世界有数のEC企業とソフトバンクが手を組んだクラウドサービス―いま注目される「Alibaba Cloud」の可能性

いよいよ日本上陸!! 現場のエンジニアが語る、「Alibaba Cloud」魅力と可能性

世界有数の規模を誇るECサイト「Alibaba」⁠アリババ)を支えるクラウド基盤「Alibaba Cloud」が、いよいよ日本でのサービスを本格的に開始します。サービスを提供するのは、ソフトバンクとアリババグループの合弁会社SBクラウド。Alibaba Cloudは、BigData技術をベースとするクラウドプラットフォームで構築された各種サービス機能に加え、高速起動を特徴とする仮想マシンや、高機能な監視システム、Anti-DDoSセキュリティがデフォルトで装備されるといった数々の特徴を持ちます。サービス開始にあたり、実際に現場でエンジニアリングを担当する技術者に「SBクラウドの本当のところ」を語っていただきました。

「中国に強い」無二のメリットを持つパブリッククラウド

お話を伺ったのは、SBクラウド⁠株⁠プロダクト・マーケティング部クラウドアーキテクト森真也氏写真⁠。まずは森氏の考えるクラウドについて伺いました。

――ズバリ、ユーザーや開発ベンダーにとって、今からAlibaba Cloudを選択するアドバンテージは?
森真也氏
森真也氏

森:これからパブリッククラウドを利用し、特に中国を含めたグローバルな展開を考えているお客様、そしてその開発ベンダーに有利なサービスを提案していきたいですね。アリババとソフトバンクが一緒に行うビジネスであり、中国だけでなく日本、そして世界へアリババの技術力を展開できるのが大きいです。今まで米国主導で発展してきた開発ツールやOSSなどに、アリババや中国からのエコシステムが加わり、可能性が広がります。

――中国については「グレートファイアウォール」など、独特のイメージもあります。日本のお客さんに理解してもらうのは難しいのでは?

森:まず、グレートファイアウォールなどの中国独特な環境は、日本リージョンのサービスを利用するお客様が基本的に意識することはありません。一方、日本からの中国ビジネス進出を考えると、1つのアカウントで中国リージョンを含む全世界のサーバを購入でき、日本と中国のリージョン間を専用ネットワークで接続するサービス(Express Connect)も用意するなど[1]⁠、インフラ面、ビジネス面からサポートするソリューションを提供できます。

エンジニアから見たAlibaba Cloud

いくら新しくても、エンジニアから見て魅力的なサービスでなければ普及しません。日本の技術者の目に映ったAlibaba Cloudはどのような姿なのでしょうか?

――技術的に見たAlibaba Cloudの特徴は?

森:まずはなんといっても、淘宝網(タオバオ)や天猫(Tモール)といったアリババのサービスを支えるクラウドサービスであることです。アリババは毎年11月11日にセールイベントを行うのですが、2016年のその日の総売上額は1兆9,000億円にも達しました。その膨大なトランザクションをさばいているのはAlibaba Cloudです。

サービスの面でも特徴がいくつかあります。

まず、セキュリティに関するサービスを多く用意しています[2]⁠。たとえば、Anti-DDoSというDDoS対策サービスは、一定以上の異常なパケットが来た場合にそのパケットをクリーニングするサービスですが、ほかのクラウドサービスではサードパーティ製品の導入などが必要となり、コストがばく大になってしまいます。ほかにもアカウントの権限を細やかに設定できる機能など、多様なセキュリティ製品があります。

もう1つは、サービスの一部にベアメタル[3]のアーキテクチャを採用している点です。たとえば、ApsaraDB for RDSというRDBMSサービスはベアメタルの構造を採用しており、非常に高性能です。仮想サーバを使用したRDBMSではこのパフォーマンスは出せません。

人によっては「中国のクラウド」に不安な要素を感じるかもしれません。しかし、むしろ中国でサービスを継続させるために、これだけのセキュリティ機能や効率的なアーキテクチャを磨いてこられたとも言えるのです。

――ユーザーにぜひ使ってほしいお勧めの機能はありますか?

森:スタンダードではありますが、OSSというオブジェクトストレージのサービスはお勧めです。Alibaba CloudのBigData基盤の機能を最も特徴的に活用したソリューションです。また、ApsaraDBは、マルチゾーンバックアップのような高度な構成を簡単に実現できますし、前述のとおりベアメタルアーキテクチャにより性能が優れています。

――エンジニアとしてSBクラウドに関わって、興味を引かれた点は何ですか?

森:私は以前、ソフトウェアの開発に携わっていて、クラウドサービスを利用する立場でした。SBクラウドに来てからは、競合であるAWS(Amazon Web Services)やGCP(Google Cloud Platform)などが、なぜ新サービスを展開したのか、その意図を意識するようになりました。自分が開発者だからこそ、開発者が本来解決すべき課題により集中できる環境作りの実現に関わっていける点にやりがいを感じます。

――中国のエンジニアとの関わりは? 何か刺激を受けましたか?

森:アリババのエンジニアとは、今後展開する新サービスやその技術について毎週打ち合わせをしています。多くのエンジニアは英語が堪能で、グローバルな基準での情報収集や競合他社の分析をして開発を進めています。世界の競合の動向をよく研究しつつ、自前の基盤の強みを活かしてサービスを強化している点は、私が知っている日本人のエンジニアとは空気感の違いを感じます。

――サービス開始前からハッカソンを行って開発者を集めているのが特徴的ですね。

森:エンジニアコミュニティによりよくAlibaba Cloudを知っていただくことが、ハッカソンを行う一番のねらいです。今後の展開には、エンジニアとそのコミュニティの手助けが欠かせないと考えています。正式リリース前からこのようなイベントを行うことで、少しでも興味を持ってもらうことができ、興味を持ったエンジニアを巻き込んで、一緒に新しいクラウドサービスを作っていけると思います。

ハッカソンを実際に開催してみて、Alibaba Cloudを初めて利用するお客様でもスムーズに使いこなせることが確認できました。一方、ドキュメントの整備が甘いといった課題も浮き彫りになり、サービス改善に役立つ成果が出ています。

ハードウェアスペックまで一目で把握できるElastic Compute Serviceのマネジメントコンソール画面
ハードウェアスペックまで一目で把握できるElastic Compute Serviceのマネジメントコンソール画面

「真のグローバル」な開発を目指して

グローバル化というと、どうしても米国の技術やトレンドに目が行きがちですが、AWSやGoogleが始めたクラウド基盤に日本や中国の考え方、エコシステムが加わって新たな価値を見出すことこそ「真のグローバル化」と言えるのではないでしょうか? SBクラウドのエンジニアとの対話の中で、そんな可能性を感じました。

提供/SBクラウド株式会社
https://www.sbcloud.co.jp/

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