あけましておめでとうございます。
昨年に引き続き、新春特別企画でインターネットで起きそうなことを予想したいと思います。基本的にインターネットインフラまわりの話がメインです。
ネット規制のさらなる推進
2011年は、ネットへの制限やネット検閲に関する話題が非常に多い一年でした。
2011年1月にチュニジアの政権が崩壊し、エジプトやリビアでも大きな変化がありましたが、それらの国々でさまざまなネット検閲やネット規制が行われていたことが報道されました。インターネットの利用方法を制限し、国民をコントロールする方法は2012年も模索され続けられるものと思われます。
国民をコントロールという方向性とは恐らく異なりますが、日本では児童ポルノ対策としてのブロッキングが2011年4月に開始されました。日本のインターネットそのものの構造の要素として「ブロッキング」が含まれるようになったという意味では、大きな変化でした。
2011年時点では、日本におけるブロッキングはDNSブロッキングでしたが、DPI(Deep Packet Inspection)を利用したブロッキングを実施することを模索する動きが2012年に登場するかも知れないと予想しています。
現時点では日本のブロッキングは児童ポルノに限定されたものですが、以前から児童ポルノ対策ブロッキングを実施してきたイギリスで、児童ポルノのためのブロッキングの仕組みを利用して著作権侵害サイトをブロックすることを裁判所がISPに命令するという報道もありました。
しかし、その後11月に欧州司法裁判所が著作権を侵犯しているコンテンツをフィルタすることを、インターネットサービスプロバイダ(ISP)に対して強制することはできないという判決を下されました。これはイギリスではなくベルギーのISPに関連する判決ですが、最終的に著作権侵害コンテンツのブロッキングに関する規制を誰がどのようにすべきなのかに関しての議論は続きそうです。
米国では、著作権侵害コンテンツを含むサイトをブロック可能となるPIPA(Preventing Real Online Threats to Economic Creativity and Theft of Intellectual Property Act of 2011)とSOPA(Stop Online Piracy Act)が2011年に後半に大きな話題となりました。
2012年も引き続きそれらの法案が審議されますが、米国は現在もインターネットの中心であるため、両法案が成立すれば、世界中のさまざまな場所でインターネットの運用方法に変化を与えるものと思われます。両法案が成立しなかったとしても、2012年中に著作権侵害コンテンツに対応するための別の法案が提出されるような気もしています。
IPv4アドレス在庫枯渇問題
2012年は、IPv4アドレス在庫枯渇問題が一部の事業者にとって、より差し迫った問題になるだろうと思われます。
2011年2月にIANA中央在庫枯渇したときに世界中で大きなニュースとして扱われましたが、その後は急激に話題にされなくなってしまったような印象があります。
しかし、2011年4月にAPNIC(アジア太平洋地域)におけるIPv4アドレス在庫が枯渇し、APNICとIPv4アドレス在庫を共有しているJPNICのIPv4アドレス在庫も枯渇しました。JPNICでの割り振りルール上、各事業者は約1年分のIPv4アドレス以上は申請してないはずなので、2012年の中旬から後半には各事業者が個別に保持しているIPv4アドレス在庫が枯渇し、「本当の枯渇」が現実のものとなっていくものと予想されます。
2011年時点では、APNIC以外の地域におけるIPv4アドレス在庫は枯渇していませんでした。しかし、2012年中旬にRIPENCC(ヨーロッパ、中東、中央アジア)におけるIPv4アドレス在庫枯渇が発生すると思われます。
このような状況から、金銭を伴うIPv4アドレス移転(いわゆる「IPv4アドレス売買」)が、2011年に引き続き2012年も行われて行くものと思われます。
IPv6の普及も2012年に粛々と行われていくものと思われますが、インターネットユーザの多くは引き続きIPv4を使い続けます。
OpenFlowやSoftware Defined Network
2011年の夏から秋にかけてさまざまな場所で話題になることが増えたのがOpenFlowです。
2011年の冬頃には、OpenFlowだけにとどまらず、Software Defined Networkというバズワードが登場することも増えました。2011年時点で販売されている製品もありますが、多くの製品が登場するのは2012年の初頭になる予定です。
基本的にデータセンターやISP内部での利用になるので、OpenFlowやSoftware Defined Networkに実際にユーザが触れることは2012年段階では少ないと予想されますが、それなりに話題になると思われます。
分散データセンターと仮想化
OpenFlowやSoftware Defined Networkと平行して話題にのぼることが2012年に増えると思われるのが、郊外型データセンターなどを利用したクラウドの運用と、それを実現するための仮想化技術です。
分散データセンターの検討を加速させたのが、2011年3月の震災です。東京直下型の震災が発生したときの対応などを含めて、分散データセンターが2011年に注目されました。
それ以前からの流れとして、郊外型データセンターによる低コスト化や、郊外型データセンターでの消費電力削減に関する取り組みが行われていましたが、震災以降拍車がかかったイメージがあります。
2011年段階では「これから考える必要がありそう」という雰囲気が多かった印象がありますが、2012年は「実際にどうやって実現するのか?」に関しての取り組みが少しずつ発表されていくのではないかと予想しています。
2ちゃんねるに激震は走るのか?
インターネットインフラとは直接は関係がありませんが、もし本当に発生したら、ネット上のコミュニケーションや日本国内におけるネットでの情報流通に一部影響を与えそうなのが「2ちゃんねるでの激震」です。
警視庁が本気で「2ちゃんねる撲滅作戦」? - ITmedia ニュース
現時点ではソースが週刊朝日のみとなっていることや、2ちゃんねるが潰されるという話題は数年おきに登場しているので、実際に激震が発生するのかは不明ですが、しばしばネットヲチを行っている私としては気になるところです。
さて、今年は何が起きますかね?
個人的な予想はこんな感じです。
ここ数年は、1990年代後半や2000年代前半のように非常に大きな変化がインターネットに対して起きていますが、その流れは2012年も続くものと予想しています。
今年もどうぞ宜しくお願いいたします。