Intelプロセッサ(1.6GHz)を搭載しパワーアップしたTurbo NAS
企業においてファイル共有の必要性が高まっている中、本格的なサーバの構築はコストも掛かり、何よりも設置スペースの確保が難しいという話しを聞くことがあります。中小企業においてもビジネスで顧客との取引で使用されるデジタルファイルは増加の一途を辿り、企業内で共有すべきファイルについても同様に増大しています。
コストや設置スペースを度外視すれば、すぐにでも大容量のファイルサーバを構築し運用していかなければなりませんが、実際にはなかなか手が出せないというケースも多いのです。今回レビューするQNAPのNASサーバ「TS-639 Pro」は最大で6台のシリアルATA HDDを搭載できる製品です。サイズは175(H)×257(W)×235(D)mmと非常にコンパクトで、設置スペースは最小限で済むのが特長です。
QNAP Turbo NASシリーズのニューモデル「TS-639 Pro」
さらにプロセッサにIntel Atom 1.6GHzを搭載し、メモリも1GバイトのDDR2 RAMのほか、128MバイトのFlash DOMを採用し、アクセスが多い時間帯にも余裕をもって対応できるハイパワーも大きな魅力です。搭載可能なHDDの種類もシリアルATA-IおよびIIで、1台最大1.5Tバイトまで認識することが可能です。内蔵できるHDDだけでも最大9Tバイトと大容量ですが、eSATAポートもしくはUSB2.0ポートを利用することでHDDを拡張することもできます。将来的にも余裕のディスクスペースを確保できるというわけです。
冗長性を持たせたシステムも構築可能
もちろん、HDDの運用はRAID構成で行えます。RAID0/1/5/6のほか、RAID5+Spareなど主要なRAIDはすべて対応し、トラブルに強い冗長性を持つファイルサーバを簡単に構築できます。また、OSとアプリケーションはDOMにデュアル構成でインストールされており、仮に一方のシステムが破損しても他方から起動・修復が行えます。
さらに、バックアップソフトウェアNetbak Replicatorによってリアルタイム同期、rsyncを利用した遠隔地へのバックアップ、ワンタッチUSBコピーなど万全のバックアップ体制を持つことも、ビジネス用途に向いている部分でしょう。
そして、この製品の最大の特徴はiSCSIターゲットサーバとしての機能を持つことです。iSCSIターゲットを内蔵しているので、IP-SANを簡単に構築できます。MySQL、SQLiteをデュアルサポートしているため、スタンドアロンデータベースサーバとしても設定できます。もちろん、これらの設定は物理的なHDDを割り振ることで、NASサーバと兼用して管理することも可能なため、ビジネスに必要とされるファイル共有環境やデータベースサーバ機能を自在に、そして手軽に構築することができます。
ディスクボリュームをそれぞれIP-SAN(図のA) 、NAS(図のB)と振り分けることも可能。( QNAPのTS-639 Pro製品紹介ページ より)
静音性に優れ、インジケータ類による状態管理も万全
それでは実際にTS-639 Proを起動してみましょう。まず最初に見を引くのはフロントパネルにある6台のHDDスペースです。引き出しやすいインターフェースを採用しており、HDDへのアクセスも容易です。さらにキーロックすることも可能なため、セキュリティや安全面からみても安心な構造です。内蔵するHDDは引き出したトレイにセットして軽く押し込むだけでシリアルATAコネクタが接続されます。購入時にHDDは搭載されていませんから、まずは2台のHDDをセットして必要に応じて追加してゆくといった使い方をしても、セッティングの手間はほとんど感じないでしょう。
フロントに設置された引き出し式のHDDトレイ。キーロックも可能なためセキュリティや安全対策も万全。
また、インジケータ類も非常にわかりやすい位置にあり、アクセスのあるHDDユニットが一目でわかる上、右上に配置された小型のディスプレイは本体のIPアドレスや設定情報を適時表示してくれます。
見やすい液晶パネルとHDDトレイに連動するアクセスランプが状況を的確に知らせてくれます。
そのほか、フロントパネルにはディスクコピー用のUSB2.0ポートが搭載されており、バックアップ時に容易なアクセス環境を提供してくれます。背面にはUSB2.0ポートが4基、eSATAポートが2基備えられています。ギガビットイーサネット対応のLANポートは2基備えており、あらゆるLAN環境においても安心して接続することができます。もちろん、これまでのQNAP Turbo NASシリーズ同様、プリンタサーバ機能も搭載されていますから、豊富なインターフェースはさまざまな用途に使えるはずです。
背面には各ポートと、静音タイプの9cmファンが搭載されています。排熱効果だけでなく、静音性も高いレイアウトです。
電源ボタンを押してみると、とても静かなことに気がつきます。スタンバイ時で34.2dB、稼働時でも38.2dBという数値がメーカから発表されていますが、一般的なNASサーバと比べた場合、静音性は非常に高いように思えます。これは搭載されている9cmファンに静音タイプが採用されているだけでなく、レイアウトも優れているからでしょう。これならオフィスのすぐ横に置いても、稼働音に関して気になるようなことはないはずです。
ブラウザベースの簡単設定
TS-639 Proの設定は本体を検知する「QNAP Finder」と、ブラウザベースの「Turbo Station」から行います。最初に管理するPCにQNAP Finderをインストールし、プログラムを走らせることでTS-639 Proを検出します。発見したTS-639 Proをクリックすると、ブラウザが起動し、Turbo Stationへとアクセスできるようになります。
「QNAP Finder」を管理するPCへインストール。プログラムを実行すると自動的にサーバを検出してくれます。
QNAP Finderのリストをクリックするとブラウザが起動し「Turbo Station」が表示されます。
「管理」から入るとTS-639 Proの各種設定が行えます。
Turbo NASではGUIのコンソールで各種設定が行えるので、NASサーバを構築する程度なら特別な知識も不要です。ブラウザに表示されるトップ画面上部にある「管理」をクリックすると管理画面へとアクセスします。もっとも簡単なセットアップは「クイック設定」からウィザード形式で実行可能です。他に最低限必要となるのは、アクセスするユーザをを管理する「ユーザ管理」 、ネットワークディスクの設定を行う「ネットワーク共有」ぐらいです。
RAIDの構築は「デバイス設定」で「SATAディスク」をクリックして行います。
RAIDを構築する場合は「デバイス設定」から行います。ディスクフォーマットやディスクチェックもここから実行します。また、先ほど触れたiSCSIターゲットもこの項目からセットアップが可能です。
ユーザを作成し、アカウントにある「容量制限」をクリックするとディスクスペースを指定できます。
ユーザが多い場合や、個別にディスクスペースを割り振るなどの管理も行えます。個人ごとにPCのバックアップスペースとして一定容量を付与したり、プロジェクトごとの共有スペースを作成したりすることも容易です。
TS-639 Proの状態は「システムログ」にある「システム情報」から監視できます。
「システムツール」にある「アラート通知」で、障害時のメール通知設定が行えます。
こうした各機能はファイル共有ソリューションとして非常にすぐれており、管理もPC上のブラウザから行える利便性を持っていることは特筆すべきことでしょう。さらに、物理的なサーバメンテナンスも手軽にできるため、運用においても数々のメリットがあるといえます。
省スペース高機能サーバをすぐに構築
TS-639 Proは中小企業においてファイルサーバを手軽に構築できるベストソリューションとなり得る製品でしょう。これだけの多機能、高性能を持ちながら製品の実勢価格は13万5625円(※ )と低価格なのも大きなメリットです。販売時にはディスクレスとなっているため、HDDは別途購入する必要がありますが、1TBのHDDの実勢価格が9000円前後(※ ) 、1.5TBでも1万8000円前後(※ )で購入できます。たとえば、TS-639 Pro本体と1TB HDDを6台購入しても20万円を切る価格でファイルサーバが入手できる計算です。コストパフォーマンス的にみても企業導入に際してはかなりメリットがあるといえます。
また、企業以外の個人利用の場合でも、QNAP Turbo NASシリーズではお馴染みの音楽ファイルの管理が容易な「iTuneサービス」、BitTorrentなどのP2Pツールに対応する「ダウンロードステーション」、オンラインで画像ファイルを共有できる「マルチメディアステーション」などのマルチメディア機能にも対応しています。膨大なディスクスペースが必要なヘビーユーザにも手が届く、大容量NASサーバとしても十分に候補に挙げていただきたい製品です。
省スペースで高機能なサーバをすぐに活用したい。そんな企業やユーザの声に応えてくれたQNAP Turbo NAS「TS-639 Pro」。NASのご購入をお考えの方はぜひご検討してください。
TS-639 Pro 問い合わせ先
QNAP社国内正規代理店( 株) ユニスター
URL :http://www.unistar.jp/
ベンチマーク
最後に、恒例の? ベンチマークテストを行いました。今回はフリーのPC用ベンチマークツーHDBENCH(Ver 3.40b6) を使用し、RAID0、1、5、6の構成でそれぞれ100Mバイト、1000Mバイト(1Gバイト)の容量を使った場合のリード、ライト、コピーの1秒間の転送バイト(kバイト/秒)を測りました。
テスト環境
テストマシン
CPU
Core 2 Duo E6750(2.66GHz/L2キャッシュ4Mバイト)
メモリ
2Gバイト
ネットワーク
1000BASE-T
使用ハードディスク
Seagate ST31000333AS(1Tバイト/7200rpm)×6
※ RAID構成により使用したHDD数は異なります。
ベンチマーク結果
表1 RAID0(100Mバイト)
Read Write Rread Rwrite ALL
1回目 35480 41595 27452 32984 17189
2回目 44638 54208 36454 29828 20641
3回目 43741 52485 36874 30099 20400
表1 RAID0(100Mバイト)
Read Write Rread Rwrite ALL
1回目 35480 41595 27452 32984 17189
2回目 44638 54208 36454 29828 20641
3回目 43741 52485 36874 30099 20400
表2 RAID0(1000Mバイト)
Read Write Rread Rwrite ALL
1回目 41387 51240 25964 28027 18327
2回目 41886 51200 27568 31019 18959
3回目 44290 51077 28158 39070 20324
表3 RAID1(100Mバイト)
Read Write Rread Rwrite ALL
1回目 44329 42595 35654 28287 18858
2回目 42595 41009 36056 29298 18620
3回目 43170 42331 34723 29298 18690
表4 RAID1(1000Mバイト)
Read Write Rread Rwrite ALL
1回目 32238 38930 26318 25265 15344
2回目 34510 41782 25620 28427 16292
3回目 35480 41595 27452 32984 17189
表5 RAID5(100Mバイト)
Read Write Rread Rwrite ALL
1回目 41524 41009 35080 28404 18252
2回目 42070 46209 34350 28780 18926
3回目 42331 46209 34362 29165 19008
表6 RAID5(1000Mバイト)
Read Write Rread Rwrite ALL
1回目 37082 32591 24346 21886 14488
2回目 37209 33149 24043 22696 14637
3回目 41050 33370 23325 24265 15251
表7 RAID6(100Mバイト)
Read Write Rread Rwrite ALL
1回目 44638 48599 36056 28162 19682
2回目 41273 48599 35273 29165 19289
3回目 43741 48233 32979 28910 19233
表8 RAID6(1000Mバイト)
Read Write Rread Rwrite ALL
1回目 40169 45173 25974 23713 16879
2回目 40667 45329 25540 27168 17338
3回目 44260 53713 24639 27452 18758
それぞれの平均値を比較