早いもので、「オープンソースカンファレンス」(OSC)も2014年2月末の東京開催で100回目を迎えます。10年前の2004年9月にスタートし、北は北海道から南は沖縄まで、全国津々浦々で開催してきましたが、10年の間に注目のオープンソースソフトウェア(OSS)が変化してきました。
初期はLinuxなどのOSが注目株だった
初期の頃は、まだまだOSS自体が広まっていないこともあり、注目されるのはやはりLinuxなどのOSでした。様々なLinuxディストリビューションが出ていたのもこの頃です。
その後、Webサーバとしての利用が広まるにつれ、PHPなどの言語やTomcatなどのWebアプリケーションサーバが注目を浴び、その後CMSなどのWebアプリケーションがOSSとして現れてきました。
比較的息が長いのがデータベースです。初期の頃からPostgreSQLやMySQLが使われていましたし、Webアプリケーションサーバのバックエンドとしてデータベースの需要が高まると、つられて注目度が高くなりました。とくにこの時期はデータベースそのもののバージョンアップによる高性能化や機能アップが多かったことも注目を浴びる理由の1つかもしれません。
最近の状況から2014年に注目のOSSを考える
では、ここ最近の状況から2014年に注目のOSSを考えてみましょう。やはり、クラウドへの移行が進みつつある中で、「OpenStack」への関心の高まりは2014年も続くのではないでしょうか。2013年はどちらかというと機能の紹介や導入方法などのお話が先行していましたが、いろいろなところで検証、先行導入などが進められているようです。これらの成果が少しずつではあると思いますが、世の中に情報として出てくる時期に差し掛かっているのではないでしょうか。
また、まだ国内での導入事例は少ないですが、そろそろアレコレと出てきてもよい時期のはずです。OSSの世界では、ある程度先行事例が出てくると一気に普及が加速する傾向が強いので、2014年後半には、OpenStackの第2次ブームが来るかもしれません。
OpenStackは、仮想マシンを提供するいわゆる「IaaS」基盤として見られていますが、中にはAmazon S3のようなオブジェクトストレージを提供する「Swift」、SDNと連携するためのコンポーネント「Neutron」などがあります。Swiftは大規模なストレージ構築の際に、OpenStackと関係なく利用したいケースがあるようです。まだ、SDNということで、OpenFlowの技術、そして実装系として「Open vSwitch」なども注目ではないでしょうか。
運用監視面でのOSSは?
また、OSSが業務システムで使用されることが徐々に当たり前になりつつありますが、運用監視面でもOSSを利用したい、というニーズが高まりつつあります。海外では「Nagios」を利用するケースが多いようですが、日本国内では「Zabbix」が人気があるようです。また、より高機能なジョブ実行などを行いたい場合には「Hinemos」を検討するケースもあります。
ジョブについては「JobScheduler」というOSSも出てきており、従来は商用ソフトウェアで実施していた運用管理面をOSSで、という流れが2014年に強く出てくるのではないでしょうか。
スマートフォン、タブレットの領域
少し違う分野に目を向けると、スマートフォン、タブレットの領域が目につきます。市場シェア面ではAndroidがかなり大きな出荷ベースでのシェアを占めるようになる中、第3のOSとして「Tizen」「Firefox OS」「Ubuntu Phone」などが新たに本格化しようとしています。これらのOSのおもなターゲットはまだスマートフォンが普及しきっていない南米や中国などと言われていますが、カスタマイズ性や低価格化がうまくはまれば、日本国内でも大きな市場を築くことができるのではないでしょうか。
ただし当然、そのOSの上で動く魅力的なアプリケーションが無ければならず、またあるいは柔軟なカスタマイズが必要ない業務端末としての利用も考えられます。このあたりは余計な制約の少ないOSSの得意な分野であり、すでに普及しているiOSやAndroidのエコシステムが逆に制約となる分野でしょう。
HTML5関連
上記に関連して、HTML5に関する情報もニーズの高まりを感じます。今のところHTML5関連のOSSといったものがそれほど見当たりませんが、Webアプリケーションなどを中心としてHTML5対応のものが2014年は増えてくるかもしれません。
OSS+オープンデータに注目!
さらに違う分野になりますが、最近は「オープンデータ」が注目されるようになりつつあるのを感じます。
以前からOSCでも「OpenStreetMap」などが出展しており、どのように地図データ、位置情報データを活用するのかという議論がありましたが、最近では政府・公共団体が持つデータを公開し、これを様々な分野で活用するという議論が活発になりつつあります。
実際にOSCでもオープンデータ関連のセッションは大変熱心な方が多数集まる傾向にあり、OSS+オープンデータという、よりオープンな仕組みに対する期待の高まりが感じられます。さらに、オープンになったデータを処理するためのHadoopの活用などもまだまだ人気がありますし、商用系のソフトウェアに比べるとオープンであることもメリットが大きい分野ということになるでしょうか。
ハードウェアは?
ハードウェアの面では、RaspberryPiのような小さいハードウェアがおもしろそうです。2013年は興味先行という感じでしたが、メモリ容量も増えたことで本格的な利用方法も増えてきそうな勢いがあります。もちろん、ハードウェア上で動作するものはOSSですし、ノウハウも含めて公開していこう、という雰囲気があるので、興味のある人はコミュニティに飛び込んで行ってもいいのではないでしょうか。
まとめ
「十年一日」と言います。しかし、10年間の蓄積の中でいわゆる「流行」みたいなものは変わってきていますが、本質である「オープン」な点は変わらないような気がします。
最近ではクラウド化によって、とくにインフラ側が見えにくくなってきていますが、一方でDevOpsのように上位レイヤーと下位レイヤーのコミュニケーションの重要性も増しています。そのような状況の中で、OSSが果たす役割とは何かを考える、そんな2014年になりそうです。