AsiaBSDCon 2016 3/10~13開催
AsiaBSDCon 2016のオンライン参加登録が開始されました。今年のAsiaBSDConは今から約2週間後の、2016年3月の10日から13日までが予定されています。10日(木)と11日(金)はチュートリアルやデベロッパサミットが開催されます。12日(土)と13日(日)は論文講演セッションです。多くの方は主にこの土日の論文講演セッションに参加することになると思います。
オンライン参加登録
一般 | 18,000円 |
学生 | 5,000円 |
12日(土)の夕食会一般 | 9,000円 |
12日(土)の夕食会学生 | 3,000円 |
当日受付で支払を済ませて参加することもできますが、資料の準備や食事の準備などがありますので、できれば事前にオンライン登録で登録を済ませておくことが推奨されます。
木曜と金曜は仕事があって参加が難しいという方もいらっしゃいますと思いますので、おすすめは土日の論文講演セッションへの参加と、土曜夕方からの夕食会への参加です。夕食会ではさまざまな開発者やユーザと懇談することができますので、日々疑問に思っていることや聞いてみたいことを他のユーザや開発者に持ちかける良い機会といえます。
*BSDを活用したビジネスを模索していたり、*BSDのシステム開発ができる企業や開発者を探しているといった場合にも、この夕食会には顔を出しておくとよいと思います。オンライン参加登録で夕食会にも申し込めますので一緒に申し込むとよいでしょう。東京近辺以外からの参加の場合には会場の近くのホテルを手配することもおすすめします。
今回のみどころは?
発表されているプログラムを見るといろいろと目移りしてしまいますけれども、まず日曜の昼に開催が予定されている基調講演は多くの方が聞いて面白いものになると思います。
- Keynote K02: Steve Bourne srb@acm.org
Steve Bourne氏はALGOL 68Cコンパイラの開発者であり、Bourne Shellの開発者です。UNIX初期の開発に携わっていたことで知られています。現在、*BSDで使われている/bin/shの実装系やashやkshなどオリジナルのBourne Shellそのものではありませんが、Bourne Shellの機能がほぼそのまま実現されています。どういった思想があってBourne Shellのメモリモデルが決定されたのか、どういった理由があってBourne Shellのシンタックスが決定されたのかなどを知ることができると思います。ALGOLのシンタックスと似ていることなど、彼の発表を聞くことでその理由がよくわかるでしょう(発表内容は掲載されていませんが、さすがにBourne ShellとALGOLの話をしないということはないと思います)。
シェル好きの方はにとってはこの講演を聴くためだけでもこのカンファレンスに参加する意義はあると思います。日本で彼の、しかも(たぶんすると思いますけども)Bourne Shellの話が聞ける機会はほとんどないからです(基調講演で発表しなくても夕食会や休憩時間に彼と有意義な話ができると思います)。
論文講演セッションの内容は多岐に渡るので、いくつかの視点からいくらかピックアップしておきます。まず、実用度の高いところから。
- P04B: Directory Services on FreeNAS - John Hixson john@ixsystems.com
FreeNASを使ってNASソリューションを作るというのは多くの方が実際に使われていることだと思いますが、FreeNASの開発者であるJohn Hixson氏からFreeNASの中身について誤解されている部分、勘違いされやすい部分などの説明があるようです。FreeNASをもっと使いこなすためにも役立つと思います。
仮想環境という点からは次の2つを取り上げておきます。Xenベースの仮想環境におけるFreeBSDサポート改善の状況が聞けるほか、bhyveでより古いオペレーティングシステムを動作させるための取り組みについて聞くことができます。管理者としてはあまり考えたくないことですが、すでにサポートが終了しているバージョンの*BSDを動かし続けたいという要望があるのもたしかですので、bhyveでそうした古いバージョンが利用できるようになるとなにかと便利ですし、聞いておきたい内容です。
- P03A: Xen HVMlite and FreeBSD - Roger Pau Monné royger@FreeBSD.org
- P01B: bhyve ATA emulation - Mihai Carabas mihai@freebsd.org
セキュリティの観点から3つ取り上げたいと思います。まず、NetBSDで開発が進められている新しいセキュリティモデルに関する発表です。Alistair Crooks氏が発表を予定しています。既存の4つのセキュリティモデルを取り込み、さらに2009年に発表されたRBACモデルのより新しいモデルを含み、加えてカーネル内認証のためにPGP/SSHを用いるモデルが導入されているなど興味深い内容になっています。
- P04C: New Security Models for NetBSD - Alistair Crooks agc@pkgsrc.org
FreeBSD Capsicumの研究開発の発表としては次の2つの発表を抑えておきましょう。特にCheriBSDはこのセキュリティモデルをプロセッサの設計と実装に適用した場合の研究が行われています。
- P04A: Capsicum and Casper - a fairy tale about solving security problems - Mariusz Zaborski oshogbo@FreeBSD.org
- P01A: CheriBSD: A research fork of FreeBSD - Brooks Davis brooks.davis@sri.com
上記2つとは多少レイヤが異なりますが、安全にアプリケーションを実行できる環境を別の視点から提供しようという取り組みにClpudABIがあります。この取り組みも面白いので抑えておきたいところです。
- P06A: CloudABI: Pure capability-based security for UNIX - Ed Schouten ed@nuxi.nl
これ以外にも興味深い発表はいくつもあります。惜しくも聞きたいセッションが被ってしまった場合には、休憩時間や夕食会のときに発表者に声をかけて意見交換などをしてみてください。
効果的なチュートリアルも
土日の論文講演セッションよりも前となる、木金の段階でチュートリアルが開催されます。チュートリアルは半日ないしは全日の講義のようなもので、特定のトピックに関して講師がひととおり説明を行ってくれます。執筆段階では今回のチュートリアルの内容は発表されていませんが、時間が作れるのであればぜひとも参加をご検討いただきたいプログラムです。
なぜかといいますと、まず、特定のトピック(たとえばこれまでの例ですとDTrace、PF、IPv6、VIMAGE Jail、bhyve、Xenなど)に関してはこれほどまとまった資料や説明が手に入ることが希であり価値があるからです。同様の知識と技術をこのチュートリアルを受けないで手に入れようとした場合、はるかに多くの費用と時間が必要になるでしょう。この2日間チュートリアルに参加することで得られる資料や知識は、なにものにも代えがたい価値があります。
またチュートリアルに参加して講演者と連絡先を交換しておくのもよいでしょう。なにか困ったことがあった場合、チュートリアルを受けたことを伝えれば質問メールが忘れられる可能性も低くなるというものです。顔がわかる相手の方が意思疎通がスムーズになるところもありますので、お時間が作れるかたはぜひこちらへの参加も検討してみてください。
FreeBSD勉強会 告知
第50回 3月22日(木) 19:00~ 【マジで困ってますシリーズ】FreeBSDが固まるんですけど・・・
FreeBSDは安定しています。たしかに安定しています。高負荷時にも粘り強い動きをみせます。しかし、ふとしたときになぜか黙ることがある、クラッシュダンプもなしに……。そんなニッチもサッチもいかない状況に追い込まれたIT戦士の声も聞くのです。しかし、クラッシュダンプもとれてないし、どうしたらよいかわからない……。
そこで、記念すべき第50回目となるFreeBSD勉強会では、そうした窮地に追い込まれた状況を語り合い、死力を尽くした対応策を話し合い、情報共有して来たるべき、そしていま来ている地獄に備える、そんな会にしたいと思います。FreeBSDサーバを管理している方、この状況をなんとか乗り越えたい方、情報共有から次の一手を見つけ出したい方、すべての戦士に参加を求めます!
ライトニングトークに近い形で相互に発表しましょう。よろしくお願いしまっす。参加申請はこちらから。