世界有数のEC企業とソフトバンクが手を組んだクラウドサービス―いま注目される「Alibaba Cloud」の可能性

新たな可能性を生み出すAlibaba Cloud専用型ネットワークサービス「Express Connect」到来

Alibaba Cloud 日本サイトのスタートから半年、いよいよ開始される新サービス「Express Connect」の話題を中心に、SBクラウド プロダクト技術部クラウドアーキテクトの森真也氏に、SBクラウドの「今」をお聞きしました。

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サービスの整備と情報発信の両輪でユーザの満足度アップに貢献

――まずこの半年、エンジニアとして経験した手応えについて教えてください。

森:まだ半年しか経っていないんですね。とてもたくさんのことがあったので、2年くらい経った気持ちです。⁠苦笑)

プロダクトとしては、新サービスと機能改善を続けています。たとえば、⁠RAM」「AutoScaling」という新サービスを用意しました。RAMは権限の制限されたサブアカウントを作成することで、コンソール・APIへのアクセス権限を制御できるサービスです。この機能により、Alibaba Cloud上の1つのアカウントを複数人のサブユーザで利用して開発・運用をすることが可能になりました。AutoScalingは、その名の通りトラフィック量などに応じて仮想サーバの台数を自動で増減できるサービスです。その他、ECS(仮想クラウドサーバ)のセキュリティ機能の強化や、サーバ起動時に任意の処理を実行させる機能(ユーザデータ機能)などを揃えました。これらの改善により他社に負けない使いやすいIaaSサービスに仕上がってきたと感じています。

プロダクト以外だと、ユーザへの情報発信が大きく変化しました。たとえば今、月2、3回程度の技術セミナーを開催していて、多くの方にAlibaba Cloudのことを学んでもらえるようになりました。テックブログも開始し、エンジニアによる情報発信も積極的に行っています。私自身も、さまざまな技術イベントでスピーカーをさせていただく機会が増えました。

これからも、Alibaba Cloudを知ってもらうきっかけや活用のノウハウを発信できる仕組みづくりなど、周辺環境も含めて充実させていきたいと思っています。

オンプレミスと海外クラウドが直結 ―Express Connectがもたらす「真のグローバル展開」

――今回の新サービス「Express Connect」とはどんなサービスなのでしょうか?

森:大きく分けて2つの機能があります。1つめは「VPC Connection機能⁠⁠。これは2つのVPC間を接続できる機能です。これによって、日本のリージョンと海外、たとえば中国リージョンを接続し、中国と日本のサーバ間を内部ネットワークを通じて通信させることができます。ご存知の通り、中国には独特のインターネット事情がありますが、Express Connectの利用でこうした影響を受けることなくサーバ間の通信を行うことが可能になります。中国のサーバと日本のサーバを内部ネットワークで結ぶことのできるクラウドサービスはおそらく初ではないかと思います。

もう1つは「Direct Access機能」です。これは、お客様のデータセンターやオフィスとAlibaba Cloudのクラウドを専用型ネットワークで接続できるサービスです。これで、クラウド上のサーバやサービスを、あたかもお客様データセンターの一部のように扱うことができるようになるのです。

――「Express Connect」の魅力は?

森:Express Connectを使うことで、オンプレミスとクラウド、オフィスとクラウド、そして海外と日本のクラウドの連携と、クラウド活用の幅が大きく広がります。これは間違いなく大きなポイントと言えます。そして一番のポイントは、中国、そしてグローバルへのビジネス展開がより身近なものとなるということです。従来はグローバル展開といっても中国への進出はハードルが高かったと思います。Express Connectは、真の意味でのグローバル展開を支えるサービスとなります。

具体的なニーズとしては、中国との間で大容量データのやり取りを行いたい企業様や、レイテンシを重視するゲーム会社様などが興味を示されています。コスト面も考えると、やはり中規模以上のお客様が想定されます。

※)VPC(Virtual Private Cloud)
Alibaba Cloudのユーザが作成できるプライベートネットワーク。

エンジニアから見たExpress Connectの可能性

――Express ConnectはIaaSとしても低いレイヤのサービスですが、技術的なチャレンジはありましたか?

森:技術面というより「クラウドサービスとして回線サービスを提供する」というプロダクト的な面が大きかったと感じています。たとえば回線サービスでありながら、クラウドサービスらしくAPIでの操作が可能です。一部実際の物理回線の開通が伴う場合もありますが、その場合も開通後はネットワークをAPIで操作可能です。このように、クラウドサービスらしい使い勝手を実現している点は注目です。

――では“本来の”クラウドサービスとの相性も良いということですね。

森:はい。Express Connectを利用することで、クラウドのネットワーク的な表現力が大きく向上する点が魅力的なポイントだと思います。海外リージョンやオンプレミスと接続されたクラウドネットワークのルーティングやセキュリティ設定など、クラウドサービスの新しい使い方が提案できると期待しています。またこれで、これまで以上にお客さまの要望に合ったクラウドの設計が可能になり、提案能力が試されますね。

おすすめの活用方法としてCDNサービスとの組み合わせがあります。Alibaba Cloudは中国国内に500を超えるCDNノードを持っています。Express Connectと組み合わせることで、たとえば日本で開催しているイベントのライブストリーミングをExpress Connectで中国リージョンサーバまで送り、CDNを通じて中国のユーザに配信するといったことが可能になります。

Express Connectを使った日本=中国CDN網の構成
Express Connectを使った日本=中国CDN網の構成
――エンジニアとしてのやりがいも大きくなりますね。ほかにも提案したい活用法はありますか?

森:中国との接続について多く話しましたが、もちろん日本国内でのみ運用しているユーザにもExpress Connectを活用するメリットを提供できます。まずExpress Connectで同じリージョン内のVPC間を接続することができます。これにより、セキュリティレベルの異なるサービスを2つのVPCに分けて構築しながら両者を接続することもできます。たとえば、片方にインターネットと接続したくない購買情報を管理するシステムを構築し、もう片方には購買情報の分析結果を提供するインターネットサービスを構築するなど、活用の幅が広がります。

もう1つは、Direct Access機能を利用することで、オフィスとAlibaba Cloudを接続する活用方法です。データセンターだけでなく、オフィスとも接続できることは重要なポイントです。クラウド上に社内システムを構築し、オフィスのネットワークからインターネットを介さずにアクセスするなどができるようになります。

接続のバリエーションがもたらすクラウド環境の未来

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――Express Connectの今後の展望を教えてください。

森:実は、Express Connectのリリースに合わせて、パートナー企業との提携により、複数のサービスにわたって接続できるハイブリッドマルチクラウドを実現するソリューションの提供を予定しています。

今後も革新的な新サービスにより、お客様の抱えている問題を解決するだけでなく、新たな一歩につながるサービスを提供していきます。ユーザが最適なクラウドサービスを選択して利用できるようになれたらいいなと考えています。

提供/SBクラウド株式会社
https://www.sbcloud.co.jp/

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