不定点観測所

第7回日本でも目前に迫る児童ポルノのブロッキング

具体化に向けて

原口総務大臣(2010年5月当時)がワシントンで記者会見し、その後の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」で検討されるなど、ISPによる児童ポルノのブロッキングへ向けた動きが具体化しつつある。6月に開かれる犯罪対策閣僚会議で検討され、何かしら今年度中に実施に移される公算が大きい。

ブロッキングの仕組み

ブロッキングの仕組みとしては、DNSに細工をしてホスト名単位でアクセスを止める「DNSポイズニング方式」や、IPアドレス単位で止める「パケットドロップ方式⁠⁠、ブロッキング対象となるIPアドレス宛の通信を透過プロキシでURL単位でフィルタリングする「ハイブリッド方式」などがある。

ブロッキングの懸念事項

ブロッキングは⁠ChinaGreat Wall⁠と揶揄された中国を筆頭にアジア各国、中東、欧州などで広く導入されているが、日本では憲法や電気通信事業法で定められた「通信の秘密」に抵触すると考えられるほか、ブロッキングによって規制対象ではないコンテンツまでがブロックしてしまう「オーバーブロッキング」は電気通信事業法で定められた利用の公平や、憲法で保障された表現の自由に抵触する可能性が指摘される。

今年3月に「安心ネットづくり促進協議会」が取りまとめた報告書では「検挙や削除が著しく困難である場合に、より侵害性の少ない手法/運用で、著しく児童の権利等を侵害する内容のものについて実施するかぎり、児童ホルノのブロッキンクにつき、緊急避難として、現行法のもとても許容される余地はある」と結論づけている。しかしこの解釈では国内の児童ポルノ等までブロッキングすることは難しい。

課題はあるか?

インターネットホットラインセンターによると、児童ポルノを確認してサイト管理者等に削除依頼を行った件数は昨年が過去最多の1,800件あまり、削除までにかかった期間は平均7.7日、最終的に削除されなかったものも1割ほどあったという。警察庁ではこういった国内の児童ポルノもブロッキングできるように、正当行為など別の解釈でブロッキングを認められないか模索している。

早ければ今年度中にブロッキングが実施されるとの報道もあるが課題は山積している。ブロッキングに使うリストを誰がどう管理するのか、リストに児童ポルノ以外が紛れ込んでおらず運用が中立/公平であることをどう確認するのか。接続がブロッキングされた旨を通知するサイトに記載する連絡先をどうするか、通知するサイトのログを犯罪捜査に使うことは許されるのか。

実施に向けて

現段階ではブロッキングを合法的に実施する上での解釈しか議論されておらず、事業者にブロッキングを義務付ける根拠はない。インフラを他社に依存している事業者や、高度なブロッキングに必要なネットワーク機器を保有していない事業者も多く、ブロッキングが事業者間の競争環境に与える影響も無視できない。政府として方針を決めた後も、実施へ向けて紆余曲折が予想される。

おすすめ記事

記事・ニュース一覧