最近、扱うネタがiPhone & Apple関連に偏ってきた感があるので、そろそろ違う話をしたいところだが…スイマセン、今回もiPhoneの話です。日本では使える目処も立っていない商品だが、しかし、最近の一連の騒動を見ていると、Appleという会社のスタンスは昔からあまり変わっていないことがよくわかる。創造性あふれる魅力的なインターフェースで一般ユーザの気持ちを掴む一方で、サードパーティやそのユーザに対しては断固たる措置を取る。開発者もユーザも、Appleが作った枠からはみ出ることは決して許されない。今回のiPhoneアップデートに絡むAppleの対応を見ると、Mac互換機を作ろうとしていたサードパーティを徹底的に排除していたころの同社と、ぴたりと重なってくる。
Appleからの警告
iPhnoeのSIMロック解除がハッカーたちの間でちょっとしたブームになったことは、前にも書いた。SIMロックはずしがおおっぴらに行われれば、当然、AppleとAT&Tによるビジネスモデルは崩れてしまう。そろそろ何らかの法的措置に出てもおかしくないかな…と思っていたら、9月24日、Appleがついに警告とも取れる声明を出した。「巷ではiPhoneを不正にアンロックするプログラムが出回っているが、これらを使うとiPhoneのソフトウェアに取り返しのつかないダメージを与える恐れがある。勝手にそんなソフトを適用してiPhoneが使えなくなったとしても、Appleはいっさい面倒見ないからそのつもりで」-つまり、不正なソフトを入れてiPhoneが動かなくなったとしてもAppleは何の責任も取らない、そんなiPhoneは保証外、と宣言したのだ。
え、これだけ? 警告だけで終わりなの? ……もちろん、そんなワケはなかった。3日後の9月27日、AppleはiPhoneソフトウェアのアップデータ(Version 1.1.1)を公開した。Webブラウザ"Safari"の脆弱性の修正やiTunes Wi-Fi Music Storeのアクセスが含まれるもので、6月の発売開始以来、初の大きなアップデートである。ユーザたちはiPhoneの新しい操作感を想像しながら、うきうきとアップデートを試みた。
そして"それ"が発動された
それから数時間後、全米のあちこちで悲痛な声が響き渡ることになる。「アップデートしたらiPhoneが使えなくなった」「入れていたソフトが消えちゃった」…彼らのうちの一部にはSIMロック解除ツールを試した者もいたかもしれない。だがフリーズしたiPhoneを呆然と眺めるしかなかった人々のほとんどは、そんなことはしていない。彼らがしたことといえば、ネットからiPhone用のソフト-Apple製じゃないヤツ-をいくつかダウンロードして、便利に使っていただけなのだ。
だがAppleはそれらサードパーティの製品やフリーソフトもすべて「不正なソフト」としてiPhoneから弾くよう、アップデータに設定したのだ。法的措置? そんな時間のかかることなんて冗談じゃない。Appleが選んだのはAppleが認めたもの以外はすべて拒否するという強い意思表示だった。その強硬な姿勢の前にはどんな小さなユーティリティツールも"Apple的に違法"となる。Appleのビジネスの邪魔をするとも思えないスクリーンキャプチャツールやIMツール、そしてDavid Pogue(The New York Timesの人気ジャーナリスト)もお気に入りだったバーチャルポップコーンメーカーも使えなくなった。
各地のApple Storeには動かなくなったiPhoneを持ち込む人や電話で問い合わせてくる人が後を絶たない。だが、ストアの店員は皆厳しく「それはあなたが取ったリスクです。Appleの保証外です」と例外なく突っぱねているという。
つくづく、アメリカらしい会社だと思う。フレンドリーに見える反面、ビジネスにはこの上なくシビアに対応する。自分の権益を侵す勢力とは徹底的に闘う。たとえそれでいくらかの信頼を失うことになったとしても、決して引かない。この宣戦布告の前にSIMロックはずしのハッカーたちはどう立ち向かうのだろうか。