2016年は来月にFreeBSD 10.3のリリースが予定されており、7月には次期メジャーアップグレードバージョンとなるFreeBSD 11.0のリリースが予定されています。現在サポートされているバージョンのセキュリティサポートの期限などを加味しつつ、無理のないアップグレード計画を立てておきましょう。今回はこのあたりのリリーススケジュールをまとめます。
FreeBSD 10.3-RELEASE
安定版である10系の次のリリースが3月に公開が予定されているFreeBSD 10.3-RELEASEです。2015年1月15日には新機能の追加などは避けるようにコミッタに対してアナウンスが出ています。2016年1月29日にはリリースエンジニアリングチームから大規模なコミットに関しては明確に許可を得る必要がある旨がアナウンスされています。小さな変更に関しては許可なしでコミットすることができます。
FreeBSD 10.3-RELEASEの今後のリリーススケジュールは次のとおりです。
表 FreeBSD 10.3-RELEASEの今後のリリーススケジュール
2016/02/05 | BETA1ビルド開始 |
2016/02/12 | BETA2ビルド開始 |
2016/02/19 | BETA3ビルド開始 |
2016/02/26 | releng/10.3ブランチ作成 |
2016/02/26 | RC1ビルド開始 |
2016/03/04 | RC2ビルド開始 |
2016/03/11 | RC3ビルド開始 |
2016/03/18 | 10.3-RELEASEビルド開始 |
2016/03/22 | 10.3-RELEASEプレスリリース |
現在10系を採用しているユーザにとって次のアップグレード対象としてもっとも有力な候補が10.3-RELEASEになると思います。マイナーアップグレードではいくつかの機能が開発版からバックポートして取り込まれていますが、基本的には安定性の向上やバグ修正を目的としたリリースです。10系を使っているのであれば10.3-RELEASEはアップグレードの検討に値するリリースといえますし、後述するセキュリティサポートの期限を加味すると、実質的にこのバージョンにアップグレードすることになると思います。
FreeBSD 11.0-RELEASE
次期メジャーアップグレードバージョンとなるのがFreeBSD 11.0-RELEASEです。多くの新機能が取り込まれ、新しい機能がデフォルトで有効になります。新しい機能を使いたいユーザはこのリリースは魅力的に見えるでしょう。
執筆段階では次の日程でのリリースが予定されています。
表 FreeBSD 11.0-RELEASEのリリーススケジュール(予定)
2016/04/22 | コードスラッシュ開始 |
2016/04/29 | コードフリーズ開始 |
2016/05/13 | KBI(Kernel Binary Interface)フリーズ開始 |
2016/06/10 | stable/11ブランチ作成 |
2016/06/10 | BETA1ビルド開始 |
2016/06/11 | headブランチのコードフリーズ解除 |
2016/06/17 | BETA2ビルド開始 |
2016/06/24 | BETA3ビルド開始 |
2016/07/01 | relend/11.0ブランチ作成 |
2016/07/01 | RC1ビルド開始 |
2016/07/02 | stable/11ブランチのコードフリーズ解除 |
2016/07/08 | RC2ビルド開始 |
2016/07/15 | RC3ビルド開始 |
2016/07/22 | 11.0-RELEASEビルド開始 |
2016/07/27 | 11.0-RELEASEプレスリリース |
FreeBSDプロジェクトおよびFreeBSD Foundationはリリースエンジニアリングの安定化、つまりできるだけリリーススケジュール通りに作業を進めるための取り組みを続けています。FreeBSD 11.0-RELEASEもうまくいけばスケジュール通りにリリースされることになるでしょう。
しかしこれまでのリリーススケジュールを見ると、X.0が付与されるメジャーアップグレードバージョンのリリースは大抵の場合でリリースに延期が発生しています。リリースを妨げる要因になるショーストッパーが報告されると週単位でリリースが延びます。これは実際にリリースへ向けた作業を進めないとわからないところがあるので、現段階ではなんともいえないところです。
10系から11系へ移行する安定的な方法は、FreeBSD 11.0-RELEASEの採用は見送って、かわりにFreeBSD 11.1-RELEASEでの移行を実施するというものです。X.0のリリースで見つかったバグや不具合などが修正されていますので、安定的な移行を望む場合にはもうひとつ先のリリースを待った方がいいかもしれません。10.3-RELEASEにアップグレードしたのち、次のタイミングで11.1-RELEASEへのアップグレードを実施するといったやり方です。
FreeBSD 9.3-RELEASEと9-STABLEは2016年いっぱいでEoL
FreeBSD 9.3-RELEASEまたはこれ以降のFreeBSD 9-STABLEを使用している場合には、今年が終わるまでに10系以降への移行を検討してください。FreeBSD 9.3-RELEASEは2016年12月31日でサポートが終了する予定です。FreeBSD 9-STABLEも同日をもってサポートが終了する予定ですので、あと11ヵ月以内により新しいバージョンへ移行することが推奨されます。
この2年ほど、FreeBSDはセキュリティアドバイザリの発行件数が高い状態が続いています。一月に1回ないしは2回といったペースでなんらかのセキュリティアドバイザリが発行されていますので、セキュリティサポートが終了したバージョンを使い続けることは推奨できません。できるだけ早い段階でアップグレードを実施することが推奨されます。
FreeBSD 10.1-RELEASEと10.2-RELEASEも同じタイミングでEoL
FreeBSD 10.1-RELEASEおよびFreeBSD 10.2-RELEASEも現在のところ同じタイミング(2016年12月31日)でのセキュリティサポートの終了が予定されています。つまり、FreeBSD 10系を使用している場合には、少なくとも2016年末までにFreeBSD 10.3-RELEASEへのアップグレードの実施が望まれることになります。
まだどうなるかわからないのですが(たぶん高い確率で)、FreeBSD 11からはリリースサポートではなくブランチでのサポートに切り替わります。サポートするのは常に最新のリリースバージョンとなり、ブランチ全体で最低5年間のサポートを目指します。明確により長期のセキュリティサポートに応えるためと、セキュリティサポートの対象を最新のリリースに限定することで開発リソースを効率良く使用するといった目的があります。
FreeBSD 11系のサポート体制がどうなっていくのか、多くの方が興味を持たれているところではないかと思います。関連のアナウンスがあるごとに取り上げてお伝えしようと思います。まずは来月末のFreeBSD 10.3-RELEASEを対象にしたアップグレード計画などをご検討ください。