Ubuntu Weekly Topics

Ubuntu 24.10(oracularの開発) / リリース前の最後の一週間⁠Confidential VM技術の展開

oracularの開発(Ubuntu 24.10) / リリース前の最後の一週間

oracular(Ubuntu 24.10)のリリースまであと一週間になりました。ISOイメージの生成とテストと、最後の滑り込み変更が試みられるシーズンです。

現状では23.10のような深刻な混乱を引き起こす要素は見られず、リリースノートの準備も順調に進められており、現状でも変化点をつかめるようになっています。ただし、known issueはかなりの部分が24.04 LTSのもののコピー&ペーストなので、現時点では信用するべきではありません。また、今のところ(そして、ひょっとするとリリースされた時点でも)新機能のすべてが記載されているわけでもないため、現状ではあくまで「参考」という位置づけで扱うべきでしょう。

一方で開発上の各種バグはまだまだ大きめのものが残留しており、たとえばTPM FDEでインストールできてもブートしない(LP#2081185)導入されている既存システムを認識できないことがある(LP#2077520)cloud-initが正しく動作していない(LP#2082851)といった大小さまざまな問題が残っています。致命的なものの多くはリリースまでに解決されることが期待されるものの、リリース時点でどのような状態になるのかはまだ不明です。

こうしたoracularの完成のための動きとはまた別に、開発者の動きとしては25.04のロードマップ作成が行われており、⁠次」の準備も開始されています。

Ubuntu 24.10 ⁠Oracular Oriole⁠は、10月10日にリリースの予定です。

Confidential VM技術の展開

Canonicalのblogにおいて、Google CloudにおけるIntel TDXを利用したConfidential VMと、AzureにおけるAI分野へのConfidential VMの利用についての記事が公開されています。これらはいずれもConfidential VM(秘匿VM)と呼ばれる、メモリイメージを含めた完全な暗号化を実現し、暗号化されたままシステムが実行できる仕組みで、次世代のクラウド環境においては欠かせないテクノロジーの一つです。Ubuntuがこうした動きに対応できているというアピールのための記事と見られます。

これらのうち大きなポイントとしては、AzureにおいてはNVIDIA H100を搭載したマシン上でConfidential VMが利用できるようになった点です。シンプルな表現としては「GPU付きのConfidential VMが使えるようになりました」となります。AI/MLワークロードの一部では「非常に高い秘匿性が必要な素材」を扱う分野が存在します。たとえば医療情報や、遺伝子関連、生体に関連するバイオ系が典型的なそれです。これら以外にも業界的な制約で「暗号化されていない状態では扱うことは許されない」ワークロードはそれなりに存在し、こうした分野ではデータを適切に暗号化しつつ、かつ大規模な学習を実施するといった対応が必要になっていました。

Confidential VMのような「仮想マシンそのものが完全に暗号化されている」実装を利用することで、これらの前提条件を満たし、学習や推論に利用できるようになります[1]

今週のセキュリティアップデート

usn-7031-1, usn-7031-2 Pumaのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-September/008652.html
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-September/008653.html
  • Ubuntu 24.04 LTS・22.04 LTS・20.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2024-45614を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、ヘッダの書き換えが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-7033-1:Intel Microcodeのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-September/008654.html
  • Ubuntu 24.04 LTS・22.04 LTS・20.04 LTS・18.04 LTS・16.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2024-23984, CVE-2024-24968を修正します。
  • 悪意ある操作を行うことで、本来秘匿されるべき情報へのアクセスが可能でした。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。

usn-7009-2:Linux kernelのセキュリティアップデート

usn-7032-1:Tomcatのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-September/008656.html
  • Ubuntu 24.04 LTS・22.04 LTS・20.04 LTS・18.04 ESM用のアップデータがリリースされています。CVE-2023-46589を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、HTTPスマグリングが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-7034-1, usn-7034-2:ca-certificates update

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-September/008657.html
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-September/008663.html
  • Ubuntu 22.04 LTS・20.04 LTS・18.04 ESM・16.04 ESM用のアップデータがリリースされています。
  • Mozilla certificate authority bundle 2.64への更新です。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで更新を反映できます。

usn-7035-1:AppArmorのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-September/008658.html
  • Ubuntu 22.04 LTS・20.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2016-1585を修正します。
  • 悪意ある操作を行うことで、AppArmorの保護を迂回してファイルシステムをマウントすることができました。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-7036-1:Rackのセキュリティアップデート

usn-7038-1:APRのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-September/008660.html
  • Ubuntu 24.04 LTS・22.04 LTS・20.04 LTS・18.04 ESM・16.04 ESM用のアップデータがリリースされています。CVE-2023-49582を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、本来秘匿されるべき情報へのアクセスが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-7037-1:OpenJPEGのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-September/008661.html
  • Ubuntu 24.04 LTS・22.04 LTS・20.04 LTS・18.04 ESM・16.04 ESM用のアップデータがリリースされています。CVE-2023-39327を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、DoSが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-7003-4:Linux kernelのセキュリティアップデート

usn-7020-3:Linux kernelのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-September/008664.html
  • Ubuntu 24.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2024-41009, CVE-2024-42154, CVE-2024-42159, CVE-2024-42160, CVE-2024-42224, CVE-2024-42228を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。

usn-7021-3:Linux kernelのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-September/008665.html
  • Ubuntu 22.04 LTS・20.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2024-26677, CVE-2024-27012, CVE-2024-38570, CVE-2024-39494, CVE-2024-39496, CVE-2024-41009, CVE-2024-42160, CVE-2024-42228を修正します。
  • 対処方法:アップデータを適用の上、システムを再起動してください。
  • 備考:ABIの変更を伴いますので、カーネルモジュールを自分でコンパイルしている場合は再コンパイルが必要です。カーネルモジュール関連のパッケージ(標準ではlinux-restricted-modules, linux-backport-modules, linux-ubuntu-modulesなど)は依存性により自動的にアップデートされるため、通常はそのままアップデートの適用を行えば対応できます。

usn-7039-1:Linux kernelのセキュリティアップデート

usn-7040-1:ConfigObjのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-September/008667.html
  • Ubuntu 22.04 LTS・20.04 LTS・18.04 ESM・16.04 ESM用のアップデータがリリースされています。CVE-2023-26112を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、DoSが可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-7041-1:CUPSのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-September/008668.html
  • Ubuntu 24.04 LTS・22.04 LTS・20.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2024-47175を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、任意のコードの実行が可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-7042-1:cups-browsedのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-September/008669.html
  • Ubuntu 24.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2024-47176を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、任意のコードの実行が可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。
  • 備考:脆弱性への対応のため、レガシーなプリンタ探索が無効になります。

usn-7043-1:cups-filtersのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-September/008670.html
  • Ubuntu 22.04 LTS・20.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2024-47076, CVE-2024-47176を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、任意のコードの実行が可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。
  • 備考:脆弱性への対応のため、レガシーなプリンタ探索が無効になります。

usn-7044-1:libcupsfiltersのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-September/008671.html
  • Ubuntu 24.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2024-47076を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、任意のコードの実行が可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-7045-1:libppdのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-September/008672.html
  • Ubuntu 24.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2024-47175を修正します。
  • 悪意ある入力を行うことで、任意のコードの実行が可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-7046-1:Flatpak and Bubblewrapのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-September/008673.html
  • Ubuntu 24.04 LTS・22.04 LTS・20.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2024-42472を修正します。
  • 悪意ある操作を行うことで、アクセス制御の迂回が可能でした。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

usn-7015-3:Pythonのセキュリティアップデート

  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2024-October/008674.html
  • Ubuntu 22.04 LTS(Ubuntu Proのみ⁠⁠・20.04 LTS(Ubuntu Proのみ⁠⁠・18.04 ESM・16.04 ESM用のアップデータがリリースされています。CVE-2023-27043を修正します。
  • usn-7015-1の22.04・20.04・18.04・16.04向けパッケージです。
  • 対処方法:通常の場合、アップデータを適用することで問題を解決できます。

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