Wine 1.0がやってきた~どの程度動くものなのか~[前編]Wine 1.0インストール

はじめに

先日、Wine 1.0が先日リリースされました。

Wineといえば、Linux上でWindowsアプリケーションを動作させるためのソフトウェアですが、実際触ってみると、いくつか気が付くところがあります。

本稿では、Wineを触ってみて気が付いた点や注意点について、述べていくこととしましょう。なお、リリース元ではすでにWine 1.1になっていますが、大きく変わるところはありません。

Wineの入手元とインストール

Wineは、Wine HQから入手可能です。Wine 1.0を使う方法は、現状では大きく分けて次の2つがあります。

  1. ソースコードからのコンパイルを行う
  2. Wine開発元から配布されているパッケージを利用する

最初からビルドするのも悪くはないですが、どのような動作をどう実現するのか? というアタリをつけるために、ここでは2を選択することとします。筆者はDebian GNU/Linuxの扱いに慣れていることもあり、Debian 4.0の上で動作検証を行っています。

Debianにおけるインストール

オフィシャルに配布されているWine 1.0のパッケージは、当然ですがDebianのオフィシャルパッケージではありません。このため、開発元のリポジトリからダウンロード、インストールを行うわけですが、debパッケージを直接扱うよりは、リポジトリを追加してインストールできるようにするのが楽です。

インストール方法は、Wine HQ - Wine for Debian based distributionsに記載されていますが、簡単に言うと以下の3つの作業を行うことで、使用可能になります。このページでは、Debianベースということで、Debian 4.0とUbuntu 8.04でのインストール方法を紹介していますが、筆者はDebian 4.0での検証を行っています。なお、1~3の作業はすべて、root権限が必要になります。

1.署名検証用のGPG鍵をインポートする

APTで利用するGPG鍵を取得し、apt-keyを使って追加します。

wget -q http://wine.budgetdedicated.com/apt/387EE263.gpg -O- | apt-key add -
2.リポジトリの情報を記述したAPT Lineを追加

リポジトリ情報を記述したファイルを、ディレクトリ/etc/apt/sources.list.d配下に作成します。

wget http://wine.budgetdedicated.com/apt/sources.list.d/etch.list -O /etc/apt/sources.list.d/winehq.list
3.apt-getなどを用いてインストールする

普通にパッケージをインストールする際の手順と同じです。パッケージ名は⁠wine⁠です。

apt-get update
apt-get install wine

実際の利用~wineコマンドを直接使うかExplorer経由か

Wineをインストールすると、Wineを構成する各種コマンドやDLL、EXEファイルをはじめとするさまざまなものがインストールされます。ただ、DLLやEXEファイルは「直接使われる」ということはなく、Wineを実行するユーザのホーム配下に作成される.wineというディレクトリ配下に格納されます。

ディスクの利用効率を考えると、実行ファイルについてはそのようにしないほうが良い向きもありますが、ディスク自体は大容量化していることもあり、ユーザ個別のWindows環境をそのまま使えるほうが良いという判断なのか、Wineではこのような方式を採用しています。

まず最初に~wine explorer.exeを実行する

GNOMEなどのGUIを使っている場合、EXEファイルとwineコマンドの関連付けが行われます。が、ここはやはり「wineコマンド」を使ってExplorerを起動してみましょう。

何がどこにあるか?というのを気にする必要は(まだここでは)ありません。

$ wine explorer
wine: created the configuration directory '/home/art/.wine'
ALSA lib seq_hw.c:457:(snd_seq_hw_open) open /dev/snd/seq failed: 許可がありません
Could not load Mozilla. HTML rendering will be disabled.
wine: configuration in '/home/art/.wine' has been updated.

ここの時点で、当該ユーザでWineを動作させたことがないため、.wineディレクトリがユーザディレクトリ配下に作成されます。

動作している様子を図1、2に示します。

図1 Explorer動作時の様子1
図1 Explorer動作時の様子1
図2 Explorer動作時の様子2
図2 Explorer動作時の様子2

WindowsのExplorerというよりは、Windows 3.x時代まで使われていたファイルマネージャというたたずまいですが、一応普通に動いてるようには見えます[1]⁠。

.wineの配下~レジストリ、ドライブ構成のためのディレクトリ、そしてCドライブの内容

Wineを最初に動作させると、.wineというディレクトリが作成されますが、この配下には以下のような内容が含まれます。

$ ls -la .wine/
合計 460
drwxr-xr-x  4 art art   4096 2008-06-28 12:59 .
drwxr-xr-x 15 art art   4096 2008-06-28 13:05 ..
-rw-r--r--  1 art art     11 2008-06-28 12:50 .update-timestamp
drwxr-xr-x  2 art art   4096 2008-06-28 13:15 dosdevices
drwxr-xr-x  4 art art   4096 2008-06-28 12:50 drive_c
-rw-r--r--  1 art art 424904 2008-06-28 12:59 system.reg
-rw-r--r--  1 art art  13229 2008-06-28 12:59 user.reg
-rw-r--r--  1 art art   2327 2008-06-28 12:59 userdef.reg

それぞれ、のような内容になります。

 .wineディレクトリの内容
dosdevicesWine経由で動作させるアプリケーションが参照可能なドライブ名を持つシンボリックリンクが格納される(参照先は実際のディレクトリ)
drive_cCドライブの内容
system.reg、user.reg、userdef.regレジストリ

.update-timestamp:がありますが、この中にはWine 1.0リリース日時付近の時刻がEpoch形式で格納されています。

Wine Explorerから見えるドライブ構成~CドライブとZドライブ

何もいじらないで単にExplorerを動作させると、CドライブとZドライブの2つが確認できます。それぞれ以下の場所を指し示しています。

  • Cドライブ:ユーザのホームディレクトリ配下の.wine/c_driveディレクトリ
  • Zドライブ:システムのルートディレクトリ

たとえば、/etcディレクトリは、z:\etcと見えますし、~/.wine/c_drive/windowsディレクトリは、c:\windowsという形でwineからは参照可能です。

ドライブを増やすには?~dosdrivesの下にシンボリックリンクを置く

Wineが認識するドライブは、.wine/dosdevices配下のシンボリックリンクをドライブ名で作成することで可能になります。

たとえば、初期作成時の.wine/dosdevicesは、以下のようになっています。

$ ls -l .wine/dosdevices/
合計 0
lrwxrwxrwx 1 art art 10 2008-06-28 12:50 c: -> ../drive_c
lrwxrwxrwx 1 art art  1 2008-06-28 12:50 z: -> /

ここにシンボリックリンクを増やすことで、ドライブを増やせます。

たとえば、.wine配下にdrive_dというディレクトリを作成し、これをDドライブとして見せる場合には、以下のようにします。

mkdir ~/.wine/drive_d
cd ~/.wine/dosdevices
ln -s ../drive_d d:

この状態でExplorerを起動すると、Dドライブが現れます図3⁠。

図3 Dドライブの認識
図3 Dドライブの認識

アプリケーションのインストール~setupファイルを実行する形式のものは楽にインストールできた

無謀にも、Wineインストール直後にアプリケーションをインストールしてみました。方法は2通りあります。

  • wineコマンドでEXEファイルを指定し実行
  • Explorerを用いてファイルを選択しダブルクリック

どちらを用いても、インストール時に指定した場所にインストールされます。なお、インストール先のフォルダ名には、とくに制限はないように見えます。たとえば、Windowsではおなじみの⁠Program Files⁠というディレクトリも許容されますし、DOS時代の8+3制限も(あたりまえといえばあたりまえですが)存在しません。

筆者は秀丸エディタとUTF-8 TeraTerm Proをインストールしてみました。結論から申し上げると、インストールはできるがプログラムの種類によっては正常動作しないことがある、というようになります。

(後編へ続く)

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