Ubuntu Weekly Topics

“Frontdesk”導入⁠Ubuntu 26.10(Stonking)開発; glibcの更新

“Frontdesk”の導入

Ubuntuにおけるパッケージアップロードまでのワークフローに改善が加えられました。

Ubuntuの構成要素の基本単位は「パッケージ」です。これらのパッケージはmain, restricted, universe, multiverseといった種別に分けられ、それぞれに異なる受け入れポリシーが制定されています。

一方で、これらのパッケージを作成・アップロードすることが認められた人材は少なく、ボランティアがこうしたパッケージの更新を担当する場合、⁠アップロードする権利を持っている人に依頼する」というスポンサーモデルが採用されています。これによりパッケージ品質が保持され、同時に悪意ある変更を抑制できているものの、一方でスループットの制約にもなっています。

……という構造を「なんとかする」ために、Frontdeskと呼ばれる新しいbotが誕生しました。このbotは機械的なチェック(いわゆる「決定論的なコード⁠⁠)とLLMによる自動的な解釈を組み合わせた実装で、スポンサーとなる開発者が人力で確認する代わりに、スポンサーへ依頼された「新しいパッケージの候補」をレビューし、基本的なフィードバックを早期に提供します。

Discourse上で提供されている紹介ドキュメントでは、これにより「何週間も待ったあげく、きわめて基本的な指摘だけが返される」というボランティアにとっての不満を解決すると同時に、開発者の限られた人的リソースを活用できるようになるはずだ、ということが示されています。

botがLLMを利用する場所は限定的で、ほとんどが決定論的なコードで実装されており、なおかつ「これまで実際に繰り返し発生したリジェクト例」⁠過去に発生した事例から拾い上げたもの)を早期に検出する、というデザインが採用されていることがポイントです。最大のポイントは、LLMを利用する場合においても、次の動作のいずれかひとつを選択する動作が指定されていることです。

  • 沈黙して人間に任せる
  • 助言コメントを1つ「だけ」投稿する
  • 助言コメントを1つ「だけ」投稿した上で、ステータスを「修正が必要/未完了」に変更する

コメントは「絶対に1つだけ」という制約も加えられており、結果が収束することでLLMの振る舞いが決定論的になっています。これによって全体としてのワークフローの分岐が限定され、フローそのものの処理結果が収束するようになっています。⁠労働集約的なタスクにAIの補助を入れるにはどうすればよいのか」という命題の良い例と言えるでしょう。

Stonking(Ubuntu 26.10)の開発; glibcの更新

stonking(Ubuntu 26.10)の開発において、予定されていた大きなイベントがやってきました。glibc 2.44系への移行が8月1日に行われる予定です。

作業上の予想としては前回に比べて「おとなしい」⁠少なくともC99の定数マーカーが変化した26.04タイミングでの作業に比べるとソースコードレベルの対応は少なくなる)ものであることが期待されるものの、フルリビルドは完了しておらず(そして8月1日までに終わる可能性はまったくなく⁠⁠、⁠切り替えてみると多くの問題が生じた」という可能性が残っています。

とはいえそこまで懸念されるものでもなく、現状のテストリビルドの途中結果(ただし10%程度)では「この切り替えによって新たなFTBFS(ソースコードレベルでのビルド失敗)はLTO関連以外では起こっていない」と言える状況であり、glibc-lto(Link Time Optimization)まわりの問題と、⁠これまで無事に動いてしまっていた」性質の問題[1]が見つかる、という範囲に収まることが期待されます。

こうした「本体」側の修正とは別に、現在停止しているDDTP(パッケージ説明文の翻訳基盤)の翻訳を回復させるためのチャレンジや、新しいUbuntu wikiのステージング版の準備といったものが進められています。

全体的に北半球の夏休みシーズンということもあり、比較的大人しい(ただしglibcの更新を除く)時期と言えそうです。

また、「もう/etc/debian_versionから/etc/os-releaseへ移行するべきではないか」という問題提起も行われており、夏休み、と言えるほどの静けさではありません。少なくともこの議論そのものには「Debianとの差分を追加管理する必要が出てくる」⁠os-releaseしか見ないような実装のツールの問題である」といった検討が行われており、どこに着地するかはまだ分かりません。8月20日のFeature Freezeまで、もう少しいろいろな変化が起きそうです。

その他のニュース

  • 「HWE virtualization stack」についてのより詳細な紹介が提供されています。これまで公開されていた情報の整理という内容です。
  • コミュニティベースで開発されていた、⁠Orange Pi 5B用」Ubuntuを開発するubuntu-rockchipプロジェクトのフォークより、2つの新OS(Pi Desktop / Pi Studio)が紹介されています。8年間放置されていたWi-FiとBluetoothの不具合修正が盛り込まれているという内容です。

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