アキラの海外“デッドストックニュース”掘り起こし

第10回iPhoneの影にAT&Tあり - Appleだけでは維持できないiPhoneの信用

iPodの新ラインナップ、iPhoneの大幅(約30%!)値下げ、既存ユーザの抗議とJobsの声明…2007年9月第1週のIT業界は、どこもかしこもAppleの話題でもちきりだった。あらためてSteve Jobsという人がもつパワーの強さに恐れ入る。登壇しただけで満場の聴衆を一瞬にして引き付ける圧倒的な存在感といったらない。一時期Appleをクビになり、細々とキヤノンの援助を仰ぎながら"NeXT"なんてオタクなマシンを作っていた過去なんて、まるでなかったかのようだ。誰がなるかはわからないけど、Jobsの次のCEOになる人はやりにくいだろうなあ。5日に行われた新iPodのお披露目プレゼンテーションはAppleのサイトで見ることができる。Jobsの英語は日本人にも聞き取りやすいが、それだけでなくプレゼン自体の上手さも必見だ。

翌6日にJobsが全iPhoneユーザに宛てた声明-早期iPhone購入者には100ドル相当のキャッシュバックを行う-で、ひとまず落ち着きを見せたApple/iPhone騒動。とはいうものの、不満の種はあちこちに転がっているもの。新iPod登場のニュースにかき消されそうな、これらのcomplaintsの中からひとつを拾ってみた。

これが「米国クオリティ」?

アメリカで暮らしたことがある人、あるいはちょっと長めの旅行をしたことがある人ならわかると思うが、アメリカ人の、とくにサービス業に就く人間の態度の悪さ、間違いの多さ、責任感のなさは、慣れていたとしてもかなり頭にくる。金額を間違える、品物が違う、注文を忘れる、時間通り来ない、それでも決して謝らない(←コレが一番ムカつく)。日本のコンビニ店員がいかに教育されているか、奴らと比べるとよーくわかる。

でもって、その例から漏れることなく、アメリカの各電話会社の顧客サービスもはっきりいって酷い。逆に言えば「顧客サービスの好感度が高い電話会社」なら、それだけで十分ウリになると思うのだが。オペレータの教育になんてカネをかけてられないってことなのか?

iPhoneの独占キャリアであるAT&Tは、規模が巨大なこともあり、苦情も多く、嫌われ度も高い(その辺は日本も同じかも)。前回も書いたが、⁠AT&Tが嫌い」だからiPhoneを買わない、という人はけっこうな割合で存在するのだ。まあ、ここで書かれているように、"契約した覚えのないサービス"を解約するのにえんえんたらい回しにされたりすれば⁠ぜー⁠ーったいこんなキャリアは使いたくない!!!」という気持ちにもなるだろう。ちなみにこの記事を書いたGuy KawasakiはSteve Jobsの長年の友人でAppleの元フェローだが、にもかかわらず「AT&Tを使わずにiPhoneを楽しむことはできないのかなあ」とぼやいている。

オペレータの質の低さだけではなく、ユーザへの説明不足という面でもかなり酷いと言わざるを得ない。たとえばThe New York Timesの記事によれば、iPhoneを携えて2週間のヨーロッパ旅行に出かけたある男性は、帰国後、AT&Tから来た請求書に852.31ドルと書かれてあるのを見て驚愕した。海外からのローミング費用がある程度かかるとは思っていたが、852ドルってどういうこと!? -この男性の場合、アメリカ国内で使っている「自動メールチェック機能」をオフにしていなかったため、彼のiPhoneは旅行中ヨーロッパ各国から500回以上も国際ローミングをしていたのだ。

⁠最初に言ってよ! 自動メールチェックをオフにしなきゃいけないなんて、そんなの聞いてないよ!」と言ったかどうかは知らないが、この男性のような目に遭い、AT&Tに文句を言っても「海外旅行するなら、前もってローミングプランを問い合わせてもらわないと」⁠これらのことは注意事項にきちんと書いてある」と木で鼻を括ったような回答しかもらえず、ぶつけようのない怒りをもてあまし、自分のブログで鬱憤を晴らすしかない人たちが増えている。まあ、たしかに"iPhone Terms and Conditions"を読めってことなんだろうけど、いかにも読む気が失せるような文面で、しかも国際ローミングについては明確な説明が載っていない。これじゃあ、説明不足といわれても仕方ないだろう。

AT&Tが握る!? iPhone浮沈の鍵

AppleはiPhoneの通話方式に、あえて一世代前の規格であるGSMを選んだ。選んだ理由はおそらく、GSMが現在、世界で最も普及している通話方式だからだろう(ちなみに日本ではGSMはサポートされていない。iPhoneの日本展開は今後どうなるのか!?)。ということはAppleは、ユーザが世界のどこにいてもiPhoneが使える状態を願っているはずだ。であれば、そのサービス体系は明瞭で使いやすい設定でなければならない。Jobsがよく使う言葉を借りれば「すべてのiPhoneユーザにとって」わかりやすくあるべきなのだ。

そう考えると、やっぱりAT&Tの態度はちょっとなあ…という感じがする。ほかにも、iPhoneの国際ローミングで3,000ドル(!)を請求されたユーザが苦情を申し立てたら、小馬鹿にするかのように100ドルだけ返金した(注:この話はすぐにネットで広まり、後でユーザにAT&Tは全額返金した)、などとさまざまな実績(?)をもつAT&Tだが、残念なことに「AT&Tでよかった!」という声はほとんど聞こえてこないのだ。

先日、iPhoneの出荷台数が発売2カ月で100万台を超えたというニュースが出た。ホリディシーズンを前に399ドルという新価格になり、ますます売上に弾みがつくと予想されている。ユーザが増えたら、少しくらいはAT&Tのイイ話を聞けるのかなあ…。

おすすめ記事

記事・ニュース一覧