突然ですが、筆者は転職をしました。転職市場は厳しさの底から若干盛り返しつつあるようですが、とても大変な時期と重なってしまい、苦労しました。結果論ですが、おかげさまで無事に転職活動を終え、心機一転、新たな職場で頑張っております。
今回は、[基礎知識編 ]から[キャリアアップ編]とテーマを変えてお届けいたします。
筆者は間もなくエンジニア人生20年目を迎えようとしています。アプリケーション、インフラ、マネージメント等も含めて、実にさまざまな経験をさせていただきました。特にここ4年ほどはインフラ関連に主軸を置いて、さらにデータセンター、ファシリティ関連や、時にはアプリケーション側まで行っておりました。
エンジニアの仕事内容はそれほど変わらない
インフラ関連のエンジニアという立場を中心に考えた場合、自社と他社の違いはどのような所にあるのでしょうか?
たとえば、ホスティングのデータセンターなどで作業を行っていれば、近くのラックに他社様のサーバが稼動しているのを(横目で)見る機会があるかもしれません。少なくともその他社に転職することができれば、データセンターは変わることはありません。
また、一般的な民間企業という括りであれば、扱うサーバはUNIX系のOSにIA等のプロセッサを搭載されたサーバから、大企業の基幹系システム等で利用される汎用機関連のシステムを対極と考えれば、BSD、Solaris、Linuxなどの差は大きな違いにならないかも知れません。
同じように、採用しているツールや言語に関してもそれほど大きな問題ではないと思えるほどポジティブになれれば、転職活動を行う際に大きな力となるでしょう。
筆者の昔話で恐縮ですが、20年ほどのキャリアのちょうど半分くらい、10年目あたりで汎用機エンジニアからオープン系エンジニアへとキャリアチェンジをしています。しかし、このキャリアチェンジは転職ではなく、当時在籍していた企業内での異動で実現したものです。
それまでIBMの汎用機でOS/390本体や周辺プロダクト管理、自社基盤アプリケーション(各種EXITや、アセンブラを利用して各種運用ツールの作成)を行っていたのですが、オープン系へ異動した日から即Webの世界に入り、それまでのキャリアを全否定されたかのような感覚に陥った事を今でも覚えています。
それからHTTPの仕組み、UNIX系OS、オープン系ミドルウェアから、実装される言語(Javaでした)でのオブジェクト指向、デザインパターンを必死で勉強しました。経験を積み上げてパフォーマンスを発揮していた立場から一気に勉強をさせていただく立場へのチェンジは当時は非常に厳しいものがありましたが、今思えば私のキャリアの中でのタイミング等からベストな経験だったと思っております。
ただし、転職によりここまで大きくキャリアチェンジをする場合、それ相当の志とは別に、場合によっては処遇等も大きく変わる可能性があり、いろいろな角度から見てもリスクとなる可能性もあります。これらは極端な例ですが、IT業界に置けるエンジニアと言う職業は、業種や採用しているシステムに大きく依存しない可能性もあり、実際に同じ業界で同じ仕事を続ける場合は、それほど大きく変わらない可能性もあります。
なぜ会社を辞めるのか
IT業界は比較的人材の流動が活発な業界と言われております。これは筆者の感覚ですが、ひとつは前述の通り、仕事内容が変わらないが故の転職のしやすさがあげられるのではないでしょうか? 大企業におけるジョブローテーションによる人事異動よりもIT業界内での転職の方が精神的に楽な可能性もあります。
もうひとつは、企業を超えてITという業界で盛り上がっている点があるかと思います。たとえば、とあるオープンソースから派生するプロダクトを採用している複数の会社の担当者や、興味のある人たちが集まって勉強会等を行うことにより、横串の風通しが実現されます。
ただしこれだけの材料では、そもそも会社を辞める必要がありません。一社員がその決断をするというためにはポジティブな要因の他に、もっと根本的な原因があるかと思います。それは会社の業績であったり、独特の文化、(キャリアアップを阻む)特有の環境など、会社がその気になれば解決できる原因もあるかと思います(それでも無理というパターンもありますが、その場合は正当な理由として転職活動を行う事ができるでしょう)。
「なぜ、今の会社を辞めようと思うのですか?」これは、面接の際に必ず聞かれる質問です。絶対的な正解はありませんが、芯の通った回答ができるようにしておきたい所です。
筆者が面接官だった場合
「業績が悪化の一途をたどっているため」と答える方には「ご自身に具体的に影響はありましたか?」と、お伺いします。
「(アプリ系から)インフラ系の仕事をしてみたいから」と答える方には「異動や、新規事業立ち上げ等で自社内解決に向けた活動内容と結果を教えてください」と、聞かせていただくでしょう。
もちろん、選考の印象はその次の回答次第です。問題がなければ選考は進むと思います。
筆者が面接を受けたとき
「会社に不平等が蔓延していた/一社員が改善できないほどに政治的な支配が影響する職場だった」と答え、「そういう話は弊社では聞いたことはないですからご安心ください」等の回答を期待。
「現職ではプラス方面で得られる事がなくなった。私は○○的な分野で更なる飛躍をするべく、大きなステージ、または、より多くの裁量をもって仕事をする事ができる環境を求めています」等と答え、その反応を見極めます。
どうして弊社を志望するのですか
この質問もどこの会社でも聞かれる質問だと思います。IT業界の人材流通量が大きくなるに連れて、転職エージェントなどといった仲介事業自体が成り立つ背景から、実際に転職を行う場合は、転職エージェントから提案を受けた企業を並べて自分の条件で順位付けし、気軽に応募することが可能な時代でもあります。当然、「家から近いから」「提案を受けた中で一番条件が良かったので」「御社しか(提案が)無いので!」では、採用を行う方の決め手にはならないでしょう。
筆者は「Webサイトを見て直接応募」「転職支援サイトからのエントリ」「転職エージェントからの提案」「友人からの紹介」などさまざまな手段を利用して応募いたしました。メーカの事例集にて掲載されたことがあったり、Web媒体等で連載を行っていたとしても、転職するとなれば皆さんと同じ土俵です。運命の会社に巡り会うためには何十社となく応募、何度も企業様へ足を運び面接させてもらい、正に足と耳で確かめて活動をしました。
筆者の場合は、とにかく自分で情報を収集し、その会社の事業特性を理解しました。これは比較的あたりまえの事として行っている人もいるでしょう。しかし、重要なのはその情報をどのように加工して表現するかだと思います。
同じインフラ系エンジニアで転職する場合
「現職では○○業界では強みがあるものの、IT業界、特に御社等と比較すると規模、スケールが違います。 また、人材、工数も潤沢で非常に恵まれている会社よりも、エンジニアとして技術に貪欲かつ大規模なステージで自分を高めていきたいと思い志望しました」
等と自然に答えられるようであれば、感触は良くなるのではないでしょうか?
プラスアルファのカード
主に面接にて効力が発揮できそうなことですが、筆者は相手が答えるさらに遥か彼方のカードを準備しております。キャリアや能力に直接関係はないものの、一緒に仕事をしてみたいと思ってもらえることが目的です。もちろん、面接の内容によっては最後までカードは使わない事もあります。
1つ目は「資格」です。ポイントとしては、持っている資格よりも目指している資格で勝負できれば強みとなります。たとえば各ベンダの資格を取得しつつも、少しピントを外してみる事により効果が出そうな資格に絞り、一例ですが決算書類を読むために数字関係(簿記や会計士など)を取得、または目指している事により、数字に対するコミットメント能力アピールする等ができれば面接官の感触も高まるかと思います。
もうひとつは「趣味」です。たとえば、「読書」「音楽」「自宅でサーバ点……」等は趣味ではなく興味ととらえられることがあります。たとえば筆者の場合は、「ジョギング」「音楽」となりますが、実際には「ジョギングが趣味で、東京マラソンを(雨氷の中)4時間で走った。5キロなら20分程度です」や、「音楽が趣味で楽団に参加しています。平日でも朝、業務終了後等に練習しています」など、その趣味の成果が継続性の結果であることを印象付けるようにアピールします。これにより、その社風に合うかどうか等の側面で大きく評価される可能性があります。
時には「弊社は慢性的に忙しいから自己啓発や趣味の時間は取れない」と迫られる局面もありますが、そのような場合は、自分自身がそれでも入社して働きたいというポイントが見いだせるかどうかだと思います。
おわりに
面接の場はコミュニケーションの場でもあります。立場が選考をする場でも、選考をお願いする場だったとしても、どちらにせよ能動的に振る舞わなければ意味がありません。
会話が少なく、比較的受動的なまま採用となった場合、入社後の社内の感覚や、一緒に仕事をする仲間との微妙な歪みに悩む可能性があります。同じように会話が少なく、比較的受動的なまま逆に不採用となった場合、志望順位にもよりますが、後悔することもあるでしょう。
さて、筆者がどの企業へ転職したのか……。実はまだ会社に、本連載における社名掲載の可否を伺っていないために、記載する事ができませんでした。問題がなければ次回「エンジニアの転職(後半)」などと行った形で掲載できたらと思っていますのでお楽しみに。