本日、アジア太平洋地域及び日本のIPv4アドレスが枯渇しました。具体的には、アジア太平洋地域のRIR(Regional Internet Registry)であるAPNICのIPv4アドレス在庫が枯渇しました。
「APNICにおけるIPv4アドレス在庫枯渇のお知らせおよび枯渇後のJPNICにおけるアドレス管理ポリシーのご案内」
「あれ?この前も枯渇のニュースがあったような……。」という人もいるかも知れませんが、2月に枯渇したのは中央在庫と呼ばれるIANA在庫です。
IANA在庫の枯渇のアナロジーとしては「IPv4アドレス製造工場で製造中止された状態」のようなものです(IANAはIPv4アドレスを作っているわけではないので製造工場というよりも巨大倉庫ですが、そこら辺は愛嬌ということで許してください) 。 IANAからのIPv4アドレスブロックは世界5つのRIR(Regional Internet Registry)に割り振りされますが、RIRは問屋みたいなものです。
RIRは、アナロジーとしては「小売店」のようなNIR(国別IR)などに割り振りします。 NIRなどは、ここで紹介するアナロジーとしては「顧客」となるISPなどに割り振りします。
ということで、今の状態に対するアナロジーとしては、「 問屋の在庫が枯渇した」という感じかも知れません。
日本も在庫枯渇しました
APNICのIPv4アドレス本日が枯渇したわけですが、日本のNIRであるJPNICはAPNICとIPv4アドレス在庫を共有しており、実際には日本国内からのリクエストをAPNICへと伝えるという状態であるため、「 問屋と小売店が同時に枯渇した」という状態とも言えます。
顧客の手元にあるIPv4アドレスの在庫が切れると、その顧客は利用するIPv4アドレス数を増やさずにネットワークの規模拡大をしなければなりません。
世界に5つあるRIRのうち、APNICのIPv4アドレス在庫が大方の予想通り最初に枯渇しましたが、これからは誰も体験したことのない未知のゾーンへと突入したとも言えそうです。
APNICの定義する「枯渇」と、それによる変化
IANAにおけるIPv4アドレス在庫は「全ての/8ブロック割り振りが完了して、/8ブロック在庫がゼロになったとき」でしたが、APNICの定義する「IPv4アドレス在庫」は、「 APNICが保持するIPv4アドレス在庫が/8ブロック1個分まで減少したら」となっています。
そのため、APNICの在庫としてのIPv4アドレスが全くゼロになったわけではありません。しかし、最後の/8ブロックへと突入し、「 枯渇」がトリガーされたとこで、APNICによる割り振りの方法が今までと変わります。
詳しくは「IPv4枯渇~これからのインターネットの変化とデータセンター~@HOSTING-PRO」 をご覧ください。
IPv4アドレス移転ポリシー
JPNICの発表によるとIPv4アドレス移転制度の施行は7月~8月となるようです。
地震の影響で恐らくIPv6サービス開始は遅れる
日本のインターネットで多くのユーザに対するIPv6サービスが開始するのは、今年の4月であるとされていました。具体的にはNTT-NGNの案2(トンネル方式)が4月に開始し、案4(ネイティブ方式)が「その数ヵ月後」とされていましたが、現在は通信事業社やISP各社が震災復旧を行っており、4月のIPv6サービス開始は難しいと言われています。
多くのISPは、NTT-NGNのIPv6マルチプレフィックス問題対応が開始されないと顧客へのIPv6サービスを開始できないので、自動的に日本における一般ユーザへのIPv6サービス開始は遅れるものと思われます。
NTT-NGNに関係しないISP(たとえばCATV網)も、震災復旧/対応や計画停電対応などで本来計画されていたよりもIPv6サービス開始が遅れそうであるという声もチラホラ聞きます。
そろそろ本番が近づいて来たようです
「来る来る詐欺」と言われ続けていたIPv4アドレス枯渇ですが、そろそろ本番になりつつあるようです。実際にユーザが影響を受け始めるのは、数ヶ月もしくは1年ぐらい少し先だろうと思われます。
これから徐々にNATやALGなどIPv4アドレスの利用効率を上昇させる技術に関して検討や導入が増えるでしょうし、それと平行してIPv6対応に関しての話題も増えそうです。
過去に書いたIPv4アドレス枯渇/IPv6関連記事