Ubuntu Weekly Topics

Ubuntu 24.10(oracular)開発 / デスクトップのロードマップ⁠Advantech RSB-3810のUbuntu 22.04 LTS Certificed

oracular(Ubuntu 24.10)の開発 / デスクトップのロードマップ

Ubuntu 24.04 LTSのリリースから一ヶ月、Ubuntu 23.10からのアップグレードがアンロックされ、システムの更新に複雑な操作(と、システムが壊れたかもしれないというプレッシャーとの戦い)が不要になりました。これでおおむね、⁠24.04 LTS」という区切りでは作業が終了し、次のリリースであるoracularの開発のための動きが本格化していくはずです。

とはいえ開発開始からそれほど間がないこともあり、現状ではoracularで行う開発の暫定案や、新機能についての議論が行われている段階です。特に大きな動きとしては、デスクトップのoracularでのロードマップが公開された点が挙げられます。

このロードマップ(もちろん「roadmaps are, as always, subject to change」; ロードマップには常に変更の可能性があります、という注意書き付き)では、次のようなことが語られています。

  • 24.04のリリースにおける反省。いろいろな理由(避けられないものから、2038年問題対応やxz-utils起因のものまで)によるリビルド大会の発生による開発の遅延と、リビルドに伴う各種調整にリソースを取られてしまったことによって、新機能の投入が十分にできなかった、ということと、今回のリリースでは「何がすでに実現されているのか」⁠投入されていないものは何か」の特定が行われる、ということがまず宣言されています。
  • Desktop Installerの刷新について。新しいバージョンがリリースされたものの、まだTPM-BackedのFull Disk Encryptionは十分には実装されておらず、ハードウェアを選ぶ状況であること(そしてこれを今回のリリースでは解決したいこと)と、初回ブート時の初期設定をGNOMEのものからUbuntu独自のものにシフトしたいという意思が語られています。
  • App Centreまわりの改善。Snapパッケージの更新がほぼサイレントに行われる状態から、⁠表も裏も」メッセージや変更点の情報をより分かりやすく表示することと、今後リリースされるUbuntu Core 24の成果を用いて、Snapまわりのメンテナンス性の刷新が予定されています。
  • Flutterへの注力。Flutterを「マルチプラットフォーム」の一部として広く開発者にアピールできるようにする、という計画と、GTK3からGTK4への以降の検討が行われる予定です。
  • GNOME最新版への追従。GNOME 47の採用とともに、NVIDIA GPUを搭載した環境でもWaylandをデフォルトにするチャレンジと、これによって不具合を叩き出すことで「分からないことが何か分からない」という状態から脱却し、将来の26.04 LTSのリリースにおける布石にすること、が宣言されています。ということは、oracularはNVIDIA GPUをデスクトップ表示用に使っているユーザーにとってはなかなかチャレンジな展開になるかもしれません。
  • Ubuntu Core Desktopの開発。準備が出来たらテスト版を公開する、という宣言と、⁠もっといろいろやる」⁠(Much) more to come.)という謎の宣言が行われています。
  • aad_authからauthdへの切り替え。aad_authによるAzure AD(現Entra ID)への認証プロトタイプから、authdによる再実装と、MFA + Entra IDによる認証機能の実現と、24.04 LTSへのバックポートが想定されています。
  • 20周年記念イースターエッグ。⁠お祝いのためのイースターエッグをいくつか搭載したいね」ということが書いてあります……。
  • WSL上のUbuntuに向けた新ツール群。よりセキュア、かつ管理可能で、なおかつ「通常のUbuntu」と同じ使い勝手を実現したい、という意思表示です。

投稿としてはこれらのアイデアに加えて、⁠みなさんからのアイデアも募集しています」⁠あとチームを1.5倍ぐらいにする計画があるので従業員募集!)というセクションで終わる形となっており、oracularで行われる変更はこれらだけではないかもしれません(ついでに言うと、Ubuntuにおける「ロードマップ」にはそれなりの確率で隠し球的追加機能が出てくることがあります⁠⁠。特に重要な、あるいは「こうすると良さそうだ」というアイデアがある場合は、今のうちに意見を寄せておくのが良いと言えるでしょう。

Advantech RSB-3810のUbuntu 22.04 LTS Certificed

RoSや組み込み文脈でのUbuntuの利用において、また新しい仲間が増えることになりました。Advantech RSB-3810Ubuntu Certifiedとして認定されたというニュースです。

RSB-3810はMediaTek Genio 1200を搭載した小型の組み込み・IoT向けのSBCで、5GやWifi通信とGbE TSN(Time-Sensitive Networking)を搭載し、RoSやUbuntu Coreを動作させることに向いた、省電力デバイスとなっています。利用するUbuntuのイメージそのものは昨年リリースされたGenio 1200 EVK用のもので、これを利用する環境として、Advantech RSB-3810が正式にCertifiedデバイスになったと理解しておくのが良いでしょう。

これそのものがただちにUbuntuの利用用途を爆発的に増やす、という性質のものではありませんが、⁠RoSやIoTワークロードのためにUbuntuを利用する環境として、非常に強力な選択肢が増えた」ということになります。

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  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-May/008290.html
  • Ubuntu 24.04 LTS・23.10・22.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2024-30045, CVE-2024-30046を修正します。
  • 悪意ある操作を行うことで、任意のコードの実行とDoSが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

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  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-May/008291.html
  • Ubuntu 23.10・22.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2023-47233, CVE-2023-52601, CVE-2023-52602, CVE-2023-52604, CVE-2023-52615, CVE-2024-2201, CVE-2024-26614, CVE-2024-26622, CVE-2024-26635, CVE-2024-26704, CVE-2024-26801, CVE-2024-26805を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。

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  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-May/008292.html
  • Ubuntu 22.04 LTS・20.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2023-47233, CVE-2023-52530, CVE-2024-26622を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。

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  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-May/008295.html
  • Ubuntu 20.04 LTS・18.04 ESM用のアップデータがリリースされています。CVE-2023-47233, CVE-2023-52530, CVE-2024-26614, CVE-2024-26622を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。

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