OpenStack Days Tokyo:ミラクル・リナックスが考えるクラウド管理の決め手

第1回「Hatohol」OpenStackの運用管理が大きく変わる

いよいよ運用フェーズに移行しつつあるOpenStack。十数万台規模のサーバの自動管理を可能にする一方で、特に運用における課題もあるといいます。ここでは、OpenStackの効率的な統合運用を可能にする「Hatohol」の開発に注力しているミラクル・リナックスのエンジニアである佐藤剛春氏、プロダクトマーケティング部の部長である青山雄一氏、また同社と協業しOpenStackを推進している日本仮想化技術(VTJ)の玉置伸行氏にお話をうかがいました。

今回お話を伺った皆さん。左から青山雄一氏、佐藤剛春氏、玉置伸行氏
今回お話を伺った皆さん。左から青山雄一氏、佐藤剛春氏、玉置伸行氏

なぜOpenStackが盛り上がっているのか

クラウド関連をはじめ、最近「OpenStack」という言葉をよく耳にするようになりました。⁠OpenStackはオープンソースのクラウドOSで、いわゆるIaaSと呼ばれる仮想マシンとストレージ、ネットワークなどを提供するクラウド環境を構築できるものです」⁠玉置氏⁠⁠。2月3、4日にはOpenStackの国内イベント「OpenStack Days Tokyo 2015」が開催され、秋には国際カンファレンス「OpenStack Summit Tokyo」が日本で初めて開催されるなど、盛り上がりを見せています。

日本仮想化技術 玉置伸行氏
日本仮想化技術 玉置伸行氏

オープンソースのクラウドOSはほかにもありますが、なぜOpenStackなのでしょう。その理由について佐藤氏は、⁠OpenStackが最も活発に活動しており、開発も最もオープンです。OpenStackのプロジェクトには、さまざまなサーバメーカのエンジニアやLinuxディストリビューター、VMwareなどの仮想化製品を販売している企業まで加わっており、その数は約18,000名にもなります。大きな期待が寄せられているのです」といいます。

また玉置氏は、⁠OpenStackが一般的な仮想化と異なる点は、人力では管理しきれない膨大なコンピュータ資源の管理を自動化し、効率的に運用できることです。最終的には数十万台の物理サーバを管理、コントロールすることを目指しています。現在では数千台規模が現実的になっており、1万台というケースも出てきました⁠⁠。OpenStackは、データセンターやサービスプロバイダで導入効果が高いとされています。事例においてもYahoo!、楽天、GREEなど、自社でたくさんサービスを提供しているところが多くなっています。

ミラクル・リナックス 佐藤剛春氏
ミラクル・リナックス 佐藤剛春氏

コストメリットもOpenStackの特長であると玉置氏は指摘します。プライベートクラウドではVMware vSphereが一般的ですが、大規模なプライベートクラウドを検討するとライセンス費用に加えてストレージ費用が増大します。大容量で高速のストレージが必要となり、性能を求めていくとオールフラッシュのストレージなどを活用することになり、コストが大きくなってしまうのです。

もともとVMware製品をそれほど使っていない米国では、OpenStackが広がっているといいます。ただし、日本ではすぐにOpenStackに置き換わっていくものではないと玉置氏はいいます。現時点では、新しいところにOpenStackを使ってみようという動きが活発になっています。国際イベントである「OpenStack Summit」が日本で開催される今年は、⁠OpenStack元年になる」としています。

OpenStackの現状としては、企業において情報収集のフェーズが終わり、⁠いかに使うか」という具体的なことを考えるフェーズになったと佐藤氏は指摘します。⁠今まではベンダが声高にOpenStackと言っていた感があったのですが、今はいろいろな企業で実際に検討が始まっています」⁠佐藤氏⁠⁠。また玉置氏は、OpenStackが注目されている参考情報として、米国のエンジニア求人サイト「engineerjobs.com」での求人件数を示しました。これによると、OpenStackの求人件数は1589件ですが、この1年で3倍に増加したといいます。企業もエンジニアもOpenStackに注目しているのです。

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OpenStackの課題と、解決策「Hatohol」

盛り上がりを見せるOpenStackですが、その課題はなんなのでしょう。まず、OpenStack普及の敷居を高くしているのが、年に2回実施されるバージョンアップです。バージョンアップそのものは、機能追加や高速化など利便性や性能が高まっていて非常にいいことなのですが、日本語はもちろん英語でもまとまったドキュメントがないのが現状なのです。

そこでVTJでは独自に検証を行い、その結果を日本語のドキュメントにまとめて公開しています。その品質は非常に高く、⁠コピー&ペーストでOpenStackを構築できるレベルのドキュメントとなっています」⁠玉置氏⁠⁠。これにより、新しい機能がどのようなものか、それが必要なものかどうか、構築において悩む部分とその解決法などを知ることができ、普及に弾みをつけることができます。

「OpenStack構築手順書」のダウンロードサイト

「OpenStack構築手順書」のダウンロードサイト

もうひとつの課題は、OpenStackは複数のモジュールで構成されており、それぞれが健全にコミュニケーションして初めて効果が発揮できます。しかし現状、OpenStackには運用管理、監視の標準モジュールがないのです。⁠Ceilometer+Horizon」という方法もありますが、課金モジュールとして始まっているので、運用管理という観点では使いにくいのです。

ミラクル・リナックス 青山雄一氏
ミラクル・リナックス 青山雄一氏

また、⁠Zabbixでもクラウド環境の監視が十分にできているとは言えません。Zabbixでは、監視対象が自動で増えることは想定されているが、自動で監視対象が減ることは考慮されていないのです。また、監視対象ごとにZabbixサーバが必要になるので、モニターするのも大変です」⁠青山氏)といいます。このため、障害発生のアラートがあがっても、どこで障害が起きているかを突き止めることも難しくなっているといいます。

その解決策となるのが、運用統合ソフトウェア「Hatohol」です。Hatoholは、複数のZabbixサーバ、およびNagiosサーバからデータを取得し、ZabbixサーバやNagiosサーバをまたいだ環境の一括監視を可能にするものです。Hatoholもオープンソースソフトウェアであり、ミラクル・リナックスの社員が中心に開発を進めています。⁠今後も引き続きOpenStack環境全体を縦串、横串に監視でき、OpenStack全体の健全性が見渡せるよう開発を進めています」⁠佐藤氏⁠⁠。

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「OpenStack Days Tokyo 2015」でのセッション

2月3日および4日に開催される「OpenStack Days Tokyo 2015」では、佐藤氏がセッション「使ってわかった!現場担当者が語るOpenStack運用管理の課題」を行います。このセッションでは、ZabbixをOpenStackで監視するにあたり、できないことや課題を紹介し、その解決法を紹介する予定です。また、実装や基本的な環境を監視するためのスクリプトも紹介。このスクリプトは無償提供されるといいます。

さらに、OpenStack環境でHatoholを使うと何ができるのか、そのメリットを実際にWebインタフェースで見てもらいながら説明します。なお、⁠4月10日には秋葉原UDXにおいて、Hatoholを中心としたOpenStackのセミナーイベントを開催する予定です」⁠佐藤氏)といいます。

また「OpenStack Days Tokyo 2015」ではブースの出展も行います。ブースではHatoholを使って複数のZabbix、さらにはNagiosも一緒にインシデント管理するデモなどを行う予定だといいます。⁠実際には、ZabbixやNagiosが混在している環境が多いですから、より実践的にHatoholの良さを感じていただけると思います。ぜひお立ち寄りください」⁠青山氏)とのことでした。

2月3、4日開催の「OpenStack Days Tokyo 2015」での出展、セミナー詳細情報は下記へ。

URL:http://www.miraclelinux.com/event-seminar/2015-02-03

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