービス、たとえばGmailやTwitter・Facebookなどを「個別のアプリケーションとして」扱えるようにするものです。

見た目「ただのブラウザのショートカット」とも見えますが、以下の点が異なります。

  • Launcherとしてサービスを登録できる。
  • UnityのLens経由で起動できる。
  • ブラウザや「他のWeb Apps」とは別のアプリケーションとして扱われるため、Alt+Tabによる切り替えが簡単に行える。
  • Notify-OSD経由で通知を受け取ることができる。たとえばGmailの未読メール数。

もっとも近いのは、かつてのPrismですが、Unityやデスクトップ環境との統合など、Ubuntu独自の拡張が追加されています。きちんとした実装は12.10のリリース版を待つ必要がありますが、12.04・12.10を利用している場合は「ppa:webapps/preview」リポジトリを追加することでプレビュー版を利用可能です。このバージョンではFirefoxとChrome上でのサービスが利用可能です。

“TryStack”のARM版

OpenStackの無料体験サービスである「TryStack」に、ARM Server(HP Redstone)注2が追加されました。OpenStackの⁠Essex⁠リリースをARM上で動作させた環境に、無料で触れることができます。利用にはFacebookグループへの参加が必要です。OpenStackのダッシュボードに触れることで、⁠実際にARMサーバーでOpenStackが動作している」様子を確認できるでしょう。

この環境はUbuntuの「Highbank」⁠Energycoreの開発コードネーム)対応カーネルで動作しており、一定以上の安定性が確保できていることも分かります。

UWN#275

Ubuntu Weekly Newsletter #275がリリースされています。

その他のニュース

  • straceベースのデバッグで良く発生する、⁠アドレスと日付とPIDの差に埋もれてしまい、diffによる比較が行えない」という問題を解決する簡単なラッパー、strace_summarise.pyについて。これを覚えておくと、パッケージの挙動がおかしいとき・機能的な互換性が失われている時などに大活躍するはずです。
  • 11.1011.04のクラウドイメージが更新されています。
  • Unityを3画面で利用している様子。マルチモニタ環境を構築しようとしている方には参考になりそうです。
  • OpenStackの⁠Folsom⁠リリースのテスト用パッケージが利用できるようになりました。OpenStackは開発コミュニティの形成においてUbuntuを参考にしている[3]こともあり、⁠Ubuntuだと試しやすい」ソフトウェアの一つです。
  • JujuのLocal環境に対して、Android Emulatorから接続する様子。これにより、Jujuのlocalモードでlxcベースの仮想マシンを起動してセットアップする→開発中のAndroidアプリから仮想マシンへ接続する、といった形で、Androidベースの特殊な開発を簡単に行うことができるようになります。
  • Launchpadに「自分の投稿したコメントを非表示にする機能が追加されました。これにより、コメントに「まずい情報」を含んだものを投稿してしまった場合に、人目につかない状態にできます。
  • Fedoraでも(Ubuntuの)Unity[4]が利用できるようになりました。
  • Thunderbird 15 Beta1にUbuntu Oneとの統合機能が追加されました。あらかじめ設定しておくことで、添付ファイルをUbuntu One上へ送り込むことができます。

今週のセキュリティアップデート

usn-1511-1:tiffのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-July/001765.html
  • Ubuntu 12.04 LTS・11.10・11.04・10.04 LTS・8.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-3401を修正します。
  • tiff2pdfが不正なTIFF画像を読み込んだ際、任意のコードの実行される・クラッシュするおそれがあります。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。
usn-1512-1:KDE PIMのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-July/001766.html
  • Ubuntu 12.04 LTS・11.10用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-3413を修正します。
  • KDE PIMがHTMLに含まれたJavaScript・Javaなどをそのまま解釈してしまうことにより、外部から送りつけられたメッセージを表示した際に任意の処理が可能でした。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、セッションを再起動(一度ログアウトして再ログイン)してください。
usn-1513-1:libexifのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-July/001767.html
  • Ubuntu 12.04 LTS・11.10・11.04・10.04 LTS・8.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-2812, CVE-2012-2813, CVE-2012-2814, CVE-2012-2836, CVE-2012-2837, CVE-2012-2840, CVE-2012-2841を修正します。
  • EXIFタグの処理に問題があり、任意のコードの実行・クラッシュが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決します。
usn-1515-1:Linux kernelのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-July/001768.html
  • Ubuntu 12.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-2390用のアップデータがリリースされています。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるので、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。

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