ZFS関連おすすめ書籍
ストレージシステムを構築するためのファイルシステム、または何かと便利なファイルシステムとして普及するZFS。しかし「まだZFSを使ったことがない」「 導入記事を読んで触ってみたものの、実はどういった使い方ができるのかよく知らない」といった方は少なくないのではないかと思います。
もともとSun Microsystemsの時代にSolaris向けに開発されたファイルシステムで、最初にアナウンスされたタイミングからすればすでに10年以上、開発がはじまった時点からカウントするとすでに15年以上が経過したファイルシステムです。
OracleがSun Microsystems社を買収してOpenSolarisを終了してからZFSの実装系は分かれてしまいましたが、その時点までのZFSに関する書籍はすでにいくつか出版されていますし、FreeBSD ZFSに言及したものも存在しています。
たいへん役に立つ一方で、ちょっとばかり本が分厚すぎてとっかかりにくいといった難点があります。今回はそんな方向けに2冊の本を紹介したいと思います。薄い本ですが中身は実用的な内容がまとまっています。FreeBSD ZFSの内容がよくまとまっていますので、これからZFSをはじめたい方にも、すでにFreeBSD ZFSを使い込んでいる方にもおすすめしたい書籍です。
FreeBSD Mastery: ZFS
Michael W LucasもAllan JudeもFreeBSD開発者やユーザの間ではよく知られた人物ですが、彼らがFreeBSD ZFSについてまとめた本が『FreeBSD Mastery: ZFS』です。ペーパーバックの方は入手する時期や経由方法で値段が変動すると思いますがだいたい3,200円、Kindle版が1,200円ほどです。すぐに内容を確認したい場合にはKindle版が、業務で使いたい場合にはペーパーバック版も買うことをお薦めします。
FreeBSD Mastery: ZFS
分厚いZFSの本だと、まずZFSで導入される新しい概念であるとか、その仕組みであるとか、そういった部分を読むだけで諦めてしまいがちですが、こちらの本はそういうことはありません。最初の方でZFSの新しい概念(プール、仮想ディスク、データセットなど)の説明がありますが、必要最小限に抑えてあって、以降のコマンドの内容を理解できる程度にまとめられています。設計と実装の内部構造などにもほとんど踏み込みません。ZFSを実際に使いたい人向けの内容です。
それ以降はだいたい利用する順で書かれていますが、実際に何かを行うときのオプションや引数を含んだコマンドの実行例と、その説明といった形でまとまっています。読む時間が惜しい場合には、コマンドラインの部分(ボールド体でコマンドライン風の印刷になっているのですぐにわかります)だけをピックアップしていって、気になるコマンドラインの前後の説明だけを読むといった方法で情報を得るものよいでしょう。さらに深く知りたくなったらさらにその前後を読めばよいでしょう。
英語で書かれた本ですが、本書の英語は平易で読みやすいものです。イデオム満載で意味がよくわからないような類の文章ではありませんので、それほど英語が得意ではないという場合でもそれとなく読めると思います。FreeBSDの書籍としては今では『The Design and Implementation of the FreeBSD Operating System (2nd Edition) 』が代表的なものですが、この書籍と比べるとサイズも小さくフォントも大きくページも少ないので、すぐに読み終えられる本のように思えます。
それでも英語の本はちょっとという場合には、次回の第55回FreeBSD勉強会(後述)で本書の解説を行っていますので、よければそちらもご検討いただければと思います。FreeBSD勉強会の第53回と第54回で本書の3分の2ほどを扱いました。第55回目では残りの3分の1を取り上げる予定です。これまでのZFSの回に出ていないものの発表資料が欲しいという場合、FreeBSD勉強会に参加したときにお話いただければ対応します。
Freebsd Mastery: Advanced ZFS
同じくMichael W LucasとAllan Judeが執筆した先ほどの書籍の次のバージョンとなる書籍が「Freebsd Mastery: Advanced ZFS」です。こちらもペーパーバックとKindle版の双方が用意されています。とにかく内容を読みたい場合にはKindle版を、やはり業務で使いたいといった場合にはペーパーバック版を購入しておくことをお薦めします。
Freebsd Mastery: Advanced ZFS
すでにFreeBSD ZFSを導入していろいろ使っている、いろいろな組み合わせで運用を行ったり実験を実施している、といった場合にはこちらの本の方が役に立つ思います(先ほどの本も知らなかった内容などが書いてあると思いますので、先ほどの本も手に入れておくほうがよいとは思います) 。
こちらも値段は時期や取得方法で変わると思いますが、ペーパーバックで2,800円ほど、Kindle版で1,200円といったところです。ペーパーバックは会社や研究室の備品として購入して同期や後継者も使えますし、だいたいよく使う部分には付箋紙を貼るでしょうから、そこをパッと開いてコマンドを調べるといったことができるので便利です。Kindle版はすぐに取得できるので便利なのですが、社内や研究室で共有というのは難しいところがあるので、それぞれケースバイケースといったところではないかと思います。
こちらは今年の春に販売がはじまった新しい本です。勉強会でZFSの使い方を求める声は結構多いので、次はこの本を取り上げていこうかと考えています。FreeBSD勉強会で取り上げる内容については逐次、このFreeBSD Weekly Topicsで取り上げますので、チェックしていただければと思います。
FreeBSD勉強会 告知
第55回 8月24日(水)19:00~ ZFSアドバンス クォータ、リザーブ、圧縮、重複、スナップショット、クローンほか
今回のFreeBSD勉強会ではデータセットにおけるクォータやディスク容量の管理、リザーブや圧縮、重複排除、スナップショット、クローンなどの機能を解説します。ZFSの提供する機能は多岐に渡り、これまでのファイルシステムでは実現が難しかった機能が簡単なプロパティの設定などで実現することができます。こうした機能を知ることで、今よりももっとZFSを使いこなせるようになるはずです。
第53回目の勉強会ではZFSの基礎(データセット、プール)を、第54回目ではデータセットのプロパティの設定や、プールの追加、削除、リシルバリングなどについて解説しました。第55回目となる今回はZFSが提供している個々の機能に焦点をあて、使い方やその効果などを紹介します。
参加申請はこちら から。
第56回 9月28日(水)18:30~
内容は調整中です。確定次第お知らせします。
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